▽イランの濃縮ウラン巡る査察、大幅遅れ IAEAが加盟国向け報告書<ロイター日本語版>2025年11月13日午前 4:33 GMT+9

[ウィーン 12日 ロイター] – 国際原子力機関(IAEA)は12日、イランが今年6月にイスラエルと米国から空爆された核施設への査察を受け入れず、濃縮ウラン貯蔵を巡る検証が「大幅に遅れている」とする報告書をまとめた。ロイターが非公開の加盟国向けの報告書を入手した。
IAEAはガイドラインで、高濃縮ウランの貯蔵に関し、毎月検証することを定めている。IAEAは数カ月にわたり、イランに在庫状況の説明や全面的な査察再開を求めてきた。IAEAとイランは9月に全面的な査察再開へ向け基本合意したものの、イランはその後、合意の破棄を表明した。IAEAは、空爆の「影響を受けなかった」とされる13の核施設の一部だけを査察した一方、被害を受けた7施設はいずれも査察ができていない。
IAEAは今回の報告で、イランの核施設に5カ月間立ち入れず、高濃縮ウランの状況を完全に把握するのは難しく「申告済みの核物質の転用に関する懸念を和らげるには、備蓄状況をできるだけ早期に検証することが極めて重要だ」と指摘。イランが保有する高濃縮ウランの量が「深刻な懸念だ」とも強調した。
IAEAの分析によると、イランは空爆前、濃縮度が最大60%の高濃縮ウランを440.9キロ保有。濃縮度を高めれば10発の核爆弾を製造できる量に相当するという。
▽トランプ氏、ネタニヤフ氏への恩赦要請 イスラエル大統領に<ロイター日本語版>2025年11月13日午前 1:30 GMT+9

[12日 ロイター] – イスラエル大統領府は12日、ネタニヤフ首相に恩赦を与えることを検討するよう求めるトランプ米大統領からの書簡を受け取ったと発表した。書簡は、イスラエルのヘルツォグ大統領宛て。イスラエルの大統領は、特別な状況下で有罪判決を受けた人に恩赦を与える権限を持つ。
ネタニヤフ氏は実業家から約70万シェケル(約21万ドル)の金品を不正に受け取ったなどとされる汚職疑惑により、起訴されている。トランプ氏は今年10月にイスラエルを訪問した際にもイスラエル国会で演説し、ネタニヤフ氏への恩赦を呼びかけていた。
トランプ氏は書簡で「イスラエルの司法制度の独立性を尊重するが、イスラエルにとって非常に手強い敵であるイランなどに対して共に長く戦ってきた首相に対する措置は政治的で、不当な起訴と考える」と記した。
イスラエル大統領府は、大統領による恩赦を求めるには、手続きに沿って正式に申請する必要があると述べた。
ネタニヤフ氏の裁判は2020年に開始。ネタニヤフ氏は全ての容疑を否認し、無罪を主張している。
▽アングル:ガザ「分断」長期化の恐れ、課題山積で和平計画と復興進まず<ロイター日本語版>2025年11月12日午後 6:11 GMT+9

[マナマ 11日 ロイター] – パレスチナ自治区ガザは、イスラエルとイスラム組織ハマスがそれぞれ実効支配する地域に分けられた状況が固定化する様相が強まり、トランプ米大統領が提示した和平計画は「第2段階」へ進むのが難しくなっている。
第2段階移行の取り組みに詳しい6人の欧州当局者はロイターに、計画は事実上、停止状態で、復興活動はイスラエル支配地域に限られる公算が大きいように見えると明かした。
6人の当局者は、このような分断が何年も続く恐れがあると警告した。
10月10日に発効した和平計画の「第1段階」において、イスラエル軍のガザ支配地域は全体の53%。農地の大半や南部ラファ、中部ガザ市の一部や他の都市部が含まれている。
一方ガザ市民200万人のほぼ全ては、ハマスが支配する残りの地域にある10カ所の避難キャンプやがれきに埋もれた市街地に押し込められてしまった。
ガザ市北東部はイスラエルとハマスそれぞれの支配地域に分かれており、何カ月もの空爆にさらされた後、イスラエル軍による地上侵攻を経て停戦に至った。今月ロイターがドローンを飛ばして撮影したところ、一面の廃墟に様変わりしていた。
和平計画の第2段階には、イスラエル軍がいわゆるイエローライン(トランプ氏の計画の下で合意された境界線)からさらに撤退することや、暫定的なガザ統治機関の設置、イスラエル軍に代わって治安を担う国際安定化部隊の展開、ハマスの武装解除、復興作業開始が盛り込まれている。
しかし実行時期や具体的な実行メカニズムは示されていない。一方、ハマスは武装解除に応じず、イスラエルは西側が支持するパレスチナ自治政府がガザ統治に関与することを拒否し、国際安定化部隊を巡る不透明感も残るなど課題は多い。
ヨルダンのサファディ外相は、今月バーレーンのマナマで開催された安全保障会議で「われわれは引き続きアイデアを取りまとめているところだ。この争いを誰もが止めたいと思っているが、問題はその方法にある」と語った。
先の6人の欧州当局者を含めた18人の関係者は、現在の行き詰まりを打開するために米国が大きな力を発揮してくれない限り、イエローラインがガザを恒久的に分断してしまう状況に見えると口をそろえる。
米政府は既に、多国籍部隊と暫定統治機関に2年の権限を負託する国連安全保障理事会の決議案を策定した。ただ10人の外交筋の話では、各国政府の間には多国籍部隊への参加に尻込みする空気が残ったままだ。
特に欧州やアラブの諸国は、多国籍部隊が平和維持活動の枠を超えてハマスや他のパレスチナ集団と直接対立する責任を委ねられた場合、参加しそうにないという。
彼らは国際安定化部隊とパレスチナ自治政府がハマスから統治権限を引き継ぐ展開を望んでいる。
復興作業については先月、バンス米副大統領とトランプ氏の娘婿のクシュナー氏が、第2段階に移行しなくても、イスラエル支配地域には迅速に資金が投じられる可能性があるとの見方を示した。
米シンクタンク、国際危機グループの米国プログラムディレクター、マイケル・ワヒド・ハンナ氏は、そのような米国の考えは、ガザ分断の現実をより長期にわたって固定するリスクがあると懸念する。
<それぞれの現状>
実際イスラエル軍は撤退ラインを示すために大きな黄色いセメントのブロックを設置し、自らの支配地域ではインフラ整備を進めている。ガザ市のシェジャイヤ地区では先週、軍が停戦後に要塞化した前哨拠点に記者を案内した。
衛星画像を見ると、土や建物のがれきがブルドーザーで盛り土にされ、兵士のための防御措置が施された見張り台となり、新しく道路が舗装されていることが分かる。
イスラエル軍の報道官は、兵士らは自軍支配地域に武装勢力が侵入するのを防ぐため駐留しており、ハマスが武装解除などの条件を満たして国際安定化部隊が配置されれば、イエローラインから一段と後退すると明言した。
これに対して近くのパレスチナ人居住区では、ハマスが最近数週間で再び影響力を強め、対立勢力を殺害している。映像では、治安維持のための警察を配置し、食料品の屋台を見張る文民職員を置き、壊れた街並みに傷んだショベルカーで通路を切り開く様子が確認できる。
ハマス報道官は、パレスチナ人の行政組織に権限を委譲し、復興作業を始められるようにする用意はあると説明した上で「ガザの全ての地域が平等に復興されるべきだ」とくぎを刺した。
<遠のく国家樹立>
それでも6人の欧州当局者は、イスラエルかハマスが大きく方針を改めるか、米国がイスラエルに圧力をかけて、パレスチナ自治政府の関与と国家樹立への道筋を受け入れさせない限り、和平計画は第2段階に進まないとみている。
クーパー英外相は「ガザを平和と戦争のどちらでもない中途半端な状態にとどめてはならない」と訴えた。
ガザ市民からは分断の固定化に不安の声も聞かれる。ある62歳の男性は「われわれは(開発が進んでいる方の)地域に移動できるのか。それともイスラエルはわれわれの一部が入るのを拒否するのだろうか。彼らは家族を良い人々と悪い人々に分けてしまうのか」と疑問を投げかけた。
事実上のガザ分断は、パレスチナ人の悲願であるヨルダン川西岸とガザを合わせた正式な国家樹立を一層遠のかせてしまう。適切な住居がなくほぼ全ての生活を援助に依存する人々の人道危機を悪化させる。
ヨルダンのサファディ外相は「ガザを分断してはならない。ガザは1つ、ガザは(イスラエルに占領された)パレスチナの領土の一部だ」と強調した。
パレスチナ自治政府のシャヒーン外務・移民庁長官も、ガザの分断を拒否するとともに、自治政府が「全面的な国家的責任」を引き受けると言い切った。
シャヒーン氏は「ガザに対するパレスチナの完全な主権なしには、真の復興ないし持続的な安定はあり得ない」としている。
