▽【米国市況】ハイテク株に買い、アマゾン大型契約で-金利とドル上昇

Rita Nazareth

  • AI熱が広がる中でもS&P500構成銘柄のうち300社余りは下落
  • 米金融当局者がまちまちの発言、ISM製造業指数は予想下回る

3日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小幅続伸。アマゾン・ドット・コムのクラウド部門がOpenAIと380億ドル(約5兆8600億円)規模の契約を締結し、人工知能(AI)関連銘柄に弾みをつけた。株式相場にとって年間で最も好調な月とされる11月は、テクノロジー株主導で上昇して幕を開けた。国債利回りは上昇。

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株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6851.9711.770.17%
ダウ工業株30種平均47336.68-226.19-0.48%
ナスダック総合指数23834.72109.760.46%

  大型ハイテク株が再び上昇し、ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は1.2%上昇。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は今後7年間にわたり、同社が持つエヌビディア製半導体へのアクセスをオープンAIに提供する。アマゾン株は4%高。一方、AI熱が広がる中でも、S&P500構成銘柄のうち300社余りは下落した。

OpenAI, DeepSeek And ChatGPT Artificial Intelligence Illustrations
アマゾンがOpenAIと提携Source: Bloomberg

  3日の契約締結により、オープンAIを支えるためのデータセンター新設・再構築の動きにアマゾンが加わったことになる。こうした革新的技術を巡る投資熱が高まる一方、4月の急落以降続く株価上昇を受けて、市場全体としては調整の必要性を指摘する声も出ている。

  この日は、米金融当局者の発言が相次いだ。シカゴ連銀のグールズビー総裁は労働市場よりインフレの方を懸念していると述べた。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、12月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)の次回会合での追加利下げの可能性について、予断を持たずにいるべきだとの考えを示した。連邦準備制度理事会(FRB)のマイラン理事は、金融政策は依然として景気抑制的だとし、大幅利下げを引き続き主張していく考えを示した。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「依然としてバリュエーションの高さに対する懸念があり、米金融政策の見通しも不透明さを増している」と述べた。

  一方、「株式相場が年初来で大きく上昇しているにもかかわらず、この強気相場にはまだ上昇余地があるとみている」と語った。

  過去30年間の統計では、11月は最も高いリターンが期待できる月とされており、強気派にとっては追い風となる傾向がある。しかし、S&P500種が1950年代以来の好調なパフォーマンスを示している現在、年末の上昇分が既に織り込まれているのではないかとの疑問も浮上している。

  ヤルデニ・リサーチの創設者エド・ヤルデニ氏は「強気派が多過ぎる」と指摘し、「上昇銘柄の裾野が限られる中、予想外の出来事がひとつでも起きれば株価は高値から転落しかねない。ただ、年末にかけて楽観姿勢が強まる時期でもあるため、それも簡単ではないだろう」と述べた。

  eToroのブレット・ケンウェル氏は、FRBの姿勢に変化が生じ12月の利下げ観測が見直される中、投資家心理が大きく悪化すれば、株式相場は調整局面に入る可能性があると指摘。「S&P500種が6カ月連続、ナスダック指数が7カ月連続で上昇している現状を踏まえれば、様子見に回っている投資家にとっては、調整はむしろ歓迎すべき展開となるだろう」と続けた。

Technicals Nearing Extremes | Nasdaq 100 is well above its 200-day moving average

  LPLファイナンシャルのアダム・ターンクイスト氏やジェフリー・ブッフビンダー氏らストラテジストは「相場の流れに逆らうな、という格言があるが、われわれも同意する。これほど一貫して高値を更新する強気相場には、反論しにくい」と述べた。その上で「強気相場は直線的ではないとの格言もある。ただ、4月以降の相場を見ると、そうは見えないかもしれないが」と付け加えた。

  LPLのストラテジストは、株価指数が上昇を続ける一方で値上がり銘柄の広がりが伴っていない場合、市場の土台に「ひび」が入り始めている兆候である可能性を指摘。「仮にこの上昇相場が一時的に足踏みしても、季節的な強さが下落幅や調整期間をある程度抑える可能性がある」とした上で、「過去6カ月間の上昇が力強かったことを踏まえると、一部の上昇分は先取りされている可能性が高い」と語った。

国債

  米国債相場は下落(利回りは上昇)。グーグルの親会社アルファベットによる大型社債の発行計画が発表され、国債売りが優勢になった。同社の米国での社債発行は償還期限3年から50年まで8本建てとなるという。

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国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.68%3.00.64%
米10年債利回り4.10%2.50.62%
米2年債利回り3.60%2.50.69%
  米東部時間16時31分

  供給管理協会(ISM)が発表した10月の米製造業総合景況指数が予想を下回り、米国債は下げ幅を縮小する場面もあった。

関連記事:米ISM製造業景況指数、8カ月連続で活動縮小-需要の低調さ映す (2)

  バイタル・ナレッジのアダム・クリサフリ氏は「受注と雇用が前月から上昇し、インフレ圧力も和らいだことを踏まえれば、全体としてはやや前向きな内容だ。しかし、データセンター特需を除けば、製造業全体の状況は依然として厳しい」と指摘した。

外為

  外国為替市場では、ブルームバーグのドル指数が小幅上昇。ISM製造業総合景況指数が市場予想を下回ったにもかかわらず、FRB当局者の発言を受けて、ドル買いが優勢になった。

  円は対ドルで軟調。1ドル=154円台前半を中心に推移し、一時は154円30銭まで下げた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1221.380.500.04%
ドル/円¥154.21¥0.220.14%
ユーロ/ドル$1.1517-$0.0020-0.17%
  米東部時間16時31分

原油

  ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスによる増産一時停止の決定が意識された。市場では、供給過剰に対する懸念が広がっている。

  ウェストテキサスインターミディエート(WTI)は日中、上げ下げを繰り返す方向感に乏しい展開となった。OPECプラスは、12月に小幅な増産を実施した後、来年1-3月(第1四半期)は生産量の引き上げを一時停止する。関係者によると、1-3月期は通常、需要が弱まる時期であり、今回の判断はそうした季節的な減速を見込んだものだという。

関連記事:OPECプラス、来年1-3月の増産を停止-供給過剰懸念で慎重姿勢

  モルガン・スタンレーのアナリスト、マーティン・ラッツ氏とシャーロット・ファーキンス氏はリポートで、「1-3月の増産停止決定は当社の生産見通しを大きく変えるものではないが、重要なシグナルを送っている」とし、「OPECプラスは、依然として市場環境に応じて供給を調整している」と付け加えた。

  OPECプラスの決定を受け、モルガン・スタンレーはブレント原油の短期価格見通しを引き上げたが、「大幅な供給余剰」に対する警告は維持した。一方でアラブ首長国連邦(UAE)は、供給過剰の懸念は見られないとの見解を示した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前営業日比7セント(0.1%)高の1バレル=61.05ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.2%上昇の64.89ドル。

  金スポット相場はほぼ横ばい。日中は1オンス=4000ドル近辺で推移した。中国が一部の小売業者に長年適用していた税優遇措置を廃止したことを受け、同国での需要への影響を見極める動きが広がった。

  金スポットはアジア時間に一時1%下落。米国時間は一時0.7%高となった後、4000ドルを挟んでもみ合う展開となった。中国財政省は1日、上海黄金交易所や上海先物取引所から購入した金を直接、または加工後に販売する際に、一部の小売業者はこれまで認められていた付加価値税(VAT)の控除が今後できなくなると発表した。

関連記事:中国、金販売の税優遇措置を撤廃-購入価格押し上げの可能性

  ティファニー・フェン氏らシティグループのアナリストはリポートで、今回の税制変更により「業界全体がコスト圧力を転嫁するために価格を引き上げる可能性が高い」と分析した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時11分現在、前営業日比6.30ドル(0.2%)高の1オンス=4009.22ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は17.50ドル(0.4%)上昇し4014ドルちょうどで引けた。

原題:‘Mag Seven’ Jump as Amazon’s Deal Fuels AI Wagers: Markets Wrap(抜粋)

S&P 500 Muted as Manufacturing Shrinks For Eighth-Straight Month

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