▽【米国市況】株が最高値、決算前のハイテク銘柄に買い-円8日ぶり上昇

Rita Nazareth

  • マグニフィセント・セブンの指数1.3%上昇、決算に警戒の声も一部に
  • 円は対ドルで上昇し152円前半、原油と金はいずれも3日続落

28日の米株式相場は4日続伸。大手ハイテク株が買われ、主要指数は再びそろって最高値を更新した。強気相場をけん引してきたハイテク各社の利益成長を、人工知能(AI)が引き続き支えるとの観測が広がった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6890.8915.730.23%
ダウ工業株30種平均47706.37161.780.34%
ナスダック総合指数23827.49190.030.80%

  S&P500種株価指数の構成銘柄の多くがこの日は上げ一服となる中、大手ハイテク株は上昇を続けた。マイクロソフトはオープンAIと新たな契約を結び、同社の持ち分27%を取得する。アップルは一時、時価総額が4兆ドル(約608兆円)を超えた。

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  29日と30日には大手ハイテク5社が決算発表を行う。この5社でS&P500種の時価総額の約4分の1を占める。各社の巨額投資は今後も続き、最終的にはそれが実るのか、市場は探ることになる。

Cybersecurity Firm Netskope IPO At Nasdaq MarketSite
ハイテク株上昇Source: Bloomberg

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「ハイテク大手はAI関連のテーマが健在であることを投資家に繰り返し示してきた。過去数カ月に発表されたディール件数を踏まえると、ウォール街がこの戦略を評価する限り、このシナリオは続く可能性が高い」と述べた。

  ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は1.3%上昇した。

  29日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、利下げがほぼ確実視されている。連邦準備制度理事会(FRB)がバランスシート縮小をいつ停止するのか明確な見通しを得たいとのムードも強い。 

  グラナイト・ベイ・ウェルス・マネジメントのポール・スタンリー氏は「S&P500種の時価総額の大部分をマグニフィセント・セブンが占めていることを考えると、これら企業の決算のいずれかでも失望を誘うものがあれば、相場は下落する、ないし次の材料が出るまで当面レンジ相場が続く可能性がある」と述べた。

  ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は「複数の時間軸で見て、市場は再び買われ過ぎ、行き過ぎの領域に入っている」と指摘。「2025年末までに5-10%程度の調整が入る可能性を警戒している」と述べた。

  アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は「過去数カ月に見られた株式相場の力強い上昇について、少なくとも足元でファンダメンタルズを上回るペースになっているのではないかと懸念する投資家が増えている」と指摘。「マグニフィセント・セブンが今週発表する決算が、こうした見方を裏付けるのか、それを覆すのかを示す機会となる」と述べた。

  同氏はまた、「マグニフィセント・セブンは利益予想を達成できる状態にある」とした上で、「これら企業の現在のバリュエーションや規模、市場全体への影響力を踏まえると、投資家が今週以降に最も注目するのは、その見通しや今後の収益性に関する見解となるだろう」と述べた。

外為

  外国為替市場ではFOMCの政策決定を待つ中で、ドル指数が続落。円は対ドルで8営業日ぶりに上昇した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1210.03-1.51-0.12%
ドル/円¥152.10-¥0.78-0.51%
ユーロ/ドル$1.1654$0.00090.08%
  米東部時間16時54分

  円は対ドルで上昇し、1ドル=151円後半から152円前半での推移となった。

  三菱UFJ信託銀行ニューヨーク支店資金証券室の横田裕矢シニアバイスプレジデントは、ドルがこれまでに対円で上昇していたことを受け、「日米首脳会談の前、およびFOMCと日銀会合前の大事な利食いポイントだったという印象。ただ、ドルは1円程度下げたところでは底堅さを維持している」と述べた。

  また、29日の相場については、FOMCでの利下げ、日銀据え置きが広く予想されている中で、152円を挟んだ動きづらい相場になるのではないかと予想した。

  アマゾン・ドット・コムは約1万4000人のコーポレート職を削減する計画を明らかにした。 

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  INGの為替戦略責任者クリス・ターナー氏は「静かな取引の中、ドルは全般的にやや軟調となっている」と指摘。「政府閉鎖のせいで米経済指標が発表されない中、アマゾンの人員削減計画に関する報道が普段より注目を集める可能性がある」と述べた。

国債

  米国債相場は総じて上昇(利回り低下)。この日実施された7年債入札は需要が低調だったが、利下げ観測を背景に利回り低下の流れはほぼ維持された。利回りはここ数週間で、年初来の低水準に近づいている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.54%-1.1-0.25%
米10年債利回り3.98%-0.4-0.10%
米2年債利回り3.49%-0.1-0.02%
  米東部時間16時54分

  モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アンドリュー・シチュロウスキ氏は、政府閉鎖に伴い、経済指標面で新たな材料が出てこないことに触れ、「それは市場が織り込んでいる利下げ観測を確固たるものにするだけだ」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3営業日続落。供給過剰を示す兆候が強まりつつある中、終値で約2週間ぶりの大幅安となった。先週は米国がロシアの石油大手に制裁を科したことをきっかけに急騰していた。

  市場では投機的な売り持ちポジションの大規模な手じまいを経て、今後の供給過剰が価格を押し下げるとの見方が強まる中、再び売りを仕掛けやすい状況となっている。

  タンカーの積載原油量は過去最高を記録し、供給過剰が一段と拡大していることを示している。さらに、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは今週末の会合で、生産量の追加引き上げに合意する可能性がある。

  SEBのアナリスト、オレ・バルビー氏は「市場は現在、制裁の実効性そのものに疑問を抱き始めている」と指摘。「全面的なブラックリスト化というのは劇的に聞こえるが、その執行メカニズムは依然として不透明で、これまでのところロシア産原油の供給に混乱は見られない」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比1.16ドル(1.9%)安の1バレル=60.15ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.9%安の64.40ドル。

  金スポット相場は3営業日続落。米中貿易協議の進展を背景に、安全資産とされる金の需要が減退した。

  金相場は最近までの急上昇から明確に反落した。20日には4381.52ドルと、過去最高値を更新していた。

  金連動型上場投資信託(ETF)は27日に保有する金を44万8706トロイオンス削減。過去6カ月で最大の放出となった。売却額は同日のスポット価格ベースで17億9000万ドルに相当する。

  ペッパーストーン・グループの調査責任者、クリス・ウェストン氏は「金相場は安値を更新し続けており、下落局面では先物の取引高も高止まりしているため、底入れを見極めるのは難しい」とリポートで指摘。「当面、底入れを探る動きは避け、下落後の反発局面で戦術的に買いを入れる方が合理的だ」と述べた。

  ただ、こうした下落は中央銀行が買い増しする好機となる可能性がある。ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が日本で開いた会議の出席者によれば、10年以上にわたって金地金を購入していない韓国中銀が中長期的な追加購入を検討している。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は29日の会合で0.25ポイントの利下げを決定すると広く予想されている。金利低下は利子を生まない金への追い風になるとされる。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時29分現在、前日比34.54ドル(0.9%)安の1オンス=3947.67ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、36.60ドル(0.9%)安の3983.10ドルで引けた。

原題:Stocks Get Tech Lift in Run-Up to AI Earnings Test: Markets Wrap

US Dollar Dips; Yen Rebounds on Verbal Intervention: Inside G-10

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Oil Falls as Traders Focus on Glut After Sanctions Rally Wanes

Gold Slumps Further as Trade Progress Erodes Haven Demand(抜粋)