▽【米国市況】S&P500種は最高値更新、CPIサプライズで強気相場に勢い

Rita Nazareth

  • 円は対ドル6日続落、152円台後半-国債はCPI後の上げ幅削る
  • 金は週間ベースで10週ぶりに下落、調整続く-原油は反落

24日の米株式相場は続伸し、S&P500種株価指数は過去最高値を更新した。物価統計が予想より落ち着いたインフレを示し、利下げ観測が補強された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6791.6953.250.79%
ダウ工業株30種平均47207.12472.511.01%
ナスダック総合指数23204.87263.071.15%

  株式相場は10月入り後の上昇基調を継続。米金融緩和で企業収益が押し上げられるとの見方が、株価を押し上げた。

Stock Rotation Hits Megacaps As Wall Street Traders Gear Up For The Fed's Rate Decision
ウォール街Source: Bloomberg

  9月の消費者物価指数(CPI)コア指数が3カ月ぶりの低い伸びだったことは、政府機関が閉鎖されて以降、手がかりとなるデータを得られなかったトレーダーに、嬉しいサプライズをもたらした。

関連記事:米CPI、9月は予想下回る伸び-FRB追加利下げへの論拠強まる (3)

  来週の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利が引き下げられるとの見通しが広がっているが、CPIの数字は12月に再び追加利下げを行う正当性をFOMCに与える可能性がある。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのリンゼイ・ロズナー氏は「今回のCPI統計に米連邦準備制度理事会(FRB)を『動揺』させる要素はほとんどなかった」と述べた。

  Bライリー・ウェルスのアート・ホーガン氏は「朗報が届いた」と語った。「来週のFOMC会合での追加利下げ路線が明確に維持される。FRBは労働市場の軟化により強い関心を示しており、コアCPIが目標の2%を大きく上回っている状況でも、完全雇用の使命を守る姿勢を維持するだろう」と続けた。

Key Speakers At NABE Annual Meeting
パウエルFRB議長Source: Bloomberg

  政府閉鎖が続いているために、10月のインフレ統計は発表できない可能性が高いと、ホワイトハウスは述べた。

  モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は、予想を下回るCPIによって、政府閉鎖下に発表された民間データの内容が確認されたと指摘。つまりインフレ急伸や急激な労働市場悪化の兆候は見られないという。

  「堅実なリスク管理を重視するFOMCとしては、来週の会合で追加利下げを実施し、その後も続ける可能性が高い」と述べた。

  ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「名探偵シャーロック・ホームズの物語のように、インフレは『ほえなかった犬』だ」と語る。「多くの市場参加者がインフレ高進を予想し、弱気なポジションを取ってきたが、実際には経済も米企業も、想定以上に底堅く、ショートスクイーズが続く可能性がある」と述べた。

  同氏はさらに、バリュエーションが高く、市場にはリスクも存在することは理解していると述べつつ、「FRBが利下げに動いており、今回の経済指標も来週の0.25ポイントの利下げを妨げる内容ではなかった。加えて、企業利益が引き続き伸びていることを踏まえれば、今年の強気相場が妨害される可能性は低い」と指摘。「来年には新たな課題が待ち受けているだろうが、年末まで上昇トレンドに逆らうことは勧められない」と話した。

  個別企業のニュースでは、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の7-9月期(第1四半期)決算では、売上高が予想を上回った。価格が上昇する中でも、消費者はひげそりや制汗剤を買い求めた。同社は関税についても、これまでの予想影響額を半減した。

  ゼネラル・モーターズ(GM)はミシガン州デトロイト北部ウォーレンにある技術センターの従業員を中心に、200人以上のホワイトカラー職を削減した。

  JPモルガン・チェースは、年末までに機関投資家が保有する暗号資産(仮想通貨)のビットコインとイーサを融資担保として利用できるようにする計画だ。

米国債

  米国債相場は総じて上昇。物価統計の発表直後に大きく上昇した後は、別の統計で経済の底堅さが示され、伸び悩んだ。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.59%1.30.29%
米10年債利回り4.00%0.00.00%
米2年債利回り3.48%-0.9-0.25%
  米東部時間16時47分

  2年債利回りはこの日下げた分の大半を埋めた。S&Pグローバルが発表した10月の米企業活動を示す指数は、今年2番目の高水準となった。10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げた後、前日とほぼ変わらない水準まで戻した。

  コロンビア・スレッドニードル・インベストメントのポートフォリオマネジャー、エド・アルフセイニ氏は市場はかなりの金融緩和を織り込み済みだとして、「その後がなかなか続かないだろう」と述べた。

フォワード金利は中立水準を小幅に下回る
出所:ブルームバーグ

  クレジットサイツのマクロ戦略責任者ザカリー・グリフィス氏はCPIについて「歓迎されるリポートであることに間違いはない」と話す。「FOMCが労働市場の軟化に対処するため、政策金利を中立水準に下げたいと考えていることは明白だ。この日のCPI統計は短期的に緩和を継続する余地があることを示した」と述べた。

外為

  外国為替市場のドルは小幅高。米CPIが予想より低く、来週の利下げ期待が強まった影響で一時は下げていた。対ドルでの下げは円が顕著で、6営業日連続安。 

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1213.140.370.03%
ドル/円¥152.85¥0.280.18%
ユーロ/ドル$1.1626$0.00080.07%
  米東部時間16時47分

  ドルは対円で週間ベース1.5%上昇。日本の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前年比の上昇率が4カ月ぶりに拡大し、利上げに向けた日本銀行の姿勢に変化は生じないと見られている。就任したばかりの高市早苗首相がどう出るかが注目される。

  それでも来週の日銀決定会合では、政策は維持されるというのが大方のエコノミストによる見方だ。

   ソシエテ・ジェネラルの外為戦略責任者、キット・ジャックス氏は「ドル・円相場と日米利回り差との関係性は再び崩れ、『オーバーシュート(行き過ぎ)』の領域に入った」と述べた。

  「過去のオーバーシュート例で学んだのは、どこまでオーバーシュートできるのか示す方式は存在しないが、いったんきっかけをつかめばオーバーシュートは反転する傾向があるということだ」とリポートで指摘。「ドル・円が155円もしくは160円、あるいはそれ以上でピークを付けるかどうかにかかわらず、過去の事例からすると、いったんピークを確認すれば、140円を割り込んで下げる可能性は十分にある」と続けた。

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、週間ベースで0.5%上昇。この3週間で2週目の上昇となった。

関連記事:米CPI、9月は予想下回る伸び-FRB追加利下げへの論拠強まる (3)

  ホワイトハウスは10月の物価統計は11月に発表されない可能性が高いと述べた。  

  パイオニア・インベストメンツの債券・通貨戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は9月CPIについて「来週の連邦公開市場委員会(FOMC)だけでなく、12月会合についても利下げの青信号が点灯した」と指摘。「非常に良い数字だった。しかもデータは政府機関の閉鎖前に収集されたため、クリーンなデータでもある」と続けた。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のクローディオ・パイロン、アダーシュ・シンハ両氏は24日付のリポートで「FOMCは政策金利を25bp引き下げるだろう」と予想。「12月会合については限定的ではあるが何らかのガイダンスが示される」と見ているという。「パウエル議長はコミットしない姿勢をデータ不在のせいにするだろう」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油相場は反落。米国によるロシア主要石油会社への制裁が引き続き材料視され、供給混乱の懸念から2週間ぶり高値を付ける場面もあったものの、午後に下げに転じた。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は週間では約7%上昇した。米財務省は22日、ロシアの国営石油大手ロスネフチとルクオイルを制裁対象リストに追加。ロシアの戦争遂行の資金獲得能力に打撃を与えると説明した。

関連記事:米国が対ロシア制裁強化、石油大手2社を標的-原油相場は大幅上昇

  ロシア産原油の主要購入国であるインドへの輸出は急減が見込まれており、中国の国有企業もロシア産原油の一部購入を取りやめた。

  トレンド追随型のファンドは買い持ちを積み増しており、踏み上げを一段と誘っている。

  TDセキュリティーズのシニア商品ストラテジスト、ダン・ガリ氏は「下振れショックがない限り、あと数営業日はいずれのシナリオでも大規模なアルゴリズムによる買いが発生するだろう」と述べた。

原油反発、制裁で供給過剰懸念が後退 | ロシア大手産油企業への制裁で原油価格反発、2021年以来の安値圏から持ち直し

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比29セント(0.5%)安の1バレル=61.50ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.1%安の65.94ドル。

  ニューヨーク金相場は反落。高値警戒感から調整が続き、週間では10週ぶりに下げた。

  ただ、予想を下回った米CPIを受けて追加金融緩和観測が強まり、下げ幅を縮小した。通常、金利低下は利子を生まない金にとって支援材料となる。

  米中関係に引き続き注目が集まっている。トランプ米大統領と習近平国家主席は、来週に会談を予定しており、激化する貿易戦争の緩和を目指す構えだ。合意に至れば、金を含む安全資産への需要を高めていた地政学的緊張がある程度和らぐ可能性がある。

  8月中旬に始まり、今月20日に金スポット価格が1オンス=4381.52ドルの過去最高値を記録するまで続いた金の急騰局面は、21日に利益確定の売りで急ブレーキがかかった。この下落は、金連動型上場投資信託(ETF)による大量の保有金放出とも重なった。ブルームバーグのデータによれば、22日には保有金の減少量が1日当たりとして過去5カ月で最大となった。

  サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「調整局面は安定しつつあるように見えるが、個人投資家の幅広い参加が続いていることから、ボラティリティーは引き続き高水準にとどまる可能性がある」と指摘。「次の重要な上値抵抗線は4148ドル付近にあるが、上昇モメンタムの回復を確認するには4236ドルを明確に上抜ける必要があるだろう」と語った。

  金価格は今年に入り約57%上昇しており、中央銀行による買いに加え、拡大する財政赤字から資産を守るため国債や通貨を避ける「ディベースメント取引(通貨価値切り下げトレード)」が相場を支えている。米金融緩和への期待も、利息を生まない金の魅力を高めている。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時24分現在、前日比18.09ドル(0.4%)安の1オンス=4108.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同7.80ドル(0.2%)安の4137.80ドルで引けた。

原題:Stock Bull Run Hits New Highs After CPI Surprise: Markets Wrap(抜粋)

原題:Bonds Erase Post-CPI Gain as Survey Signals Economic Resilience(抜粋)

原題:Dollar Rises for Second Week in Three Ahead of Fed: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Steadies as Traders Weigh Sanctions on Russian Producers(抜粋)

原題:Gold to Snap Nine-Week Winning Run as Heat Comes Out of Rally(抜粋)