高市政権が2つの抵抗勢力によって危機を迎えている。逆転勝利で掴んだ総理就任直後の熱気はいっぺんに凍りつき、今や政権存続に向けた指導力、つまり政治的腕力が問われる事態になりつつある。二つの危機はいうまでもない。一つは存立危機事態に関連した中国の執拗な反発であり、もう一つは「責任ある積極財政」を阻もうとする旧来の既得権益勢力の抵抗だ。もっと具体的に指摘すれば財務省のトップに君臨する高級官僚たちだ。この2つの勢力が目指すのは既得権益の擁護。高市総理は中国が武力によって台湾に侵攻しようとした事態を例にとり仮定の議論、言い換えれば机上演習のシミュレーションで存立危機事態に「該当し得る」「該当する可能性がある」と国会で答弁した。存立危機事態とは何か?これまでの政府答弁はあいまいで、日本外交の真髄を世界に問うことはできなかった。これに対して総理は今回一歩踏み込んだことは間違いない。

だが存立危機事態を定義するのは日本だ。何がこれに該当するのか議論は必要であり、日本の外交戦略を明確にする手段でもある。平和国家日本は紛争は武力によらず対話によって解決すべきだ。これが終始一貫した主張だ。これまでは控えめだったが、高市総理は国会という公の場で口にした。ロシアのウクライナ侵略にも同じ論理を展開している。中国は台湾問題は内政問題だという。存立危機事態の定義も日本の内政問題なのだ。内政問題に口を出すな。高市総理はそういえばいい。だが中国はこの問題に執拗に絡んできた。習近平国家主席は側近が解任された軍事委員会をはじめ、国内的には国家主席としての資質が問われている。言ってみれば習主席自身が存立危機事態に直面している。こうした事態を回避するために中国がよく使う手が外交への転嫁だ。存立危機の習主席が、高市総理に危機を転嫁しようとしている。中国の常套手段、怯むべきではない。

もう一つの危機は「責任ある積極財政」だ。物価高対策をはじめ補正予算の編成が急ピッチで進められている。YouTuberでありジャーナリストの須田慎一郎氏によると、財務省は要求サイドの各省庁に「個別の予算要求はするな」と指示を出しているそうだ。真偽のほどは確認のしようがない。だが、いかにもありそうは話だ。財務省がよくやるのは高市総理や片山財務大臣にはいい顔をし、水面下で真逆のことを平気ですることだ。要するに面従腹背なのだ。各省の予算担当は長年の付き合いのある財務省の要求を無碍には断れない。断れば来年度の本予算や予算関連要求に支障が出る。だから控えざるを得なくなる。政権が変わってもDSの影響力がすぐに削がれるわけではない。積極財政を快く思わない自民党の国会議員は五万といる。国民の支持率は80%に達していると言っても、高市政権の実態は内と外を強固な抵抗勢力に取り囲まれていることだ。妥協すれば石破総理の二の舞になる。岸田総理も減税を示唆した途端に財務省に切られた。高市総理はこの危機を乗り越えられるか・・・。