Olga Kharif
- 10月に付けた最高値12.6万ドルから急落、年初来の上昇を帳消し
- オプション市場でプット取引活発化、8万ドルへの下落に備え
暗号資産(仮想通貨)ビットコインが10月に付けた12万6000ドルの最高値から急落し、2025年の上昇分を全て失った。ウォール街からの支援や政治的な追い風を得ながらも、相場は急速に後退している。
ブルームバーグの集計データによれば、ビットコインの時価総額は、10月のピークから約6000億ドル(約93兆円)減少した。明確な引き金は見当たらず、市場では動揺が広がっている。ビットコイン価格は米東部時間17日午後1時21分(日本時間18日午前3時21分)時点で1%安の9万2513ドル。
ウォール街が市場に参入し、上場投資信託(ETF)が暗号資産を一般投資家のポートフォリオに組み込むなど、ビットコインの「正統性」が確立されるはずの年だった。トランプ政権も仮想通貨に全面的な支持を示していた。
しかし相場は明確な理由のないまま急激に下落。仮想通貨市場では値動きの荒さは想定の範囲だが、今回は確信の薄れ方の速さと、説明のつかない下落が際立っている。
トレーディングデスクやSNS上では不安が広がり、トレーダーらは過去のチャートを見直し、なじみ深い理論を掘り返し、買い手を探している。ビットコインの動きに確立された相関関係やリスク管理の枠組みはないため、最もよく知るモデルである4年ごとの半減期サイクルを指摘する声も一部で聞かれる。
半減期とは、約4年ごとに供給量の伸びが半減するイベントを指し、過去には投機的な高騰とその後の痛みを伴う大幅下落を繰り返してきた。今回の半減期は2024年4月に発生し、価格は今年10月にピークを迎えた。過去のパターンに沿う展開だが、資金力ある買い手が市場を形成する今、このシナリオが依然通用するかは不透明だ。
ビットワイズ・アセット・マネジメントの最高投資責任者マシュー・ホーガン氏は「個人投資家のセンチメントは極めて悪い」と語る。「4年周期の再来を恐れ、50%の下落を経験したくない投資家が先回りして市場から退いている」と分析した。

売り圧力
オプション市場では売り圧力の強まりを見越した弱気ポジションの構築が加速している。資金力のある買い手が撤退する中で下落局面がまだ終わっていないとの見方が強まっている。
市場心理の変化は急激かつ明確だ。ビットコインの9万ドル、8万5000ドル、8万ドルといった水準への下落リスクに備える需要が急増している。コインベース傘下の暗号資産オプション取引所デリビットのデータによると、今月中に期日を迎えるプットオプションの取引が特に活発になっている。
またトレーダーらは11月下旬を期日とするプットオプションを総額7億4000万ドル以上購入しており、強気ポジションへの関心を大きく上回っているという。
分散型金融(DeFi)取引会社エルゴニアの調査ディレクター、クリス・ニューハウス氏は「過去6カ月間にポジションを積み上げてきた買い手が大きく含み損を抱える中、現物市場での確信を持った買い需要の欠如が一段と明確になっている」と述べた。

原題:Bitcoin Humbles Wall Street Faithful After $600 Billion Plunge 、Fear Engulfs Bitcoin Traders Betting on Free Fall to $80,000(抜粋)
