高市政権がスタートした。閣僚名簿を見ながら新入閣が意外に多いこと、その反対に女性閣僚と麻生派の入閣が予想外に少ないことが気になった。主要メディアが第2次麻生政権と揶揄する新政権。大黒柱ともいうべき麻生派からの入閣はたった1人だ。これはどういうことだろう。それでも「責任ある積極財政」に向けて期待感のある人選だという気がする。とりわけ財務大臣に就任した片山さつき氏の就任会見をネットで見て驚いた。かの森永卓郎氏が指摘した“ザイム真理教”説を引用して、国民に支持されない財務省であってはならないと指摘した。記憶に残る限りこんな大臣はこれまでいなかった。片山氏は民意を理解している。「財政の帳尻を合わせることだけが(財務省の)究極目標ではない。究極目標は成長する日本を将来に残すことだ。夢や期待が残る国にならなければいけない」。その通りだ。簡単な戦いではないが、既得権益の壁をぶち破れ。そう呟いてみた。
片山氏の発言を引用する、「ザイム真理教だといって財務省の解体デモが起きる。そのような対応、そういうスタンスにならない政策の持ってき方はあるんです。麻生財務大臣の時に作った財務省のミッションがある。非常にいいもので、それは未来への希望とか将来につなげるとか、国に対する本当に見識あるスタンスということが財務省の仕事ぶりの中で重要な要素だと書いてある。そういう風に持っていくことって可能なんです。財政の帳尻を合わせることだけが究極の目的じゃなくて、究極の目的はやはり成長する日本を将来に残すこと、夢や期待が残る国にならなくちゃいけないっていうことです」。おそらく財務省の幹部は新大臣の発言に内心震えていることだろう。インフレで国民が苦しい生活を強いられても、これまでの財務省は民意に耳を傾けることはなかった。「財源」のひと言で民意を退けてきた。財務省職員のマインドチェンジが必要なのだ。
その財務省に20年ぶりに返り咲いた片山氏だ。今の次官は5歳年下だそうだ。主要幹部の名前も顔も覚えているという。政治家に転じた片山氏は常に積極財政派を貫いてきた。だがこの間の自民党と財務省は米国追随と財政の帳尻合わせを優先してきた。その結果、国民一人当たりGDPがOECDの最下位グループに沈み、家計の可処分所得が毎年実質的に減少するという“失政”を許してきた。ジャパン・アズ・ナンバーワンがいつの間にか発展途上国の後塵を拝する経済的弱小国に成り下がろうとしている。その責任の多くはDSの“親分”として財政の健全化を主導した財務省にあるだろう。その財務省に復帰した片山氏は「夢や期待が残る国」づくりを目指すという。責任ある積極財政の先行きは決して平坦ではない。だが、閣僚の中には木原稔、城内実、小野田紀美など錚々たる働き手がいる。期待して見守ることにしよう。
