岡部雄二郎、吉永亜希子
18日に北京で行われた日中外交当局の局長協議では、高市首相の台湾を巡る国会答弁を中国側が改めて強く非難した。台湾問題で優位に立つことを狙った「宣伝戦」の側面があり、日本政府は事態の長期化も覚悟しつつ、冷静な対処に努める考えだ。(政治部 岡部雄二郎、北京 吉永亜希子)
協議後に会話を交わす金井正彰外務省アジア大洋州局長(手前左)と劉勁松中国外務省アジア局長(同右)(18日、北京の中国外務省で)=中国中央テレビの映像から
中国中央テレビは18日夕、中国外務省庁舎での協議を終えて玄関に現れた 劉勁松( アジア局長と日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長の姿を流した。険しい表情の劉氏がポケットに手を入れたまま金井氏に話しかける様子から、日本側を呼びつけて抗議したことを演出する意図がうかがえる。
首相は一連の答弁後、撤回はしないとする一方、具体論に踏み込みすぎた「反省」に言及し、火消しを図った。木原官房長官も記者会見で、1972年の日中共同声明を念頭に「台湾に関する立場に変更はない」とし、平和的解決を支持すると繰り返し表明している。
それでも中国は矛を収めず、首相答弁を台湾への武力介入の示唆とみなし、撤回しなければ「一切の結果は日本側が負う」( 孫衛東 外務次官)と警告。台湾問題で日本が一方的に緊張を高めたかのようなキャンペーンを展開している。
日本外務省幹部は、2012年の沖縄県・尖閣諸島の国有化以来の激しさだとし、「徹底的に追及すると決めたのだろう」とみる。12年当時、中国は「日本側が責任を負う」とし、尖閣周辺での領海侵入を常態化させた。今回も日本の信用低下や台湾への圧力強化を狙っている可能性がある。
北京の局長協議を巡っては、自民党などから「謝罪に行くのか」との苦言があり、日本政府は定例の相互訪問だと強調した。首相を支持する保守層が 毅然 とした対中外交を求める中、「エスカレートの口実を与えないよう慎重に対応しながら中国の態度を変えるには時間が必要」(政府関係者)な情勢だ。
▽北京の日中局長協議は「定期。前回日本で今回中国」外相 橋下氏「怒られて説明に伺った」<産経ニュース>2025/11/19 09:29

茂木敏充外相は18日の記者会見で、中国・北京で外務省の金井正彰アジア大洋州局長が同日臨んだ中国外務省の劉勁松アジア局長との協議について、台湾有事が「存立危機事態」になり得ると答弁した高市早苗首相の発言を受けて設定した協議の場ではないと説明した。「定期的に相互に実施しており、前回は日本で行い、今回は中国で開催することは決まっていた」と明かした。
茂木氏「訪中は順番から順当」
金井氏の訪中を巡っては、「日本から中国にご説明に伺った時点で、この喧嘩は日本の完敗」「世界各国がこの事態をどう見るか。中国に怒られてご説明に伺った日本と見られることは間違いない」(コメンテーターの橋下徹弁護士)などの反応が出ていた。
茂木氏は、首相が台湾有事について国会答弁した7日時点で「(事務方同士の)日程調整はかなり進んでいた」と述べ、「訪中するのは順番からいって順当だと思う」と語った。
その上で、金井氏に対しては「今回の人的交流を委縮させるような中国側の発表は、建設的で安定的な関係の構築という方向性から相いれない。その方向で対応するように指示した」などと述べた。
19日にも帰国した金井氏から協議の報告を受けるという。
高市首相の国会答弁を受け、中国政府は抗議にとどまらず、中国人に訪日の自粛を促す措置を取っている。


