コメ価格が急騰する中で今朝の読売新聞で面白い記事を見つけた。コメ農家の間で広がっている「再生二期作」という手法だ。1回田植えをするだけで収穫は2回できるという。石破政権から高市政権に代わって、農林水産省のコメ作りの方針は「生産拡大」から「需要に応じた生産」逆戻りした。まさに猫の目農政。国の生産方針がくるくると変わる。そんな農政を無視するかのように、「再生二期作」という新しいコメ作りの手法が農家の間で拡大しているという。猫の目農政にめげないコメ農家の自主的、独創的な防衛策だ。同紙によると「地球温暖化を逆手に取り、稲の生育可能な期間が長くなったことを生かした農法で、今年は少なくとも約20県の農家らが導入し、栽培面積も昨年と比べ2倍以上になる見通しだ。一期作の場合の収量から倍増できたとの研究結果もあり、食料安全保障の観点からも注目が集まっている」という。
再生二期作とは、一期目の収穫を刈り取った後の切り株から生えてきた「ひこばえ」が成長したもので、これを刈り取って二期目の収穫を行う稲作のことをさしている。福岡県大川市で9アールの稲作を営む田中和典さん(61)、今年初めて再生二期作に挑戦した。収穫量は「一期作目の玄米360キロ・グラムの2割程度だった」という。「思ったより少ないが、初めてなので仕方ない。1粒ごとの実の出来は良い」と手応えを感じているようだ。農水省の発表によると14日現在の全国スーパーで販売されたコメ価格は、5キロ当たりの平均価格(税込み)が前週から81円値上がりし、4316円になった。田中さんの二期目の収穫量は約72キロ。単純計算すれば6万2000円強になる。9アールを営む専業農家としてこの金額が、満足できるものかどうかよくわからない。だが、一期作で終了する同規模の専業農家と比べれば、6万円の増収になることは間違いない。
とはいえ、課題も多いようだ。再生二期作は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、拠点を置く福岡県筑後市で確立した農法。同機構の主任研究員である中野洋氏(51)によると、①生育期間が長くなることに伴う農業用水の確保②田植えの時期や刈り取る高さによって二期作目の収量が減る③二期作目の稲の背丈は通常より低いため使えるコンバインが限られる―点などの課題も多い。とはいえ1回田植えをすれば2回収穫できる利点は大きい。実践しながら研究を進めれば二期目の収穫僧も期待できるだろう。猫の目行政を尻目に、温暖化という気象変化を逆手に取った稲作の新しい生産方式。農研機構と農家の知恵が噛み合えば、行政の人為的な需給調整よりも高度な、需要と供給の管理が実現するかもしれない。コメ作り農家のチャレンジ精神に期待したい。
