▽【米国市況】株が下落、調整への警戒感強まる-円や国債に逃避の買い

Rita Nazareth

  • ウォール街トップが調整への備えを呼びかけ、原油と金も下落
  • ドル指数が5日続伸、5月以来の高水準-円は153円台

4日の米株式相場は下落。ウォール街の最高経営責任者(CEO)らが高いバリュエーションを理由に調整への備えを呼びかけたため、リスク資産やハイテク株への売りが膨らんだ。

  投資家心理やテクニカル指標が過熱の兆しを見せる中、上昇が一部の銘柄に限られる状況が続いている。そうした中、キャピタル・グループやゴールドマン・サックス・グループ、モルガン・スタンレーなど大手金融機関のトップは、こうした調整はむしろ健全な展開となり得るとの見方も示した。

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株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6771.55-80.42-1.17%
ダウ工業株30種平均47085.24-251.44-0.53%
ナスダック総合指数23348.64-486.08-2.04%
Flood Insurer Neptune’s Backers Raise $368 Million In US IPO
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「中長期の展開がどうであれ、足元では何らかの意味ある調整が近づいているというのがわれわれの見方だ」と述べた。

  S&P500種株価指数は月間で10月まで6カ月連続で上昇し、1950年代以降で屈指の上昇局面となった。背景には米企業の底堅さと、人工知能(AI)に対する期待の高まり、そして利下げ継続観測がある。ただ、こうした堅調な上昇に加え、最近では相場の値上がりが限られた銘柄に偏っていることから、相場のぜい弱性を懸念する声も広がっている。

  この日の取引では、まさにその典型例が見られた。

  パランティア・テクノロジーズの株価は、業績見通しを引き上げたにもかかわらず8%下落した。過去1年間で400%近く上昇しており、AIへの強気な見通しだけではバリュエーションへの不安を払拭できなかった。さらに、著名ヘッジファンドマネジャーのマイケル・バーリ氏がパランティアとエヌビディアに対する弱気のポジションを開示した。

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  相場の下落は市場サイクルにおける正常な局面だとの見方について、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのエリアス・ハダッド氏は「それに異を唱えるのは難しい」と語った。その上で「株式相場の上昇は、堅調な企業業績や緩和的な金融政策に支えられており、根拠がないとまでは言えないが、投資家の強気姿勢やオプション市場のポジショニングを見る限り、ある程度の熱狂は反映している」と指摘した。

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン、ベイル・ハートマン、ディレイニー・チョイ3氏は「株式の高バリュエーションに対する懸念が、安全資産への緩やかな資金逃避を促した」と指摘。「現在の市場環境や、株価が過去最高値を更新するのが例外ではなく当たり前になっている状況を踏まえれば、高いバリュエーションへの懸念は今に始まったことではない」と述べた。足元の強気なリプライシング(価格の見直し)を経た今、リスク資産にとって一連の値固めがプラスに働くとの見方には理解を示すと続けた。

国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。株価が下落する中、安全資産とされる国債に資金が流入した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.67%-2.3-0.49%
米10年債利回り4.08%-2.7-0.66%
米2年債利回り3.58%-2.9-0.80%
  米東部時間16時18分

  利回りは複数の年限で、先月記録した年初来最低の付近で推移している。過去最長記録に並んだ米政府機関の閉鎖が経済成長を阻害するとの懸念も反映している。

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  オックスフォード・エコノミクスのアナリスト、ジョン・キャナバン氏は株式相場の下落をきっかけに「防御のために資金は素早く米国債に流入した」と述べた。「株式のバリュエーションが割高な状態にあるとの見方は以前から広がっており、調整局面は予想されていた」と指摘した。

  モネタ・グループ・インベストメント・アドバイザーズのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト、イーフィン・デビット氏は「現在の市場は、特にハイテク株に関しては完璧が織り込まれた状態にある」とブルームバーグラジオで指摘。「売り上げが良かったというニュースでさえ、期待があまりに高いために悪材料になっている」と語った。  

外為

  外国為替市場では、ブルームバーグのドル指数が5日続伸。5月以来の高水準に達した。株安を背景にリスク回避の動きとなった。

  円は対ドルで上昇。1ドル=153円台半ばを中心に推移した。安全通貨として円が主要通貨に対して堅調となった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1225.954.520.37%
ドル/円¥153.66-¥0.56-0.36%
ユーロ/ドル$1.1480-$0.0040-0.35%
  米東部時間16時18分

  片山さつき財務相は、為替動向を高い緊張感を持って見極めているということに変わりはないと述べた。

  欧州拠点のトレーダーによると、片山氏の発言を受けてヘッジファンドはドルの買い持ちを手じまい、152円00〜50銭付近で押し目買いの指し値を入れている。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は5営業日ぶりに下落。ドル高と供給過剰懸念が下押し圧力となった。

  高バリュエーションへの懸念から世界的に株高が一服する一方、ドルは約5カ月ぶり高値に上昇し、原油などドル建てで取引される商品に重しとなった。

  ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏は、原油値下がりについて「ドル資金調達へのストレスと、それが世界の流動性や成長に波及する二次的影響」が理由だと分析した。

  石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは、12月に小幅な増産を実施した後、来年1-3月(第1四半期)は生産量の引き上げを一時停止する。広く予想されている供給過剰を見越した決定だ。

関連記事:OPECプラス、来年1-3月の増産を停止-供給過剰懸念で慎重姿勢

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比49セント(0.8%)安の1バレル=60.56ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.7%下落し64.44ドル。

  金スポット相場は1週間ぶりの大幅安。ドルが数カ月ぶりの高値を付けたことが手掛かりとなったほか、米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利政策見通しも意識された。

  ドル指数はこのままいけば7月以来で最長の連続高となり、ドル建てで取引される金など商品の重しとなっている。金は8月下旬以降、FOMCの追加利下げ期待を背景に大きく上昇してきた。直近では急落しているが、それでも年初来でなお50%超の上昇率を維持している。ただ米政策金利の道筋が変化すれば、金は価格上昇の流れが崩れる可能性もある。利下げの可能性が低下すれば、利息を生まない金投資にはマイナスとなる。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は、この日の金下落について「慎重姿勢のFOMCとドル高」が材料になったと分析した。

  ブルームバーグが先物価格から算出したところによると、現在のところ市場は12月FOMC会合での利下げ確率を約3分の2と織り込んでおり、2週間前よりもややタカ派的な見方が強まっている。

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時31分現在、前日比62.27ドル(1.6%)安の1オンス=3939.15ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は53.50ドル(1.3%)下落の3960.50ドルで引けた。

原題:Stock Bulls Get Wake-Up Call From Wall Street CEOs: Markets Wrap(抜粋)

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