ガザの停戦実現の勢いをかってトランプ氏がプーチンに再会談を呼びかけた。ロイターは「トランプ米大統領は16日、ロシアのプーチン大統領とハンガリーの首都ブダペストで会談し、ウクライナの紛争終結について協議すると述べた。自身の交流サイト『トゥルース・ソーシャル』に投稿した」とある。さらに「私は生涯を通じて取引を行ってきた」、「今回も、できればすぐに成立するだろう」と述べている。いつものトランプ節だ。この日トランプ氏はプーチンと電話会談を行なっている。この電話会談は約2時間続いたようだ。電話の最中にSNSに「いまプーチン氏と電話会談中」と投稿している。トランプ氏の行動には“驚き”が付きまとう。普通電話中には誰もそんなことはしないものだ。これがトランプ流といいえばそれまでだが、こうした行動自体に様々な思惑が込められている。ひとことで言えばプーチンはいま“窮地”にあるのだ。
一つは英仏独3カ国首脳が10日に電話会談を行い、凍結されているロシア資産をウクライナ支援に活用する方針で合意したことだ。ロイターによると三カ国は「ロシアを交渉の席に着かせる」ために、「米国と緊密に協力して(凍結資産による支援を)実行する」としている。欧州内で凍結されているロシア資産は「最大1850億ユーロ(約33兆円)に上る」(ロイター)とみられている。プーチンにしてみれば決して小さい額ではない。おまけに大半が武器支援に当てられる。金額の多寡よりも、これにより勝利の方程式が狂う可能性もある。2つ目がインドの心変わりだ。トランプ氏は15日、インドのモディ首相が「ロシア産原油の購入停止を約束した」と発言している。例によって本当かどうかわからない。プーチン批判に転じたトランプ氏はロシア産原油の購入停止を世界中の国々に呼びかけている。最大の購入国は中国とインド。この両国に関税を使って圧力をかけ続けている。インドも“背に腹は変えられない”ということか。
3つ目はガザでの戦闘停止だ。ハマス対イスラエルの小競り合いは続いているが、ガザ戦争は大きな山を超えた。ゼレンスキー氏は「中東でテロと戦争の抑制に成功した衝動が、ロシアのウクライナに対する戦争を終わらせるのにも役立つ」と期待感を表明している。17日にはホワイトハウスを訪問してトランプ氏と会談する。テーマはトマホークだ。トランプ氏は長距離戦略ミサイルの提供をちらつかせながら、プーチン対するに圧力を強めている。プーチンに向かって徐々に逆風が強まっている。そんなタイミングを狙ったようにトランプ氏は、対面での首脳会談を行うと公表した。場所はハンガリー。オルバン首相はプーチンと親密な関係にある。プーチンも首脳会談の場所としては乗りやすい。まるで米国と欧州、インドが水面下で連携しているかのようだ。タイミングは絶妙。これがトランプ・ディールの技か。消えかけた停戦の道が復活するかもしれない。
