Dina Bass、Shirin Ghaffary

  • OpenAIがハードウエア設計、AIデータセンターを10ギガワット強化
  • ブロードコム株価は一時11%高、AI向けが新たな収入源になると思惑

OpenAIブロードコムと、人工知能(AI)向けカスタム半導体とネットワーク機器の共同開発で複数年にわたって協力することに合意した。OpenAIはコンピューティングインフラを強化する野心的な取り組みをさらに進める。この発表を受け、ブロードコムの株価は急騰した。

relates to OpenAIとブロードコム、AI向けカスタム半導体の共同開発で合意
ブロードコムのホック・タンCEOSource:Bloomberg

  両社による13日付の共同発表文によると、OpenAIはハードウエアを設計し、その開発でブロードコムと協力する。来年下期にはこのハードウエアを実装したサーバーラックの展開を始め、AIデータセンターの能力を消費電力で10ギガワット相当強化する。

  プロセッサーをカスタマイズすることで、AIモデルやサービスの開発で得た知見を「ハードウエアに直接落とし込み、新たなレベルの能力と知性を解き放てる」可能性があると、OpenAIは説明。このハードウエアの展開は、2029年末までの完了を見込んでいると、両社は発表した。

  iPhoneや光通信向けなどさまざまな部品を生産するブロードコムにとって、OpenAIとの協力は急成長するAI市場に深く関与していく道が開けたことを意味する。今回の合意については、ブロードコムのホック・タン最高経営責任者(CEO)が9月の決算説明会で示唆していたが、それが確認された格好になる。

  この発表を受け、ブロードコムの株価は13日のニューヨーク市場で一時11%上昇。同社にとって数千億ドル規模に上る新たな収入源が生まれるとの期待感が株価を押し上げているが、OpenAIは共同開発の資金をどのように調達するか詳細を示していない。投資家からの資金調達に困難はなさそうだが、OpenAIは多額の現金を燃焼し続けており、2030年前後までキャッシュフローはプラスに転換しないとみられている。

  OpenAIはブロードコムとの合意に投資や出資の要素は含まれておらず、エヌビディアアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)との合意とは異なると説明した。OpenAIの広報担当者は半導体の資金をどう確保するのかについてコメントを控えたが、基本的な考え方はより大きな演算能力を確保すれば、より多くのサービス販売が可能になるということだと述べた。

  現時点でAI演算能力は半導体だけで1ギガワット当たりおよそ350億ドル(約5兆3300億円)の費用がかかり、AIデータセンターを10ギガワット強化するなら総費用は3500億ドルを超える。だが、OpenAIが自前の半導体開発に取り組んでいる主な理由はそのコストを下げるためで、今回の合意でブロードコムがいくらで半導体を提供するのかは明らかにされていない。

  ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マンディープ・シン氏は、OpenAIがアルファベットを参考にしている可能性があると指摘。アルファベットはブロードコムの技術を使った独自の半導体を開発し、メタ・プラットフォームズなど他のAI企業と比べてコストを抑えることに成功した。

原題:OpenAI-Broadcom Agreement Sends Shares of Chipmaker Soaring(抜粋)