▽【米国市況】株反発、半導体に押し目買い-国債増発観測で利回り上昇

Rita Nazareth

  • 米経済指標が予想を上回る、マイラン理事「歓迎すべきサプライズ」
  • 円は154円台前半、NY原油は60ドル割り込む-金は反発
Traders On The Floor Of The New York Stock Exchange As Fed Chair Powell Holds New Conference
 Photographer:MIchael Nagle/Bloomberg

5日の米株式相場は反発。下げても買いの好機とみなされ、半導体関連株を中心に買いが優勢になった。前日は人工知能(AI)ブームの恩恵を最も受けてきた銘柄を中心に、売りが出ていた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6796.2924.740.37%
ダウ工業株30種平均47311.00225.760.48%
ナスダック総合指数23499.80151.160.65%
Traders On The Floor Of The New York Stock Exchange As Fed Chair Powell Holds New Conference
 Photographer:MIchael Nagle/Bloomberg

  エドワーズ・アセット・マネジメントのロバート・エドワーズ氏は「待機資金を抱える投資家にとって、最近の下げは特に長期的な観点から買い時に見える」と述べた。「企業の利益が急増しており、売上高を上回るペースで拡大している。こうした状況は株価のバリュエーション拡大につながることが多い」と指摘した。

  米供給管理協会(ISM)が発表した10月の米非製造業総合景況指数は8カ月ぶりの高水準となった。米連邦準備制度理事会(FRB)のマイラン理事は10月の民間雇用者数が増加したことについて「歓迎すべきサプライズだ」と述べた。一方で、金利を引き下げる必要があるとの考えを改めて示した。

  S&P500種株価指数は6800をわずかに下回って終えたが、300余りの構成銘柄が上昇した。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3%上昇した。小型株で構成されるラッセル2000指数は1.5%上昇した。

  株式相場の上昇を限られた銘柄がけん引していることへの懸念が一段と強まっている。さらに米連邦準備制度(FRB)当局者の発言トーンが変化し、利下げへの楽観ムードにも陰りが出てきた。テクニカル指標も次第に警戒サインが増え始めており、ウォール街のトップがバリュエーションの過熱に警鐘を鳴らす中、市場全体に慎重ムードが漂いつつある。

  フォレックス・ドットコムのファワド・ラザクザダ氏は「ここまで株式を押し上げた高いバリュエーションを正当化しようと、トレーダーは新たな材料を探しているが、納得できる理由はあまり見つかっていない。それでも売りたくないようだ」と指摘。「これまで株式市場では押し目買いが主要なテーマとなっており、下げても下値は限定的だ」と述べた。

  エマニュエル・コー氏率いるバークレイズのストラテジストチームによれば、直近の株価下落は力強い上昇の後としては健全な下げに見えるが、年末にかけては依然として堅調な展開が見込まれる。FRBからの利下げを示唆する姿勢やAI関連の強い追い風、地政学リスクの抑制といった要因が、投資家心理を下支えしているという。

  同チームによれば、現在のポジショニングは高水準ながら極端ではなく、システマチック運用ファンドはすでにリスクを縮小している。個人投資家の資金流入があるにもかかわらず待機資金が潤沢なため、押し目では買いが入りやすいとの見方を示した。季節的には相場が上昇しやすい時期であり、自社株買いも再開されていることが買い材料として意識されているという。

Buy The Dips Saw Low Risk, High Reward | All S&P 500 Index drawdowns barely exceeded 3%
出所:ブルームバーグ

国債

  米国債相場は下落(利回りは上昇)。米財務省が将来の入札規模拡大を示唆したことに加え、米経済の底堅さが示されて12月の利下げ観測が後退し、売りが優勢になった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.74%7.21.55%
米10年債利回り4.16%7.01.71%
米2年債利回り3.63%5.41.50%
  米東部時間16時29分

  財務省は「今後を見据えて、名目利付債と変動利付債の入札規模拡大に関する予備的な検討を始めた」と説明した。一方、中長期債の入札規模については「少なくとも向こう数四半期にわたって」維持すると発表した。

関連記事:米国の中長期債発行額「向こう数四半期」維持-四半期定例入札 (2)

  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は「財務省が将来の名目利付債の増額を検討し始めているという追加のガイダンスに、金利市場が反応したと見られる」と述べ、「このガイダンスは事実上、利付債の発行規模縮小の可能性を排除するものであり、場合によっては2026年11月にも増額が実施されるリスクが出てきた」と指摘した。

米10年債利回り、約1カ月ぶり高水準

  トランプ政権が課した関税の合法性をめぐる米連邦最高裁の審理にも注目が集まっている。この関税は、9月30日に終了した会計年度で連邦政府の歳入を押し上げ、財政赤字の縮小に寄与したとされている。だが最高裁が政権に不利な判断を下せば、こうした進展は頓挫する可能性がある。

関連記事:トランプ関税は合法か、最高裁判事の大半が懐疑的見解-口頭弁論 (1)

  RJオブライアンの金利デリバティブ・スペシャリスト、ジョン・ブレイディー氏は「仮に関税が無効と判断されれば、4.15%近辺にある10年債利回りや4.75%付近にある30年債利回りは突然激しく上昇するリスクがある」と述べ、市場は「今ほど良くない財政赤字の状況」に直面することになるだろうと警告した。  

外為

  外国為替市場でブルームバーグのドル指数はわずかながら6日ぶりに下落。米サービス業活動や民間部門雇用者数が市場予想を上回り、米国債利回りを押し上げたにもかかわらず、ドルの上値は重かった。

  円は対ドルで下落。一時は1ドル=154円36銭まで下げた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1225.16-0.87-0.07%
ドル/円¥154.12¥0.450.29%
ユーロ/ドル$1.1491$0.00090.08%
  米東部時間16時29分

  RBCキャピタル・マーケッツは、ドルを支えている要因が逆風に転じた場合、ドルはかつてのインターネットバブルのようなブーム・アンド・バスト(急激な拡大と縮小)のサイクルをたどる可能性があるとして、トレーダーは長期的なドル安に備えるべきだとの見解を示した。

  ドルは今年すでにトランプ大統領の政策に伴う不透明感から大きな打撃を受けたが、一方で株式相場の高騰や、特に巨大なパッシブ運用ファンドによる米国資産への資金配分に支えられてきた。

  RBCの通貨ストラテジスト、リチャード・コチノス氏はこうしたグローバル投資家が過去20年間、米国資産、とりわけ株式への投資を強めてきたとし、その資金の流れが結果としてドルを支える要因になったと話した。

  同氏はリポートで「過去15年間はこうした資金の集中がうまく機能してきたが、現在の環境下ではリスク要因となり得る」と指摘。「需要や相対的なパフォーマンスに測定可能な変化が生じれば、為替市場に重大な影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

  インターネットバブル崩壊後の2000年のように、ショックを機に資本が分散し始めた場合、ドルが大幅な下落局面に入る前兆になるとも同氏は指摘。ドルがピークから40%下落した、01年から08年にかけた動きに匹敵する可能性があると警鐘を鳴らした。  

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続落。強弱まちまちな米在庫データと、根強く続く供給過剰見通しが意識された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は重要な節目である1バレル=60ドルを割り込んだ。この水準を下回ると買い戻しが加速する傾向がある。相場は先週初め以降、およそ2ドル幅のレンジ相場となっている。

  米政府統計を受けて原油には下押し圧力がかかった。米エネルギー情報局の週間在庫統計によれば、10月31日までの1週間に原油在庫は520万バレル増加。増加幅は7月以来の大幅だったが、市場が注目する業界団体による予測よりは小幅にとどまった。この予測は市場でほぼ織り込まれていた。石油製品の在庫は全体的に減少。底堅い需要を示唆し、下押し圧力を和らげた。

  分析会社クプラーの石油アナリスト、マット・スミス氏は「輸入の回復と、季節的なメンテナンスに伴う精製活動の低調さが、米国の原油在庫の増加につながった」と指摘。「原油輸出の積み出し量もEIAの報告値を大きく下回っており、在庫増加の一因となった」と説明した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は前日比96セント(1.6%)安の1バレル=59.60ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は1.4%下げて63.52ドル。

  金スポット相場は4営業日ぶりに上昇。米雇用市場の安定化を示唆する経済データを受け、米政策金利見通しが意識された。

  金投資は利息を生まないため、低金利環境下で魅力が増す。今年に入り金相場は大幅に上昇してきたが、ここ2週間は利益確定の売りに押され、上値の重い展開となっている。政策当局者が追加緩和に慎重な姿勢を示していることも、金相場の重しになっている。

  TDセキュリティーズのストラテジスト、バート・メレク氏は「金相場が1オンス=3800-4050ドルのレンジで値固めの展開となっても意外ではない」とリポートで指摘。連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ見通しを巡る不透明感や、中国個人投資家の買い意欲に対する懸念などをその理由に挙げた。

  メレク氏はただ、今年の金上昇を支えた要因の多くはなお健在であり、各国中銀による積極的な買い入れと個人投資家からの強い需要により、価格は調整局面を経た後は上昇に転じるとの見方を示した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後3時8分現在、前日比56.80ドル(1.4%)高の1オンス=3988.89ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は32.40ドル(0.8%)上昇の3992.90ドルで引けた。

原題:Stock Traders Buy the Dip After Tech-Driven Slide: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Fall as Supply Outlook Compounds Anxiety About Fed

Dollar Slips Despite Solid Jobs, Services Readings: Inside G-10

Dollar Faces Risk of 2000s’ Boom-and-Bust 40% Decline, RBC Warns

Oil Declines in Listless Trade With Supply Outlook in Focus

Gold Rebounds as Traders Assess Fed Rate Path After US Data