21日に行われる首班指名選挙で自民党の高市早苗総裁が次期総理に選出される見通しになった。日本維新の会が自民党と政策協定を締結、連立政権に参加する。公明党の離脱で不透明感が強まっていた政局だが、これでなんとか数の上では自公政権より安定した自維連立政権が樹立される。衆議院の過半数にはまだ2票足りないが、自民党がその気になればこの2票はどうにでもなるだろう。石破政権に比べ安定感は格段に増す。今回の政局で得点を挙げたのは維新だろう。反対に国民の手取りを増やす政策で支持率を伸ばしてきた国民民主党は、玉木代表の政治家としての資質が問われる事態になりそうな気がする。生き馬の目をぬくと言われる冷酷な政治の世界にあって玉木氏は、政策通だが大局観や政局観がまるでないことを露呈した。「対決より解決」「政策実現」を掲げた玉木代表の判断ミスで、千載一遇のチャンスを逃したことになる。

所得控除を103万円から178万円に引き上げ、ガゾリン税のトリガー条項を廃止する。国民民主の主張はバブル崩壊後の国民生活の苦境を救済すると同時に、日本再生に向けた起爆剤になり得る政策だった。物価上昇にタイミングをわせるように発せられたこの公約は、手取りが一向に増えない国民のこころを射抜いた。自民党の“失政”によって凋落した日本経済、「失われた30年」を取り戻す引き金になりそうな主張だった。昨年12月にまとめた自公国の3党幹事長合意はその象徴。国民民主はこの合意を受け補正予算に賛成した。だがこの合意は、補正予算を通すための“罠”だった。石破・森山ラインに騙された玉木氏は、これがトラウマとなって感情的なシコリが残ったのだろう。高市氏は総裁に就任した直後から、国民民主の名前をあげて連立の可能性を追求すると発言していた。にもかかわらず、玉木氏はこの誘いに乗らなかった。その間隙をついたのが今回もまた維新だった。

維新の要求は12項目ある。詳細は省くが、最後の最後に突き付けたが、国会議員の定数1割削減だ。高市氏はこれも飲んだ。これで国会情勢は激変する。削減対象は当面比例区との報道がる。離脱した公明党は選挙区での候補者擁立を諦め、比例区に特化する方針。その比例区の定数を削減する。これは公明党潰しだ。同時に小党排除にも通じる。そこに誘導したのは誰か。麻生副総裁と鈴木幹事長がさりげなく差配したのだろう。維新はそれを見抜いた。一方の玉木氏は公明党との関係を強化すると発言、これがネット上で大批判を浴びた。政局音痴の玉木氏は、高市政権の本質を見抜けなかった。維新はドス黒い政局のリスクを回避するために、「閣外協力」に傾いている。連合に引きずられ、高市氏との政策協議に瞬時に踏み切れなかった玉木氏。これは国民との約束を反故にする背信行為に近い。「それでも高市氏はいまでも玉木氏に一緒に政策を実現しよう」(高市シンパのジャーナリスト)と呼びかけているという。さてどうする玉木さん。