梅川崇、松井玲
- 政治混迷が市場の不安要素に、金融政策運営への影響は明言せず
- IMF幹部、日銀は政治動向に関わらずデータ・ディペンデントの必要
米ワシントンを訪問中の日本銀行の植田和男総裁は16日(現地時間)、経済・物価見通しが実現する確度が高まれば金融緩和の度合いを調整していくと述べた。10月末の金融政策決定会合に向けて、さらに情報収集に当たる考えも示した。
主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で述べた。
植田総裁は、政策運営の基本姿勢として「経済・物価見通し、それを巡るリスク、そして見通しの確度、こういうものに従って金融政策を決定していく」と説明。
続いて「見通しの確度が上がっていけば、その度合いに応じて適宜『金融引き締めの度合い』を調整していくという姿に全く変わりはない」と話したが、日銀がその後「金融緩和の度合い」に修正した。

金融市場での不安要素は日本の政治混迷だ。自民党総裁に高市早苗氏が選出されて以降、公明党の連立与党からの離脱や、首相指名選挙に向けた与野党による多数派形成の動きなどもあり、情勢は日々流動化している。今回の植田総裁の発言機会は、こうした状況下での金融政策の行方を探る上でも重要で、市場の注目を集めていた。
記者会見では政治の不安定化が金融政策運営に与える影響についても問われたが、明言は避けた。
国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局副局長のナダ・シュエイリ氏は15日、ブルームバーグのインタビューで「日本の政治情勢を注視しており、毎日のニュースで進展を確認している」としつつ、政治の動きに関わらず「日銀はこれまでと同様にデータ・ディペンデントである必要がある」と話した。
記者会見には、G20会合で加藤勝信財務相の代理を務め政局た三村淳財務官も同席した。今回のG20では世界経済や国際金融、アフリカの成長などが議題となった。
米国を含めた世界経済について、植田総裁はこれまでのところ「レジリエント(強じんな)という言葉がぴったりするような底堅さを見せている」と指摘。米国による関税措置の影響が出るのが遅れていることが要因の一部で、今後その影響が出てくる可能性については「下方リスクとして織り込まざるを得ないというのが色々な人の評価だと思う」と語った。
次回の決定会合は今月29、30日に開かれる。国内メディアで報じられているトランプ米大統領の来日やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が前後に予定されており、政府の外交日程が続く中での開催となる。
