▽【米国市況】円が対ドル155円に下落、日本の警告響かず-ダウ最高値
Rita Nazareth
- 下院はこの日つなぎ予算案を採決へ、ドルは上昇後に勢い失速
- 延期されたデータの発表待ち、10月雇用統計とCPIの発表ない可能性も
12日のニューヨーク外国為替市場では円が下落。対ドルで155円を超えて売られる場面があった。日本時間には行き過ぎた変動に対し、日本当局から警告が出ていた。一方、過去最長となった米政府機関の閉鎖がようやく解除されるとの期待で、ドル指数は押し上げられた後、上昇幅を縮小。前日とほぼ変わらない水準に落ち着いた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1218.24 | 0.47 | 0.04% |
| ドル/円 | ¥154.83 | ¥0.67 | 0.43% |
| ユーロ/ドル | $1.1585 | $0.0003 | 0.03% |
| 米東部時間 | 16時32分 |
円は対ドルで155円04銭まで下げ、2月以来の円安・ドル高水準に達した。これで4営業日続落となった。
片山さつき財務相は日本時間12日、円安が進んでいることを受け「足元は一方的な急激な動きが見られる」と指摘。「過度な変動や無秩序な動きについて、高い緊張感を持って見極めている」と話した。
関連記事:円が対ドルで155円超に下落、リスクオンや日銀の早期利上げ観測後退
ラボバンクの外国為替戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は「日本銀行が12月に金利を引き上げるリスクを排除できない」と話す。「1ドル=155円の水準近辺で市場は神経質になる」とブルームバーグテレビジョンで語った。
円は午前の取引でこの日の安値を付けた後は、やや下げ渋る展開だった。三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役は「高市政権の財政・金融政策スタンスを背景に、円売り地合いは根強いとみている。155円を超えて円安がさらに進んだ場合、次の目線は今年1月安値の158円87銭近辺に切り上がる」と指摘した。
日本当局による介入リスクについては「高まっていないと考える。当局者の発言は増えているが、逼迫(ひっぱく)感が強まっていない」と指摘。
「ドル売り介入には日米協議が必要となるが、ベッセント財務長官が日銀の正常化を促す発言を再三している一方、高市政権は日銀の正常化をけん制するかのようなスタンスを取っており、介入は容易でない可能性がある」と発言。「介入で円安を目先止めることは期待できない」と述べた。

主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時は0.2%上昇したが午後の取引ではもみあった。
米下院は12日、連邦政府の閉鎖を終わらせるための採決を行う。12月の連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、投資家の間ではここ数週間見送られてきた経済統計の発表が待たれている。しかしホワイトハウスはこの日、10月の雇用統計と消費者物価指数(CPI)が発表されない可能性は高いと述べた。
アトランタ連銀のボスティック総裁は、2月末の任期満了をもって退任する意向を表明した。同総裁は経済にとって最大のリスクは依然としてインフレにあると述べた。
株式
米株式市場はおおむね堅調。S&P500種株価指数では約300銘柄の株価が上昇した一方、大型ハイテク株は下げた。ダウ工業株30種平均は4日続伸し、過去最高値を更新した。過去最長となった政府機関の閉鎖が、この日の下院採決を経て間もなく解除されるとの期待が広がった。市場では米金融政策見通しを左右しかねない重要経済データの発表が待たれている。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6850.92 | 4.31 | 0.06% |
| ダウ工業株30種平均 | 48254.82 | 326.86 | 0.68% |
| ナスダック総合指数 | 23406.46 | -61.84 | -0.26% |
ジョンソン下院議長は、上院を通過しトランプ大統領も支持するつなぎ予算案が迅速に可決されるだろうと述べた。しかし下院民主党の指導部は反対票を投じるよう議員らに促しており、激しく抵抗している。

プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は政府閉鎖によって重要な経済データの発表が遅れていることについて、真の問題は経済成長に短期的なブレーキがかかることではなく、投資家と連邦準備制度理事会(FRB)にとって景気の見通しがますます効かなくなっていることだと述べた。
「データ発表が再開されれば、12月利下げ説が再び浮上し、リスクオンの環境が補強される」とシャー氏は指摘。「そうした環境では米国株、特に大型ハイテク銘柄と景気循環銘柄が金融緩和姿勢の恩恵を享受するだろう」と述べた。
ハイテク7強で構成するブルームバーグ・マグニフィセント・セブン指数は約1.2%下げた。

政府機関が近く再開する見通しは、景気減速への不安を鎮める方向に作用する。マッコーリー・グループのティエリー・ウィズマン氏によれば、人工知能(AI)インフラの投資見通しに関するハイテク産業のリポートも、順調な経済成長見通しを後押ししている。
ヤルデニ・リサーチによれば、S&P500種は好調な収益見通しに支えられ、年内に7000の大台に達する可能性がある。
同指数の予想株価収益率(PER)は年初の時点で22.4だったが、その後はわずか2.7%上昇の23.0にとどまっていると、ヤルデニ・リサーチは11日付のリポートで指摘。23.6への上昇は7000の大台を意味するという。同時にこの時点で年初来16%の上昇率は、過去10年の平均である10%を上回っているという。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「米株式相場にはまだ上昇余地があり、S&P500種は来年6月までに7300を付けるとみている」と話した。「投資比率が低い投資家はAIや電力・資源、長寿関連といった革新的なイノベーション分野など、当社が推奨する領域へのエクスポージャーを拡大すべきだ」と述べた。

個別企業のニュースでは、人工知能(AI)スタートアップのアンソロピックが、テキサス州やニューヨーク州など米国内の複数拠点でAI向けデータセンターを建設するため、500億ドル(約7兆7400億円)を投じる計画を明らかにした。
アルファベット傘下のグーグルは、検索結果でニュース媒体を表示する順番を巡り、欧州連合(EU)の新たな調査に直面している。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、匿名の関係者の話として報じた。
ロシアのプーチン大統領はシティグループに国内の銀行事業を売却することを認める大統領令に署名した。
トヨタ自動車は今後5年間に米国で最大100億ドル(約1兆5500億円)の投資を行うと明らかにした。トランプ大統領が言及していた同社の投資計画が確認された格好だ。
米国債
米国債相場は軒並み上昇。FOMCが雇用市場てこ入れのために、12月会合で金利を引き下げるとの見方が市場で広がった。ホワイトハウスのレビット報道官は政府機関の閉鎖で10月分の雇用統計と消費者物価指数(CPI)は発表されない可能性が高いと述べた。この発言後も10年債は堅調を維持した。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.66% | -4.7 | -0.99% |
| 米10年債利回り | 4.06% | -5.2 | -1.28% |
| 米2年債利回り | 3.56% | -2.7 | -0.75% |
| 米東部時間 | 16時32分 |
アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は10年債利回りが10月中旬に一時下回った4%を再び割り込む可能性があるとみている。
米国債市場について同氏は、「より正常な金利環境へと戻りつつある」と指摘。「インフレも雇用も足踏み状態だ。自分が政策当局者なら、慎重な姿勢を保ちながらも利下げ方向に傾くだろう」と語った。
同氏は10年債利回りが再び4%を割り込む可能性を排除しないと述べた。同利回りは10月中旬に一度、この水準を割り込んでいる。
JPモルガン・チェースがこの日発表した米国債顧客調査によれば、投資家が持つネットロングのポジションは4月第1週以来の高水準に急増。強気シナリオが展開していることがうかがえる。

原油
原油先物相場は急反落。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は7月以来の大幅安となった。石油輸出国機構(OPEC)が7-9月(第3四半期)の世界原油市場について、従来の供給不足から供給過剰に見方を転換したことが売りを誘った。
関連記事:OPEC、7-9月の世界原油市場は供給過剰-米の生産増で需要を上回る

WTI先物は期近と期先の差(タイムスプレッド)が一時、2月以来の「コンタンゴ(順ざや)」状態になった。供給過剰懸念が広がるなか、市場の弱さを示す新たな兆しと受け止められている。
相場の動きに連動して売買するトレンドフォロー型のファンドも持ち高を手じまいしており、市場ではロングポジションの巻き戻しが強まっている。
TDセキュリティーズのコモディティーストラテジスト、ダン・ガリ氏は「WTI先物12月限が1バレル=58.50ドルを持続的に下回れば、売りが一段と強まる恐れがある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比2.55ドル(4.2%)安の1バレル=58.49ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は2.45ドル(3.8%)下げて62.71ドル。
金
金相場は大幅上昇。スポット価格は1オンス=4200ドル台を回復した。過去最長となった米政府閉鎖の解除が見込まれるなか、市場では米政策金利の先行きが意識された。
この日は米10年債利回りが一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り下がるなど、国債利回りが低下。利息を生まない金にとって、金利の低下は投資妙味を高める材料となる。
関連記事:米政府再開を待つ国債トレーダー、10年債利回り4%割れへの賭け膨らむ
米政府が再開すれば、滞っていた経済指標の発表が再開される見通しだ。直近の民間雇用統計では労働市場の弱さが示されており、追加利下げ観測は一段と強まっている。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時35分現在、前日比81.99ドル(2%)高の1オンス=4208.84ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、97.30ドル(2.4%)高の4213.60ドルで引けた。
原題:Dollar Steady as Shutdown End Nears; Yen Falls: Inside G-10(抜粋)
原題:Dow Average Hits All-Time Highs Before House Vote: Markets Wrap(抜粋)
原題:Traders Ramp Up Bets on US Data Dump Sparking Treasuries Rally(抜粋)
原題:Oil Posts Biggest Drop Since June Amid Supply Glut Concerns(抜粋)
原題:Gold Gains as Markets Weigh an End to Shutdown, Fed Rate Path(抜粋)
