予算委員会の論戦が今週、衆参で行われる。高市総理にとっては初めての対面での与野党論争。課題は山ほどある。野党は政治とカネに焦点を当てるだろう。一方高市総理には「責任ある積極財政」の説明責任が問われる。どちらも重要な問題。甲乙つけ難いが、どちらも論争して決着がつくような問題ではない。何が重要か。国民民主党の玉木代表が主張する「対決より解決」と同じで、「論争より結果」が必要だ。その玉木氏は昨日フジテレビの番組に出演し、「高市政権が成長重視でやろうとする方向は財政再建の観点からも間違っていない」と話し、高市総理に同調する姿勢を鮮明ににした。その上で、「今週にも経済政策として具体案を高市首相に提言する可能性を示した」とBloombergはは伝えている。
さらに高市首相の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の複数年度化の主張に対して同氏は、「単年度で収支合わせようとすると柔軟な運営ができず、供給力を強化するための積極的な財政出動は間違っていない」と言及している。精査する必要はあるが、「出すべきところには出し、成長を促し財政を健全化していく姿を見せていくべきだ」と主張した。高市総理も玉木代表も「財政健全化のために積極財政が必要」という認識で一致している。日本経済の根本的問題は、財政の健全化のために家計が犠牲になっていることだ。これが旧来の自民党にとって最大の“失策”と、個人的には考えている。パリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏も、8日付の財界オンラインで同じような主張を展開している。インフレで国の純債務の対GDP比率が低下している。その一方で物価対策はスピード感が決定的に欠落している。
結果的に政府はインフレタックスが増大、企業は円安に伴う売り上げが急増して業績全体が好調を維持している。半面インフレの影響で家計は実質の手取り収入が減少し、日常生活が窮迫するという事態を招いている。河野氏は「日本は消費税の引き上げの際に、低所得者を対象として給付付き税額控除などを実施すべきだったが、これを怠ってきた」と解説する。要するに家計を犠牲にして財政の健全化を追求したというわけだ。これが日本経済ならびに日本社会の閉塞感につながった。この間、自民党は裏金作りに勤しんでいたわけで、予算委員会の論戦で野党はこの問題を追求すべくてぐすね引いている。日本が失われた30年を脱却するためにはこの2つの問題を同時に解決する必要がある。いずれも結果が出るまでに時間がかかる。時間を超越した論戦ができるかどうか、国会議員の質が問われる論戦になる。
