▽【米国市況】S&P500失速、米中首脳会談に不透明感-利益確定で金急落

Rita Nazareth

  • 円は対ドルで下落、高市氏発言後に151円半ばに下げ縮小する場面も
  • 米国債は年限全般で上昇、30年債利回りは一時4月初旬以来の低水準
Traders work on the floor of the New York Stock Exchange/Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
Traders work on the floor of the New York Stock Exchange/Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

21日の米金融市場では、S&P500種株価指数が買い一服となった。買い疲れの兆候が出ていることに加え、米中貿易協議を巡る不透明感が重しとなった。ドル買いが優勢となる中、円は対ドルで下落。金は一時12年ぶりの大幅安となるなど、足元の急ピッチの上昇から一転して売り込まれた。米国債は総じて上昇。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6735.350.220.00%
ダウ工業株30種平均46924.74218.160.47%
ナスダック総合指数22953.67-36.87-0.16%

  トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席との次回会談で貿易をめぐる「良い合意」が得られるとの見方を示す一方、会談の実現は保証できないと述べた。これを受けて、S&P500種株価指数は失速した。

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  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「当社のテクニカル見通しでは、株式市場は向こう数週間に値固め、あるいは高値からの揺り戻しの局面を迎える」と指摘。その上で「揺り戻しは健全であり、必要でもある」と語った。

  個別株では、利益見通しを引き上げたゼネラル・モーターズ(GM)や3Mが買われた。 3Mが押し上げる形で、ダウ工業株30種平均は最高値を更新した。

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  Gスクエアード・プライベート・ウェルスのビクトリア・グリーン氏は「10月はこれまで不気味な季節という異名にふさわしい展開となっている」と指摘。「にもかかわらず、株式市場は悪材料が絶え間なく押し寄せる中で底堅さを維持している」と述べた。

  歴史的な低ボラティリティーの環境を抜けだしつつあり、今後はさらにボラティリティーの上昇が見込まれるという。

  「もはや上昇するしかない局面だ。悪材料や割高なバリュエーションに対する懸念は不合理ではないものの、この強気相場は年末にかけて懸念の壁を乗り越え、今年を好調なトーンで締めくくると考えている」と同氏は述べた。

  ペッパーストーン・グループのマイケル・ブラウン氏は「抵抗が最も少ない道筋は依然として値上がり方向だ。下落局面は引き続き押し目買いの機会だ」と述べた。

  一方、ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は、米地方銀行で起きた一連の不正疑惑に関連する損失について、個別の事例だとしつつも、融資審査基準への注意を促す警鐘として受け止めるべきだと指摘した。

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為替

  ニューヨーク外国為替市場では、ドル買いが優勢。自民党の高市早苗総裁が正式に新首相に就任する中、円は主要通貨の中でアンダーパフォームが目立った。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1212.693.610.30%
ドル/円¥151.89¥1.140.76%
ユーロ/ドル$1.1603-$0.0039-0.33%
  米東部時間16時48分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は3日連続で上昇した。

  円は欧州時間からニューヨーク時間早朝にかけて対ドルで一段安となり、一時152円17銭まで売られた。

  その後、高市首相が就任後初となる記者会見で発言すると、円は151円台半ばまで下げを縮小する場面もあった。

  高市氏は金融政策の手法については日銀に委ねられるべきものだと指摘。「日銀が政府と十分に連携を密にして意思疎通を図っていく」と述べたほか、政府と日銀の共同声明(アコード)については直ちに見直す考えはないとも述べた。

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  田中百合子氏や太田知宏氏らゴールドマン・サックス証券のエコノミストは、新政権との関係から、日銀の利上げが大幅に遅れる、あるいは実現しなくなる可能性があると市場が受け止めれば、円安がさらに進行することもあり得ると指摘した。

  一方で、ゴールドマンでは、日銀が新政権下でも利上げを継続するとみており、2026年1月の利上げが基本シナリオだとしている。

  CIBCキャピタル・マーケッツは、日銀内で10月会合で利上げを急ぐ必要性はないとの見方が出ているとするブルームバーグ報道に言及。一方で、2025年度の実質国内総生産(GDP)見通しについて、小幅な上方修正が適切との見方を一部関係者が示している点に触れ、日銀は12月まで利上げを待つ公算が大きいと指摘した。

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ドル・円相場の推移

米国債

  米国債相場は年限全般で上昇(利回り低下)。30年債利回りは4月初旬以来の水準に低下した。米政府機関の閉鎖が続いていることに加え、英国やカナダでも債券買いが優勢となったことが背景にある。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.54%-2.7-0.60%
米10年債利回り3.96%-1.9-0.48%
米2年債利回り3.46%0.00.00%
  米東部時間16時48分

  米30年債利回りは一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.53%と、4月7日以来の低水準をつけた。短期債利回りの低下幅は限定的で、先週のレンジ内にとどまった。

  一方、10月1日に始まった米政府機関の閉鎖が続き、多くの経済統計の公表が遅れる中で、米国債には資金が流入している。閉鎖は歴代2位の長期記録更新まで寸前に迫っている。

  ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドリュー・ブレナー氏は「債券トレーダーは強気になっている」と指摘。「金利は引き続き低下し、イールドカーブはフラット化している」と述べた。

  30年債と5年債の利回り差は100bp弱と、9月初旬にみられた125bp超から縮小。10年債と2年債の利回り差もここ数カ月の60bp超から約50bpに縮んだ。

  BMOグローバル・アセット・マネジメントの債券・マネーマーケット部門責任者アール・デイビス氏は、FRBは今月0.25ポイントの追加利下げを決定する見通しである一方で、米経済における信用リスク不安を受けて、12月に0.5ポイントの利下げが行われる可能性が「劇的に高まっている」とブルームバーグテレビジョンで述べた。

原油

  ニューヨーク原油相場は反発。米政府が戦略石油備蓄(SPR)を再補充する計画を打ち出したため、買いが優勢になった。ただ、世界的な供給過剰になるとの見方から、5カ月ぶりの安値圏にとどまった。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=58ドル近辺で終了。SPR再補充計画が相場をある程度支えたものの、市場全体のセンチメントを転換させるには至らなかった。原油相場は9月下旬以降、10%余り下落している。

  ラピダン・エナジー・グループの創設者で社長のボブ・マクナリー氏は「供給の伸びは需要の3倍のペースで進んでいる」と、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで述べた。「短期的に供給過剰の状態にある」と指摘した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前日比30セント(0.5%)高の57.82ドルで終了。同限月はこの日が最終取引日だった。中心限月の12月限は57.24ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.5%高の61.32ドル。

  ニューヨーク金相場は急反落。歴史的な上昇の反動で割高感が意識され、利益確定の売りが膨らんだ。米中間の通商協議の進展やドル高、テクニカル面での過熱感、米政府機関の閉鎖によるポジションの不透明感やインドの季節的な買い需要の終了など複数の要因が重なった。

  金スポット価格は一時6.3%下落し、約12年ぶりの大幅安となった。銀スポット価格も一時8.7%下げた。テクニカル指標はこれまでの上昇が行き過ぎだった可能性を示していた。

  TDセキュリティーズのコモディティー戦略グローバル責任者、バート・メレク氏は貴金属ディーラーやトレンド追随型の投資家が「非常に力強い上昇局面の後に利益を確定している」と指摘。テクニカル面では、最近の上昇は歴史的に持続不可能で、反落しやすい状態にあったと述べた。

  ヒンズー教の大祭「ディワリ」に伴い、世界2位の金購入国であるインドが休場となったことも、流動性の大幅な低下につながった。

  金価格が先週、過去最高値を更新した背景には、米経済における信用の質への懸念もあった。これを受け、金現物に裏付けられた上場投資信託(ETF)には先週だけで80億ドルが流入し、2018年以降で最大の週間流入額となった。ワールド・ゴールド・カウンシルのデータが示した。

  BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、ヘレン・エイモス氏は「これだけの資金が短期間で流入すれば、短期の利益を得た段階で、一部の資金が流出するのも自然な流れだ」と述べた。

  米政府機関の閉鎖により、コモディティー(商品)トレーダーは重要な情報が欠如している中で取引を余儀なくされている。毎週公表されていた米商品先物取引委員会(CFTC)の金・銀先物ポジションのデータがないことで、投機筋が一方向に過度なポジションを積み上げているリスクも高まっている。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「データの欠如は微妙な局面と重なっており、投機筋による潜在的な買い持ち高の積み上がりが金・銀の双方について調整を招きやすい状態にしている」と語った。

関連記事:金相場12年ぶり大幅安、買われ過ぎのサイン-米中緊張緩和も逆風 (1)

  シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏によれば、過去数カ月にわたる金の上昇は、利回り低下や各国中銀による継続的な買い、追加金融緩和への期待に支えられた「並外れた展開」だった。

  同氏は「相場は一本調子には動かない。しかし、今回の上昇トレンドが終わったと判断するのは時期尚早だ。調整は自然な動きであり、多くの投資家がこの上昇局面に乗り遅れたことを考えれば、押し目買いが入りやすく、売り圧力は限定的になるだろう」と述べた。

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、貴金属価格が直近の安値を割り込むかどうかに注目しており、これが短期的な下げよりも大きな動きになるかどうかのサインになるとの考えを示した。

  同氏は「大きな上昇局面の後に資産価格が激しく動き始めると、本格的な下げの前兆になることが多い」と指摘。「必ずしも強気相場の終えんを意味するわけではないが、こうした荒い値動きは投資家やトレーダーに警戒感をもたらす」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時3分現在、前日比237.92ドル(5.5%)安の1オンス=4118.38ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同250.30ドル(5.7%)安の4109.10ドルで引けた。

原題:S&P 500 Flashes Signs of Fatigue as Gold Tumbles: Markets Wrap

   Treasuries Advance With US Shutdown on Cusp of Fourth Week

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