NY市長に自称・民主社会主義者のゾーラン・マムダニ氏が当選した。Wikipediaによるとマムダニ氏は1991年10月18日、ウガンダのカンパラでインド系の家庭に生まれた。ムスリム(イスラム教徒)である。母親は映画監督のミーラー・ナーイル氏、父親は文化人類学者のマフムード・マムダニ氏。7歳のときニューヨークに移住した。ラッパーとして活動していた時期もある。政治化としての経歴は2020年、ニューヨーク州議会議員選挙に民主党から出馬して当選。その後、2022年と2024年に再選を果たしている。今回NY市長選に立候補したが、選挙戦のスタート時点では無名の泡沫候補。しかし、選挙活動を通して反トランプを掲げ、物価高に苦しむ庶民の支持を獲得した。こうした経歴は2016年の大統領選挙に立候補したトランプ氏に似ている。当初は無名だったがラストベルト(錆びた都市)を掲げて大統領に上り詰めた。

トランプ氏は当初マムダニ氏について「共産主義者」「急進左派」「反ユダヤ主義者」などとレッテルを貼っていた。「当選すれば政府資金を差し止める」とまで公言して憚らなかった。そのマムダニ氏がNY市長に当選。得票率はCBSによるとマムダニ氏は50.3%、クオモ氏は41.6%の見通し。マムダニ氏は「トランプに裏切られた国、どうやったら彼を倒せるか。誰かが手本を示せるとしたら、それは彼を出世させたこの街だ」と主張してきた。当確が出た後のスピーチで、「トランプ、これを見ているのは知っている、あなたには四つの単語を言いたい。Turn the volume up!(音量を上げろ)」、「ニューヨークは移民の街で今後は移民が先頭に立つ街になる」(BBC)と挑発している。選挙戦直後の興奮冷めやらぬ時点での発言。時の勢いであり特に気にする必要もないのだが、この2人の間ではこの先、苛烈なバトルが繰り返されるだろう。

それ以上に、大統領ならびに米国にとってこの選挙は、米国の全土を覆っている不透明感にさらん拍車をかけることは間違いない。同時に実施されたバージニア州とニュージャージー州の知事選では民主党が勝利している。来年の中間選挙の戦いもすでに始まっている。加えてこの日には連邦最高裁でトランプ関税の違法性をめぐる口頭弁論も始まっている。仮にトランプ敗訴となれば世界経済の先行きに大きな波乱要因となる。反トランプで民主党は勢いづくだろう。これが政府閉鎖問題にどのように影響するのだろうか。さらにいえば、マムダニ氏をめぐる民主党内の雰囲気だ。賛否が完全に分裂している。急進左派は強い支持を表明しているが、穏健派や中道派には異論が燻っている。国際情勢はただでさえ不安定だ。これにマムダニ旋風が加われば、米国内の分裂はこれまで以上に深刻になるだろう。経済、地政学リスク、左右分裂。世界は一段と不透明感が強まりそうだ。