▽【米国市況】円売り加速、対ドル再び155円台-リスク回避で株は続落

Rita Nazareth

  • 円は対ユーロでは過去最安値-高市首相と植田日銀総裁は18日会談
  • 株続落-今週は19日のエヌビディア決算、20日の米雇用統計に注目

17日のニューヨーク外国為替市場では円売りが加速し、対ドルでは一時155円30銭と2月以来の安値を更新した。対ユーロでは一時180円台に下落し、過去最安値に沈んだ。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1219.953.670.30%
ドル/円¥155.24¥0.690.45%
ユーロ/ドル$1.1589-$0.0032-0.28%
  米東部時間16時25分

  日本経済が7-9月期に6四半期ぶりのマイナス成長となったことを受け、市場では政府が大型の補正予算を組むとの見方が出ており、財政悪化を懸念した円売りが優勢だ。

  首相官邸は、高市早苗首相が日銀の植田和男総裁と日本時間18日午後3時半から会談すると明らかにした。高市氏が日銀利上げに対する慎重な姿勢を緩める用意があるのかどうかが注目される。

関連記事:高市首相、植田日銀総裁と会談へ-18日午後3時半に

  日銀は次回の金融政策判断を12月19日に発表する。ブルームバーグが10月に調査したエコノミストの半数は同会合での金利変更を見込んでおり、1月も含めるとほぼ全員が変更があると予測した。

ドル・円相場の推移

  ドルはほぼ全面高。米政府閉鎖の影響で延期されていた経済指標の公表が今週から再開される。市場では、20日に公表される9月の雇用統計への関心が特に高い。

  ゴールドマン・サックスのストラテジスト、カレン・ライヒゴット・フィッシュマン氏とスチュアート・ジェンキンス氏は雇用統計について「このところは下振れサプライズに対して非対称的な反応が見られてきた」と指摘。その上で「ドルのポジションは依然としてわずかにネットロングの状態にあるため、予想を下回る結果には脆弱な状態にある」と述べた。

株式

  S&P500種株価指数は3営業日続落。半導体大手エヌビディアの決算発表と米雇用統計公表を控え、リスク資産を回避する動きに押された。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6651.33-82.78-1.23%
ダウ工業株30種平均46504.42-643.06-1.36%
ナスダック総合指数22614.81-285.78-1.25%

  S&P500種は1%近く下げ、さらなる下落局面への入り口として意識されるテクニカル水準を割り込んだ。同指数が50日移動平均線を上回って推移した連続日数は138営業日で途切れた。 

S&P500種が50日移動平均線を割り込む

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「通常であれば今週の焦点は雇用統計だが、ここ数週間に人工知能(AI)関連株が軟調に推移していることを踏まえると、エヌビディアの決算が再び市場の勢いを左右する重要な要因となりそうだ」と述べた。

US Stocks Slide As Government Reopens With Data Still Delayed
市場はエヌビディア決算と雇用統計に身構えSource: Bloomberg

  エヌビディアが19日の引け後に発表する決算は堅調な業績が見込まれる一方で、AI関連銘柄の過熱感に対する投資家の不安を映す試金石となりそうだ。   

  その翌日20日には、政府閉鎖の影響で延期されていた9月の雇用統計が公表される。米連邦準備理事会(FRB)のジェファーソン副議長は「ここ数カ月で経済のリスクバランスが変化した」と述べ、雇用情勢に下振れリスクが高まっているとの見方を示した。ただ、金利は中立水準に近づきつつあるとし、金融当局として慎重な対応が求められるとの従来の見解を改めて強調した。 

関連記事:ジェファーソンFRB副議長、雇用の下振れを懸念-リスクバランス変化

  モンティス・ファイナンシャルのデニス・フォルマー氏は「エヌビディアの決算と9月雇用統計で市場の方向感が明らかになるだろう。ただ、これらのイベントが相場のボラティリティーを一段と高める可能性もある」と語った。

  S&P500種が4月の安値を起点に上昇基調を続けたなか、株式バブルやバリュエーション過熱への懸念が強まっている。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「長期的な上昇基調は維持されているものの、6カ月にわたる上げ相場を経て、すでに調整・値固めの局面に入っている」と分析。テクニカル面でも相場上昇の裾野が狭まっていることが示されているとし、「ローテーションの動きがテクノロジー株以外にも及んでいる」との見方を示した。 

  インベスコのストラテジスト、ブライアン・レビット氏とベンジャミン・ジョーンズ氏は、投資家が相場下落への備えを強めつつあると指摘。その上で「調整は大型グロース株に集中しており、相場をけん引してきた銘柄が中心だ」とし、今回の下げ局面は株式バブルの崩壊ではなく、大幅な上昇後の健全な調整局面と位置づけていると語った。

  モルガン・スタンレーのチーフストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、堅調な企業利益を背景に、S&P500種が来年にかけて16%上昇すると予測した。同氏によれば、S&P500種は2026年末までに7800ポイント前後で取引されると見込む。これはブルームバーグが調査するストラテジストの中でも最も強気な見通しの一つで、同指数が4年連続で2桁上昇を記録することを意味する。

関連記事:S&P500種は来年にかけて16%上昇、モルガンSのウィルソン氏が強気予想

国債

  米国債相場は大半の年限で上昇(利回りは低下)。米経済統計の発表が再開されれば、12月追加利下げ観測が再び強まるとの見方が背景にある。10年債利回りは一時3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。過去2営業日では計8bp近く上昇していた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.73%-2.0-0.42%
米10年債利回り4.13%-1.8-0.42%
米2年債利回り3.60%-0.2-0.05%
  米東部時間16時25分

  モルガン・スタンレーの金利ストラテジストは、2026年半ばに10年債利回りが3.75%まで低下するとの基本シナリオを示したうえで、最も強気の見通しでは2.40%まで下がる可能性があると述べた。

  公表が再開される米経済指標について、バンガードのブライアン・クイグリー氏は「今後数カ月間、データの一貫性や正確性に疑問が生じるだろう」と指摘。「市場はデータに基づく明確な方向感を求めているが、それが得られない可能性がある」と述べた。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は10月FOMC会合後の記者会見で、12月会合での追加利下げは既定路線ではないと述べていた。FRB当局者からの最近のタカ派的な発言を受け、フェデラルファンド(FF)金利先物市場で投資家が織り込む12月利下げの確率は約40%へと低下している。10月会合直前はほぼ100%だった。

  FRBのウォラー理事は、労働市場の弱さと金融引き締めが低・中所得層の消費者に打撃を与えているとして、12月FOMCでは追加利下げを実施すべきだとの見解を改めて示した。

関連記事:FOMCは12月に追加利下げを、ウォラーFRB理事が労働市場の弱さ指摘

原油

  ニューヨーク原油先物相場は小幅安。ロシア主要港での操業再開の兆しが下押し要因となった一方、広範な地政学リスクが価格を下支えした。

  ウェストテキサスインターミディエート(WTI)は14日、ロシアの主要港ノボロシースクに対するウクライナの攻撃を手掛かりに2%余り上昇していた。16日にはノボロシースク港で2隻のタンカーが接岸しており、ターミナルでの操業再開を示す動きが確認された。また17日はドルが上昇し、同通貨建てで取引される商品の妙味が低下した。

  ノボロシースクへの攻撃とイランによるホルムズ海峡付近でのタンカー拿捕(だほ)は、世界的な供給過剰懸念が強まる中で、原油市場に新たな地政学的プレミアムをもたらした。

  市場では産油国ベネズエラを巡るトランプ政権の対応にも注目が集まっている。トランプ大統領は17日、ベネズエラへの派兵の可能性を排除しないとしたほか、マドゥロ大統領との対話にも意欲を示した。また、スーダンではエネルギー関連施設が相次ぎ攻撃を受け、同国の輸出が混乱している。スーダンは、南スーダン産原油の主要輸送経路となっている。

  こうしたリスクは、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラス、およびそれ以外の産油国による増産の動きを相殺している。増産を受け、市場では今後数カ月に顕著な供給過剰が生じるとの見方が広がっている。

  USBのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏はリポートで「ブレント原油は引き続き1バレル=60-70ドルのレンジで推移しており、市場の焦点は今後数カ月でロシアの原油輸出がどう展開するかに移っている」と指摘。「市場は、ロシアが原油輸出に苦戦するとの見方には懐疑的のようだ」と記した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前営業日比18セント(0.3%)安の1バレル=59.91ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.3%下げて64.20ドル。

  金相場は3営業日続落。経済指標の発表が遅れ、景気動向の不透明な状況が続く中、米利下げ期待が後退している。

  米金融当局者の間で、インフレ抑制の進展が鈍化または停滞する可能性を警告する声が強まっている。12月9、10両日に予定される次回FOMC会合での追加利下げの見通しに疑問を投げかけており、中央銀行内の意見の対立が鮮明になっている。利息を生まない金にとって、金利の低下は投資妙味を高める材料となる。

  金利スワップ市場では、12月の利下げ確率は50%未満に低下している。1カ月足らず前には0.25ポイントの利下げをほぼ完全に織り込んでいた。

  バンテージ・マーケッツのストラテジスト、ヘベ・チェン氏は「政府閉鎖は終わったのものの、その間に生じたデータのもやは依然として市場を覆っている。今後数週間に発表される統計については、われわれはほとんど手掛かりがない」と指摘。「FRBの利下げの道筋は依然不透明だ」と述べた。

  スポット価格はニューヨーク時間午後3時39分現在、56.39ドル(1.4%)安の1オンス=4027.67ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、19.70ドル(0.5%)下落の4074.50ドルで引けた。

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