公明党の連立政権離脱で日本の政局の不透明感が一段と色濃くなった。一寸先も見えない。まさに闇だ。来週に予定されている首班指名選挙で誰が勝つか、誰も予測できない。とはいえ、この混迷政局を制したものが日本政治の次の主役に躍り出る。自民党の新総裁に選出された高市早苗氏か、はたまた野党連立の合意による玉木雄一郎氏か。もう一つの可能性をあげれば野田佳彦氏という選択肢もある。決選投票で立憲民主党、公明党、日本維新の会が合意し、自民党が他党の協力を得られなければ、高市氏196票、野田市207票となって野田氏が勝利する。これに国民民主が乗れば候補者は玉木雄一郎氏に統一され、野党連立政権が発足する。とはいえ、これた単なる数字合わせ。国民が求めているものは政策と理念である。おそらく誰が選出されても衆議院の解散総選挙は近い。それを見据えた上での首班指名になる。
公明党の政権離脱は「高市阻止」の一念だと推測する。裏で蠢いているのはもちろん創価学会であり、自民党の中道派・リベラル勢力だろう。この勢力の中心にいるのは菅義偉元総理だ。一方高市氏のバックには麻生太郎氏がいる。公明党の離脱によって突発した混迷政局は、裏を返せば麻生・菅戦争でもある。安倍政権で共闘していた両氏がどうして袂をわかってのか、この短いコラムで個人的な“妄想”の全容を紹介することは難しい。おそらくそこには我々の想像を超えた、政治理念と権力に伴う利権が複雑に絡み合っているのだろう。一言で言えば「理念」の麻生と、「実利」の菅の考え方の違いだ。その二人が政治生命をかけて最後の戦いを始また。二人の戦いは単に勝った、負けたの勝負ではない。日本の将来をかけた政治闘争なのだ。安倍政権時代に共闘した二人だが、政治的な心情には大きな差があっった。それが創価学会をバックボーンとする宗教政党である公明党への距離感の差となって現れていた。
菅氏が推した小泉進次郎氏の敗北は、自民党の中道・リベラル派にとって想定外の結末だった。それ以上に公明党のショックは大きかった。「下駄の雪」と揶揄されながら、26年間我慢し続けた不満が一気に爆発した。高市氏は「一方的に離脱を通告された」と説明する。離脱は最初から決まっていた。菅氏が裏でどう動いているのかわからない。公明党と維新に近い同氏が何もしないとは思えない。一方、麻生氏は何を考えているのか。この人、最近知ったのだが、理念の人だった。安倍元総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋構想」、この発案者は麻生氏だった。太平洋からインド洋を経て中央アジア、トルコ、中東欧、バルト諸国まで展望したこの構想の大元は、外相時代に麻生氏が提唱した「自由と繁栄の狐」という外交ビジョンにあった。これが元になった「インド太平洋」は今や西側共通の価値観になりつつある。来週に予定される首班指名選挙、理念と実利の戦いでもある。この国の将来を占うという意味でも興味深い。
