Rita Nazareth

  • S&P500種は4営業日続落、8月以来の長期下落局面に
  • AI銘柄株価は見直されるべき時期-JPモルガン副会長

18日のS&P500種株価指数は4営業日続落し、8月以来の長期下落局面となった。世界的な大手ハイテク企業が売られ、限られたグロース銘柄への依存度が高い米株式市場の脆さが改めて浮き彫りになった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6617.32-55.09-0.83%
ダウ工業株30種平均46091.74-498.50-1.07%
ナスダック総合指数22432.85-275.22-1.21%

  決算発表を翌日に控える半導体大手エヌビディアは2.8%下落。ウォール街では、人工知能(AI)関連の巨額投資に見合うだけの収益や利益が、いまだ十分に生み出されていないとの懸念が強まっている。

  こうしたなか、マイクロソフトとエヌビディアはAI開発企業アンソロピックに最大150億ドル(約2兆3300億円)を出資する方針を明らかにした。マイクロソフトとエヌビディアは同じくAIを開発するオープンAIにも多額の資金を投じ、支援している。

関連記事:マイクロソフトとエヌビディア、最大150億ドルをアンソロピックに投資

  カーソン・グループのソヌ・バーギーズ氏は「問題はいまがバブルかどうかではない」とし、「本当の焦点は、AI関連投資の流れがどれほど長く続くのか、そして終息時にどの程度の反動が生じるのかという点だ」と語った。

  JPモルガン・チェースのダニエル・ピント副会長は、活況に沸くAI関連銘柄のバリュエーションは見直されるべき時期に来ていると指摘。ヨハネスブルクで開かれたブルームバーグ・アフリカ・ビジネスサミットで同氏は「恐らく調整があるだろう。その調整は、それ以外のセクターやS&P、業界全体の調整も生む」と語った

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の月次調査によると、投資家の現金保有比率は節目として意識される水準を下回り、株式市場にいわゆる売りシグナルが点灯した。調査によると、投資家の株式保有割合は2月以来の高水準にある。同行ストラテジストのマイケル・ハートネット氏は「12月の利下げがなければ、市場はさらに調整する。現在のポジションはリスク資産にとって追い風ではなく逆風だ」との見方を示した。

  ストラテガス・セキュリティーズのライアン・グラビンスキー氏によると、エヌビディアのウエートはエネルギー、素材、不動産の3セクターを合わせた規模を上回っており、日によっては公益事業セクターを加えた合計すら超えることもある。

Nvidia Offices in Taipei as Chipmaker’s $589 Billion DeepSeek Rout Is Largest in Market History
エヌビディア株は下落Source: 27125359h

  「それだけに、明日のエヌビディア決算は『重要』の一言では片付けられない」と同氏は指摘。「その結果は米国市場のみならず、世界の株式市場全体に波及しかねない。AI関連への期待感はこのところ後退しているが、今回の決算が再び強気ムードを呼び戻す可能性もある。もっとも、市場の期待値はすでに極めて高く、そのハードルは決して低くない」と述べた。

  メイン・ストリート・リサーチのジェームズ・デマート氏は、エヌビディア株がここ数日間で一定の調整を経たため、市場の期待値はやや下がったとみている。同氏は「エヌビディアは市場予想を上回る決算を発表し、今後の利益や売上高の見通しについても投資家の予想を上回るガイダンスを示すだろう」と指摘。「AIサイクルがまだ初期の段階にあることを踏まえると、競争が激化していても同社製品の需要が鈍化している可能性は低い」と語った。

  投資家はこれまで、下落局面で積極的に買いを入れる姿勢を維持してきた。その背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加利下げで景気を下支えするとの期待があった。20日には、政府閉鎖の影響で1カ月余り遅れていた9月の雇用統計が発表される予定だ。FRBがどの程度のペースで緩和を進めるか占う上で、重要な経済指標の発表が続く。

  いくつかの経済指標はすでに公表され始めている。労働省によると、新規失業保険申請件数は10月18日終了週に23万2000件だった。継続受給者数は195万7000人と、前週の194万7000人から若干増加した。また、ADPが発表した民間雇用者数は、11月1日終了週までの4週間に週当たり平均で2500人減少した。

  11月の住宅建設業者業況感はわずかな改善にとどまった。販売促進の動きは広がっているものの、慎重な購入希望者を引きつけるのが厳しい状況がうかがえる。 

為替

  外国為替市場では、引き続き円の軟調ぶりが目立った。対ドルでは一時155円73銭と、2月以来の安値を付けた。対ユーロでは1ユーロ=180円29銭まで下落。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は来年半ばまでに1ユーロ=185円まで下がると予想している。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1219.38-0.59-0.05%
ドル/円¥155.51¥0.250.16%
ユーロ/ドル$1.1584-$0.0008-0.07%
  米東部時間16時41分

  MUFGのシニア為替ストラテジスト、リー・ハードマン氏は「われわれは対ドルでユーロの強気見通しを維持している」と述べた。米連邦準備制度理事会(FRB)がパウエル議長の後任決定後、一段と金融緩和に積極的になる可能性がドルに下押し圧力をかけるとの見方が背景にある。

  同氏は、円の対ドル相場は現在の155円近辺から来年には「140円台半ば」まで回復する余地があるとみているが、「依然として歴史的に見て非常に弱い水準にとどまる」と予測している。

関連記事:円の対ユーロ相場、最安値更新でもまだ一段安の余地-MUFG

  一方、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査では、世界の投資家は円が来年には主要通貨の中で最も堅調なパフォーマンスを示すと予想していることが分かった。同調査では、約170人のファンドマネジャーのうち約3分の1が、来年は円が最も高いリターンを上げると回答した。

  今年のさえない値動きを踏まえると、今回の調査で円が注目を集めたのは特筆すべきだ。円は対ドルでわずか1%の上昇にとどまり、主要10通貨の中で最も低いパフォーマンスとなっている。

関連記事:円に強気見通し広がる、投資家の2026年トップ通貨に浮上-BofA調査  

  フランクリン・テンプルトン・インスティテュートは、ドル安基調が来年も続くと予想している。米利下げをその主因の一つに挙げるとともに、「米国外の株式や債券市場の投資妙味が高まり、世界的な資金の流れが変化している」と指摘した。

国債

  米国債相場は幅広い年限で上昇(利回りは低下)。株式相場下落や米雇用市場の軟化を示す新たな兆候が意識された。金融政策動向に最も敏感な2年債の利回りは、一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.74%0.40.08%
米10年債利回り4.12%-2.1-0.51%
米2年債利回り3.57%-3.8-1.04%
  米東部時間16時41分

  市場では、来月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で追加利下げが決まるかどうか見方が割れている。金利スワップ市場では、12月の利下げ確率は50%未満に低下している。 

  ジェフリーズのストラテジスト、モヒト・クマール氏は「経済指標の発表が再開するなか、市場には依然として神経質な動きが残っている。FRBがタカ派姿勢に傾くリスクがある」と語った。ただ同氏は、12月会合で金利が据え置かれたとしても、1月には利下げが行われるとみている。

  債券市場のボラティリティーを示すICE BofA MOVE指数は17日に2カ月ぶりの高水準に上昇した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反発し、1バレル=60ドルを上回った。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表兼副委員長がロシアに関して強硬な発言をし、対ロ制裁が強化されるとの見方が強まったことが背景にある。

  カラス氏は18日にブルームバーグのイベントで、EUを標的としたロシアの敵対行為はテロリズムと見なすべきだと述べた。ロシアが主要なプレーヤーであるディーゼル油市場では需給逼迫(ひっぱく)感が強まっており、この発言が材料視された。

  ロシアの石油大手2社との取引を停止するよう米国が定めた期限は、数日後に迫っている。こうした中で、同国の代表的油種であるウラル原油は先週、2年半ぶりの安値に落ち込んだ。ロシアへの制裁が効果を発揮している可能性が示唆され、原油相場の強気ムードが後押しされた。

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  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比83セント(1.4%)高の1バレル=60.74ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は69セント(1.1%)上昇して64.89ドル。

原油相場が上昇 ロシア供給リスク

  金スポット相場は4営業日ぶりに上昇。金融市場全体が神経質な動きとなる中で、逃避先資産として買われた。

  ゴールドマン・サックス・グループの分析によると、中国は9月に準備資産として金を15トン購入した。世界の中央銀行による9月の金購入量は計64トンと、前月の3倍以上に増加したとみられ、こうした買い意欲は11月も続いている可能性があるという。

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  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時31分現在、前日比32.56ドル(0.8%)高の1オンス=4077.52ドル。一方、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、8ドル(0.2%)安の4066.50ドルで引けた。

原題:

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