▽【米国市況】S&P反発、米中摩擦で荒い動きも決算好感-ドル売り優勢

Rita Nazareth

  • S&P500種は一時下げる場面も、決算好調でモルガンSやBofAに買い
  • 円は対ドルで一時151円台後半まで上げ縮小、国債は利食い売り優勢

15日の米株式市場ではS&P500種株価指数が反発。米国と中国の間で再燃する貿易摩擦の行方を見極めようとの思惑が交錯し、不安定な値動きとなった。一方で決算シーズンへの期待は買いを呼び込んだ。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6671.0626.750.40%
ダウ工業株30種平均46253.31-17.15-0.04%
ナスダック総合指数22670.08148.380.66%
US Stocks Drop As Tech Rout Deepens, Hurt By Climbing Yields
米国株のボラティリティー高まるPhotographer: Michael Nagle/Bloomberg

  S&P500種は一時1.2%上昇した後、下げに転じる場面もあった。その後約30分後には再びプラス圏に戻った。

  6カ月ベースで1950年代以来となる好調なペースで駆け上がってきた株式市場では、「健全な調整」と呼ばれる短期的な利益確定の動きが見られている。ただ、そうした下げ局面は長続きせず、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げで米企業の前向きなモメンタムが続くとの思惑から、再び買いが入っている。

  モルガン・スタンレーとバンク・オブ・アメリカ(BofA)は上昇。堅調な決算が好感された。半導体銘柄も高い。オランダの半導体製造装置大手、ASMLホールディングは人工知能(AI)需要に関して明るい見通しを示した。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「押し目買いを続ける投資家が依然として相場を主導しており、テクニカル指標に過熱の兆しが見られる中でも、投資家センチメントは堅調を維持している」と指摘。「これまでに発表された銀行決算は予想を上回る好調な結果となり、消費も安定している。成長懸念は時期尚早かもしれない」と述べた。

  ベッセント米財務長官は、中国が発表したレアアース(希土類)輸出規制の先送りを条件に、高水準の対中関税をより長期にわたり適用停止とすることを提案した。ベッセント氏はまた、現時点での認識として「トランプ氏は今月下旬、韓国での習主席との会談に出席する意向だ」と述べた。

関連記事:ベッセント氏、対中関税の長期停止を提案-レアアース規制延期が条件

Another Roller-Coaster Ride on Wall Street

  マイランFRB理事は、このところの貿易摩擦により成長見通しを巡る不確実性が強まっていると指摘。そうした状況から、迅速に利下げを進める重要性が高まっているとの認識を示した。

  マイラン氏は米経済専門局CNBCが主催したイベントで、「1週間前と比べて下方リスクが増している。政策当局として、それを政策に反映させる責任がある」と発言。また米中間の貿易政策を巡る不確実性の強まりが「新たなテールリスク」を生じさせているとも指摘した。

関連記事:マイランFRB理事、利下げの緊急性さらに高まる-貿易巡る不確実性で

  HSBCのマックス・ケトナー氏は、関税を巡るノイズが最近あるものの、ファンダメンタルズは引き続き堅調だと指摘。「ドル安は今後2四半期にわたって米国株への追い風となるだろう。グローバルなマクロ見通しのコンセンサスは5月以降に上方修正されているが、さらなる上方修正の余地がまだ十分残っていると当社ではみている」と述べた。

国債

  米国債は短・中期ゾーンが下落(利回りは上昇)。FRBによる今月の追加利下げ観測を背景に2年債利回りが年初来の低水準に接近した後、相場の勢いは失速した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.63%-0.6-0.13%
米10年債利回り4.03%0.00.00%
米2年債利回り3.50%1.70.48%
  米東部時間16時55分

  2年債利回りはアジア時間に一時3.46%と、関税懸念で4月に市場が混乱した際の低水準まで約3ベーシスポイントbp、1bp=0.01%)に迫った。

  10月1日に始まった米政府機関の一部閉鎖で経済指標の発表が途絶えており、この日は手掛かり難から利益確定の動きが出やすかったことが示唆される。

  米国債相場はこのところ、関税を巡る米中の対立再燃や利下げ観測の追い風を受けて値上がり基調にあった。パウエルFRB議長は前日、今月28-29日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.25ポイントの追加利下げを実施する方向にあると示唆した。

  BMOキャピタル・マーケッツのストラテジストは、「パウエル氏の前日の発言を受けて、今月下旬に0.25ポイントの追加利下げが行われるとの見方が固まった。市場はほぼ完全に織り込んでおり、12月の利下げについても同じだ」とリポートで指摘。一方、「1月と3月の利下げ見通しは、現時点でははるかに不透明だ」と続けた。

US Two-Year Yield Nears Lowest Since 2022

  ペッパーストーン・グループのシニアリサーチストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は、現行の米国債利回り水準はフェデラルファンド(FF)金利が来年半ばに3%まで低下するとの市場の見方を反映していると指摘。関税ショックが再び安全資産への逃避を引き起こさない限り、当面は利回りがこれ以上大きく低下する可能性は低いと述べた。

  「目先で相場をさらに押し上げる最も明白な材料は成長懸念の再燃だろう。トランプ大統領による100%関税の脅しがより現実味を帯びてくる場合だ」と述べ、トランプ氏の対中関税引き上げ警告に言及した。

外為

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は対主要通貨でほぼ全面安。米中の貿易摩擦に関する報道が相次ぐ中、その影響を見極めようとの動きが広がった。パウエルFRB議長の前日の発言を受けて、米利下げの道筋も意識された。

  円は東京時間に対ドルで150円90銭と1週間ぶりの高値を付けた後、ニューヨーク時間朝方には151円台後半まで上げ幅を縮小する場面もあった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1210.85-3.59-0.30%
ドル/円¥151.09-¥0.75-0.49%
ユーロ/ドル$1.1646$0.00390.34%
  米東部時間16時54分

  コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は、パウエル議長は前日、「年内残り2回のFOMC会合での利下げを見込む市場に対し、期待を打ち消すような発言を控えた」と指摘した。

  ベッセント財務長官は、次期FRB議長の候補者リストを12月にトランプ大統領に提出する方針だと明らかにした。

  米経済活動はこの数週間、ほとんど変化が見られず、雇用水準もおおむね安定を維持したと、FRBは最新の地区連銀経済報告(ベージュブック)で指摘した。

関連記事:ベージュブック、米経済活動ほぼ変わらず-コスト一部で上昇加速 (1)

  日本経済新聞によると、ベッセント長官は円相場について「水準についてはコメントしない」としながらも「日本銀行が適切に金融政策を運営し続ければ、円相場も適正な水準に落ち着くだろう」と指摘した。日経など米国内外の主要メディアを財務省内に招き、質疑応答に応じた。

関連記事:ベッセント氏、日銀が適切な政策を続ければ円相場も適正水準に-日経

  利上げの是非を巡っては「植田和男総裁がどのように判断するか私からはコメントしない」とした上で、「植田氏とは長い付き合いだが、非常に有能な人物だ」と語ったという。

  一方、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議出席のため訪米中の加藤勝信財務相が15日、ワシントンでベッセント財務長官と会談したと共同通信が関係者の話として報じた。円安・ドル高傾向にある為替相場について協議した可能性があるという。

ドル・円の推移

原油

  ニューヨーク原油相場は続落し、5カ月ぶり安値を更新した。金融市場全体は堅調だったものの、原油市場では供給過剰懸念の強まりが相場の重しとなった。

  ウェストテキサスインターミディエート(WTI)先物は5月以来の安値。過去5営業日で約7%下げている。

  株式市場ではS&P500種が反発したものの、原油市場には依然下押し圧力がかかっている。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが今年に入り、協調減産を予想より速いペースで巻き戻す方針を示したため、供給過剰への懸念が強まっている。

  USBのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は「原油は引き続き貿易摩擦やリスクセンチメントの変化に大きく左右されているが、株式相場がプラス圏にあることが一定の下支えになっている」と述べた。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「WTIは1バレル=60ドル近辺で強い上値抵抗に直面している。米中関係を巡るリスクは依然として高い」と分析した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は前日比43セント(0.7%)安の1バレル=58.27ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.8%下落し61.91ドル。

  金相場は続伸。1オンス=4200ドルを上回って過去最高値を更新した。米中の貿易摩擦激化のほか、FOMCが年内さらに2回の利下げを行うとの見方が手掛かり。

  金スポット価格は一時1.8%高の4218.29ドルを付けた。パウエルFRB議長は14日の講演で、10月のFOMC会合で0.25ポイントの追加利下げを実施する方向にあると示唆。金利の低下は利息を生まない貴金属にとって追い風となる。

  一方、トランプ大統領が中国に対して新たな報復措置の可能性を示唆したことで、リスクオフの地合いが強まり、安全資産としての金の魅力が高まった。

  トラフィギュラ・グループのチーフエコノミスト、サード・ラヒム氏は、金価格上昇の多くは「現物買いによるものであり、中央銀行が大量の金を購入している」と指摘。債務持続性への懸念や金利低下の見通しを受け、投資家は「価値保存手段ならびに安全資産として金を求めるようになっている」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比67.01ドル(1.6%)高の1オンス=4209.95ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は38.20ドル(0.9%)上げて4201.60ドルで引けた。

原題:Stocks Gain as Trade Tensions Stir More Volatility: Markets Wrap

Treasury Rally Stalls With Two-Year Yields Near April Lows

Dollar Drops with Fed Path, Bank Earnings in Focus: Inside G-10

Dollar Broadly Weaker as Trade, Earnings in Focus: Inside G-10

Oil Edges Lower as Oversupply Fears Overshadow Risk-On Mood

Gold Hits Fresh Record on Fed Rate-Cut Hopes as Silver Surges(抜粋)