Mark Niquette

  • カード利用や高頻度データが示す支出鈍化、裁量的消費に陰り 
  • 低所得層の伸びに弱さ、企業は年末商戦に慎重と楽観が交錯

公式の米小売売上高の発表が延期される中、クレジットカード利用データなど民間指標は個人消費が活発な今夏を経て、9月に勢いがやや鈍化したことを示唆している。

  ブルームバーグが調査したエコノミストらは、16日朝に発表予定だったが政府機関の閉鎖で延期された9月の小売売上高について、過去2カ月連続で0.6%増を記録した後だけに、伸びが鈍化すると予想していた。

  エコノミストはクレジットカードの借り入れ状況や既存店売上高といった高頻度の消費データを幅広く分析した結果、過去3カ月間に年率換算で4.1%という力強い伸びを示していた小売活動が一服し、消費者が支出を抑えたと指摘している。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミスト、シュルティ・ミシュラ氏は「6-8月に比べると、足元では支出の伸びに減速が見られる。過去3カ月のような成長は期待できないだろう」と述べた。その上で「全体として、消費者はこの『通常モード』のペースで11月、12月も支出を続けることができると思う」と語った。

  クレジットカードやデビットカードのデータを分析する「ブルームバーグ・セカンド・メジャー」統計では、9月は家具や家電、電子機器といった裁量的支出への需要が減少したことが示された。BofAのクレジットカードデータも、需要減速を示唆している。

  もっとも、エコノミストらは、民間データは政府の小売売上高統計とは必ずしも一致しないと注意を促す。政府統計は季節調整が行われており、約4800の事業所を対象にした調査に基づいている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)が15日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、ここ数週間で小売り支出が「やや減少した」との記述があった。物価高や経済の先行き不透明感を背景に、中低所得層が引き続き割引商品を求めている実態も示された。

  これまで底堅さを見せてきた消費者や小売業者は、労働市場の冷え込みと高止まりするインフレの中で、重要な年末商戦で試されることになりそうだ。一方、一部の企業経営者は楽観的な見方を維持している。

  米銀ウェルズ・ファーゴのチャーリー・シャーフ最高経営責任者(CEO)は14日の決算説明会で「消費者の動向は極めて安定している。支出も毎週、ここ数カ月とほぼ同じペースで増えている」と述べた。

  ウォルマートの米国部門CEO、ジョン・ファーナー氏も15日のパネル討論会で、同社の顧客は健全なペースで支出しており、引き続き底堅いと話した。

  こうした楽観ムードは、15日に公表されたシカゴ連銀の「小売業速報」にも表れている。同報告では、自動車を除いた9月の小売売上高がインフレ調整前で0.5%増と堅調な伸びを示すと予測された。シカゴ連銀は複数の小売り取引データを用い、国勢調査局の小売売上高を週次で追跡する目的でこの推計を算出している。

  とはいえ、バークレイズのエコノミストは、可処分所得や株式市場の資産効果、インフレ、消費者心理、さらにはクレジットカードなどの直接的な支出データを用いたモデルに基づき、小売売上高の最近の勢いは9月に「失速した可能性が高い」と指摘した。

  シティグループの調査リポートによると、同行のクレジットカード支出データにおける特定小売りセクターの合計値は9月に弱含んだ。自動車を除くほぼすべてのカテゴリーで軟調となり、とりわけ家具、住宅改装、衣料品での支出が落ち込んだ。

  シティグループのエコノミスト、ギセラ・ヤング氏は「消費支出の伸びがやや鈍化しているのは自然な流れだと言える。労働市場は軟化を続けており、年末にかけて失業率がさらに上昇すると見込んでいる」と語った。

  バンク・オブ・アメリカのインスティテュートがまとめたリポートによると、同社のクレジットカードおよびデビットカードによる1世帯当たりの支出は、季節調整済みで9月に前月比0.2%増にとどまった。増加の主なけん引役は中所得層および高所得層だったという。

  リサーチャーによると、低所得層の支出の伸びは中・高所得層と比べて依然として鈍く、これは賃金の伸びが弱いことに加え、株高の恩恵を富裕層が受けていることが一因とみられる。

  ブルームバーグのエコノミストも、9月の支出は高所得層による裁量的な購入に支えられた可能性が高いと指摘。全体の小売売上高は0.4%増加すると予測した。これは連邦補助金の終了を前にした電気自動車(EV)の駆け込み需要が、自動車販売を押し上げたことを反映したものだ。

  一方、経済専門局CNBCと全米小売業協会(NRF)が発表した「リテール・モニター」によると、9月の売上高は前月比では減速したものの、前年比では依然として力強い伸びを示している。ジョンソン・レッドブックの既存店売上高指数は、8月の前年比6.3%増に対し、9月は5.7%増だった。

  NRFのマシュー・シェイCEOは発表文で「小売売上高は9月に一服した。新学期前2カ月間にわたる堅調な支出を経て、消費者が一時的に様子見に転じたためだ」と指摘。「経済の先行き不透明感が続く中で、消費者は重要な年末商戦に備え、購買力を温存する選択をした」と語った。

原題:Card Data Show Softer US Retail Sales as Shutdown Delays Report(抜粋)