▽維新、自民との連立「20日までに判断」-政策協議を開始<bloomberg日本語版>2025年10月16日 8:32 JST

照喜納明美、清原真里、広川高史

  • 維新が食品消費税率の2年間ゼロ、企業・団体献金の廃止など要求
  • 自民・小林氏、「共通の理解を得られること多く、真摯に向き合う」
日本維新の会の吉村洋文代表と自民党の高市早苗総裁
日本維新の会の吉村洋文代表と自民党の高市早苗総裁 Photographer: Kyodo News/Getty Images, Toru Hanai/Bloomberg

自民党と日本維新の会は16日午後、政策協議を行った。維新は自民との連立について臨時国会召集前日の20日までに判断する方針で、17日も両党で詰めの協議を進める。

  国会内で開いた政策協議で、維新側は実現を求める政策を列挙した文書を提出。食料品への消費税率を2年間ゼロ%や企業・団体献金の廃止など直ちに合意できない項目もあったため、17日に再度協議する。維新の支持を得られれば、自民の高市早苗総裁が首相指名選挙で勝利する公算が大きくなる。

  維新の藤田文武共同代表は協議後の記者会見で、自民とは政策の一致点が多く危機認識も近いと指摘。維新の要望には、「相当真剣に向き合っていただいている」と語った。連立協議の結論は「20日までに判断する」とも述べた。

  自民の小林鷹之政調会長は、維新からはさまざまな論点が示され、丁寧に詰めて行く必要があるものの、「お互い共通の理解を得られるところは多かった」と説明。「必ず合意に至るかはなんとも言えない状況」だが、国会召集までに時間が限られる中で、党として真摯(しんし)に向き合っていくと語った。

  協議には自民から高市氏と鈴木俊一幹事長、維新から中司宏幹事長、斎藤アレックス政調会長が参加した。維新は16日午前に両院議員総会を開き、藤田共同代表が経過を報告した。藤田氏によると、自民との連立に関して大きな反対論はなく、判断を執行部に一任した。

  公明党の連立離脱を受け、臨時国会での首相指名選挙に向けた各党の駆け引きが活発化している。衆院会派で35議席の維新が高市氏に投票すれば自民と計231議席と過半数の233に近づく。自民、維新の政策協議の行方が政局の焦点となっている。

  維新の吉村洋文代表は16日午後、維新が実現を求める政策を「自民党、高市総裁がどこまで共有できるか」について協議を通じて詰めていくとフジテレビ系列の番組で語った。「高市総裁の判断、胆力も問われるし、私自身の判断、胆力も問われる。でもそれは日本をよくするためにやる。そこが軸だ」とも述べた。

  元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は、自民と維新の政策について憲法改正への考え方や安全保障で自公間よりも近いと指摘する。首相指名選挙で維新と無所属議員の一部が投票すれば、衆院では1回の投票で高市氏が過半数を得て選出され、政権基盤が石破茂首相よりも安定する可能性もあるとの見方を示した。

  共同通信によると、高市氏は16日、衆院で3議席ある参政党の神谷宗幣代表と国会内で会談し、首相指名選挙での協力を要請した。神谷氏は持ち帰ったという。

野党

  立憲民主党は維新、国民民主党による統一候補擁立をなお模索するが、3党の調整は進んでいない。自民、維新の政策協議に先立ち、立憲民主、維新、国民民主の3党幹事長らが16日午後、国会内で会談。立民の安住淳幹事長によると、会談で維新側は自民との協議について説明。17日までには見通しを立てたいとの発言があった。

  一方、国民民主の玉木雄一郎代表は15日夜、自民との関係について「維新が加わるのであれば、そもそもわれわれが連立に加わる必要もなくなった」とYouTube動画で述べた。玉木氏は16日、公明党の斉藤鉄夫代表と党首会談を行い、今後の政策面などでの連携について協議した。立民と公明も17日、党首会談を実施する。

市場の反応

  16日の東京株式相場は続伸し、日経平均株価は一時4万8300円台に上昇した。債券相場は中期債や先物が下落。自民、維新が政策協議開始で一致したことを受け、政局安定が日本銀行の利上げ判断を後押しするとの見方が出ている。

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、「自民党と維新の会の連立の可能性が高まり、政治的に安定して日銀が利上げしやすいとの見方から中期債が売られ、国民民主党よりは財政拡張的でないことから超長期ゾーンがフラット(平たん)化している」と述べた。

  外国為替市場の円相場は午後6時35分現在、円相場は対ドルで151円台前半で推移している。

社会保障改革、副首都構想

  15日に行った維新との党首会談で高市氏は、連立政権樹立を含めた首相指名選挙での協力を要請。吉村氏が政策協議の開始を受け入れた。

  吉村氏は、高市氏からは維新が重視する社会保障制度改革に賛意を得たほか、副首都構想にも同じ考えだとの表明があったことから、「政策協議を開始する土台はあると判断した」と説明した。

  これに対し、高市氏は維新について「基本政策はほぼ一致している」と記者団に語った。外交やエネルギー政策は自民と「あまり変わらない」とし、他の政策での詰めに時間を割くことになるとの見通しも示していた。 

  両党間の調整が難航する可能性があるのは、公明が自民との連立を離脱する契機となった「政治とカネ」を巡る問題への対応だ。

  公明は企業・団体献金の受け皿を政党本部と都道府県組織に限定する案の受け入れを迫ったが、自民が回答を留保した。維新は16日に自民に提示した要求に「企業団体献金の廃止」を盛り込んだ。自民は一定額を超える献金は企業・団体の名称や寄付額を公表するなど透明性の向上を訴えている。

  自民党の鈴木俊一幹事長は14日、同献金廃止までは踏み込んでいない公明案についても「自民党のまさに財政面からの成り立ちを全く否定するものだから、丸のみすることはできない」との見解を記者団に明らかにしていた。

  維新の藤田氏によると、同党が16日開いた両院議員総会では、多くの出席者から「政治とカネ」を巡る問題について自民に妥協しないよう求める意見も出たという。

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▽「論外」自民・逢沢一郎氏、維新要求の議員定数削減に反発 維新・吉村代表は「譲らない」<産経ニュース>2025/10/17 09:33

自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長(左)と日本維新の会の吉村洋文代表
自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長(左)と日本維新の会の吉村洋文代表

自民党の逢沢一郎選挙制度調査会長は16日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、日本維新の会が連立政権入りを視野に入れた政策協議の中で求めている国会議員の定数削減について「論外」と批判した。維新の吉村洋文代表は「譲らない」と話している。

維新は「国会議員の1割を目標に削減」としている。

逢沢氏は超党派の衆院選挙制度協議会の座長を務めるなど、選挙制度に精通している。Xで「維新吉村代表に。身を切る改革、イコール議員定数削減ではない」と切り出した。「現行制度で定数削減となると、大阪、東京じゃなくて地方の定数がさらに少なくなる」と指摘。与野党が衆院選挙制度協議会で定数削減を含め議論中だとした上で、「この状況のなか、自民・維新でいきなり定数削減は論外です」と反対した。

一方、吉村氏は16日のテレビ朝日番組で、21日召集の臨時国会で議員定数削減の法改正を実現すべきだ、と訴えた。「そこは譲らない」と強調した。17日のフジテレビ番組でも、年内の定数削減を明記する形で合意できなければ連立は組まない方針を明言した。

維新は現行の小選挙区比例代表並立制の廃止や中選挙区制への移行も検討するよう求めている。

安倍氏と野田氏の約束

「身を切る改革」を掲げる維新の定数削減に対する思い入れは強いようだ。

自民の萩生田光一幹事長代行は15日のインターネットの「ニコニコニュース」のインタビューで、維新との交渉に関し、「吉村氏や藤田文武共同代表は副首都構想が重いと言っているが、別の維新の仲間に聞くと、『それよりも安倍(晋三元首相)さんと野田(佳彦・立憲民主党代表)さんが約束した議員定数削減のほうが重い。副首都は大阪都構想がだめになったときの代替案だと思われてしまうので、そんなに熱心じゃねーよ』と言われた」と明らかにした。

平成24年11月、国会の党首討論で当時は首相だった野田氏が安倍氏に対し、定数削減の実現を条件に衆院解散を約束していた。その後、一票の格差是正のための調整はあったが、抜本的な定数削減は行われていない。

萩生田氏はインタビューの中で「維新内もいろいろ意見があるのだな、と思い、今、模索している」と話していた。

▽政局流動化、「安住節」各党揺さぶる…「右の方はどうぞ高市先生に寄って」「自民もうちも数あわせ」<読売新聞オンライン>2025/10/17 09:00

記者団の取材に応じる立憲民主党の安住幹事長(16日、国会内で)
記者団の取材に応じる立憲民主党の安住幹事長(16日、国会内で)

[ドキュメント 自民新総裁]

 「右の方はどうぞ高市先生に寄っていただいて、我々は穏健中道路線でチームをつくっていく」。立憲民主党の安住幹事長は16日、公明党の西田幹事長と国会内で会談した後、記者団にそう述べた。

記者団の取材に応じる立憲民主党の安住幹事長(16日、国会内で)

 立民は首相指名選挙での野党候補一本化に向けて、日本維新の会と国民民主党と協議してきたが、ここに来て維新は高市総裁率いる自民党に急接近した。安住氏は現状を皮肉った上で、国民民主と公明との協力関係が「もう一つの軸になり得る」と強調した。

記者団の取材に応じる立憲民主党の安住幹事長(16日、国会内で)

 高市氏の総裁就任以降、政局が流動化する中で安住氏の発言は各党を揺さぶっている。野党で国民民主の玉木代表に一本化する可能性に立民で初めて言及したのも安住氏だ。基本政策の一致を求める玉木氏には「自民もうちも数あわせをやっている。きれいごとでごまかしているうちは本当ではないよ」と決断を迫った。

 玉木氏が煮え切らないとみるや、「ここで自分の殻を打ち破れば私の声が彼の心に届く」「玉木くんを弟のように 可愛かわい がろうと思う」などと独自の「安住節」も連発した。

 旧民主党時代の先輩でもある安住氏の声は無視できない。玉木氏は16日の日本テレビの番組で、前日開いた立維国3党の党首会談を振り返り、「安住氏の行儀が悪いというのは一致した」と言って笑いを誘った。

 立維国の行方が不透明となる中で、安住氏は次の一手をどう繰り出すのか。十数年に1度の好機を前にこうも語っている。

 「一日一日変わる。あすにならないと分からない。あしたはあしたの風が吹くのかな」

▽維新・吉村氏「本質は議員定数の削減」 企業献金廃止より優先か<毎日新聞>2025/10/17 10:09

日本維新の会の吉村洋文代表
日本維新の会の吉村洋文代表

 日本維新の会の吉村洋文代表は16日夜、テレビ朝日番組で「政治改革の本質は議員定数の大幅削減だ。企業・団体献金の禁止はできるだけ(自民党との溝を)埋めていきたいが、定数削減をまず本気でやれるかがポイントだ」と述べ、自民との政策協議では企業献金廃止よりも、議員定数の削減を優先させる考えを示した。

 自民派閥の裏金事件をめぐり、維新は、企業・団体献金の禁止法案を立憲民主党などと提出している。連立も見据えた自民との政策協議では、国会議員の1割減を目標とする議員定数削減について「2025年臨時国会」と成立時期まで明示する一方、企業献金廃止では実施時期を示さなかった。

 自民と維新は16日、維新の連立入りを含めた政策協議の初会合を国会内で開いた。自民の高市早苗総裁、維新の藤田文武共同代表と両党の幹事長、政調会長が出席した。

 藤田共同代表は16日の協議後、記者団に企業献金の廃止について「合意文書の中で一番ハードルが高い」と指摘。「この問題にどこまで踏み込み、合意するために譲歩できるかも含めて総合的に見る」と話し、譲歩する可能性を示唆していた。

 自民、維新両党は21日召集予定の臨時国会までの合意を目指し、17日に再協議する。【遠藤修平】