Rita Nazareth

  • FOMC議事要旨:「多くの」当局者が12月利下げに否定的な姿勢
  • 金利スワップ市場、12月会合での利下げ織り込み幅は6bpに縮小

19日のニューヨーク外国為替市場ではドルが主要10通貨全てに対して上昇。円は対ドルで下げを拡大し、157円台と1月中旬以来の安値を付けた。市場では米利下げ観測が後退。株は反発した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1225.496.060.50%
ドル/円¥157.06¥1.551.00%
ユーロ/ドル$1.1524-$0.0057-0.49%
  米東部時間16時16分

  日本銀行の植田和男総裁と片山さつき財務相、城内実経済財政担当相による3者会談後に強まった円を売る動きが、ニューヨーク時間でも続いた。

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  また、米労働統計局(BLS)が10月分の雇用統計を発表しないと明らかにしたことを受け、市場では12月連邦公開市場委員会(FOMC)会合での政策金利据え置き観測が強まった。米連邦準備制度理事会(FRB)の政策動向に連動するスワップ取引では、12月会合での利下げ織り込みが6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)にとどまっている。来年1月までの合計でも19bpの利下げ幅しか見込まれていない。

  11月分の雇用統計は12月16日に公表される予定で、FRB当局者は年内最後の連邦公開市場委員会(FOMC)会合までに最新の雇用データを入手できないことになる。

  米東部時間午後2時に公表された10月28-29日開催分のFOMC議事要旨によると、多くの当局者が年内は政策金利の据え置きが適切である可能性が高いとの意見を示していた。また、「幾人かの」当局者が10月会合で利下げに反対の立場を示した。同議事要旨発表後、ブルームバーグ・ドル指数は日中高値を更新した。

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  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「12月利下げを正当化するだけのデータが示されていない中、ドルにはなお上方向への偏りが残るとみている」と語った。

ドル・円相場の推移

  市場では、米政府閉鎖の影響で発表が遅れていた9月雇用統計(20日発表)への注目が高まっている。

  この日は、当初10月7日に予定されていた8月の貿易収支が発表された。輸入額は5.1%減少と、4カ月ぶりの大幅な落ち込み。財とサービスを合わせた貿易赤字は596億ドルと、前月から24%近く縮小した。

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  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は「米国の輸入需要の弱さが世界経済の成長を抑制する要因になることが確認された」ことも、ドル押し上げ要因になっていると指摘した。

  パイオニア・インベストメンツのパレシュ・ウパダヤ氏は相場の動きについて、「為替市場のセンチメントに影響を与えているのは、英国と日本の財政をめぐる動向だと考えている」と述べた。

株式

  S&P500種株価指数は5営業日ぶりに上昇した。半導体大手エヌビディアの決算発表を控え、日中は神経質な値動きが続いた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6642.1624.840.38%
ダウ工業株30種平均46138.7747.030.10%
ナスダック総合指数22564.23131.380.59%

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「今後公表される一連の経済指標を投資家がどう消化するかが、本格的な調整となるのか、それとも上昇相場の一時的な停滞にとどまるのかを左右するだろう」と指摘。その上で「過去3年間、強気相場に逆らう戦略や押し目買いの流れに反する動きは成果を上げていない」と述べた。 

  トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「経済データの欠落や関税の影響が不透明なことから、不確実性が高まっている。FRB内では見解の一致が見られず、政策当局者は手探りの状態にあるが、議事要旨全体としてはタカ派寄りの内容だった」と語った。  

  人工知能(AI)関連銘柄の上昇の持続性から米金融政策の道筋など、さまざまな懸念が最近の株式市場の下落につながった。JPモルガン・チェースのグローバルマーケットインテリジェンス責任者のアンドリュー・タイラー氏は、こうした相場の下落を「テクニカル的な調整」だとし、すでにその局面は終わった可能性があるとの見方を示した。

  同氏は顧客向けリポートで「ファンダメンタルズに変化はなく、当社の投資仮説は米国の利下げに依存していない。従って、我々は押し目買いスタンスを取る」と説明した。

  ニュー・コンストラクツのデービッド・トレーナー氏は「11月の相場下落は一服感によるものとみている。市場はより現実的な世界観へと落ち着きつつある」と指摘。「これまで長い間、市場はあらゆるニュースを好材料として受け止めてきたため、年末にかけて株価の不安定な動きが続く可能性がある。上昇相場が一服するのは自然なことだ」と語った。

  ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏は「少なくとも現時点では、AIバブル崩壊への懸念は行き過ぎだと引き続き考えている」とし、「AI関連株については、株価が軟調な局面では引き続き買い姿勢を維持している」と述べた。

  一方、 ゴールドマン・サックス・グループのジョン・ウォルドロン社長は、相場はさらに下落する可能性があるとの見方を示す。シンガポールで開かれたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムの会場で同氏は「テクニカル面では、より防衛的で下方向へのバイアスが強まっていると思う」と語った。

国債

  米国債相場は下落(利回りは上昇)。金融政策の見通しを敏感に反映する2年債利回りは約2bp上昇した。

  投資家は12月会合で0.25ポイント利下げが決まるとの見方を後退させており、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3.75-4%に据え置かれるとの予想が優勢となっている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.75%1.70.36%
米10年債利回り4.13%1.70.43%
米2年債利回り3.59%1.50.41%
  米東部時間16時16分

  10月分雇用統計の発表中止をめぐり、マイケル・ゲーペン氏らモルガン・スタンレーのエコノミストは「これにより、12月の利下げの可能性は後退した」とリポートで指摘。「労働市場の軟化こそが、12月利下げを正当化する主要な根拠だ」と記した。

  雇用統計は家計調査と事業所調査の2種類から構成されており、後者が非農業部門雇用者数の基となる。BLSは11月分について、両調査のデータ収集期間を延長することも明らかにした。

  ロード・アベットのポートフォリオマネジャー、リア・トラウブ氏は「10月の失業率が公表されないことはすでに分かっていたが、11月分のデータが12月FOMC会合後まで発表されないのは、市場にとって失望材料だ」と指摘。「FOMC内で意見が割れる中、この状況では利下げの可能性は一段と低下するだろう」と語った。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は大幅に反落。燃料や精製品の在庫増加が政府統計で示され、供給を巡る懸念が和らいだ。ロシアによるウクライナ侵略を終わらせるための外交努力が停滞していることも意識された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1週間ぶりの大きな下げとなった。

  米エネルギー情報局(EIA)の週間在庫統計によれば、米国におけるガソリンと留出油の在庫は、この1カ月余りで初めて拡大した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比1.30ドル(2.1%)安の1バレル=59.44ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は2.1%下落して63.51ドル。

  金スポット相場は小幅高。ニューヨーク時間の朝方には一時1.6%上昇する場面もあったが、その後に上げ幅を縮小した。ドル指数の上昇が重しとなった。

  このところの米株下落に伴う損失を補うため、一部のトレーダーは金に対するポジションを巻き戻した。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時22分現在、前日比11.48ドル(0.3%)高の1オンス=4078.72ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、16.30ドル(0.4%)高の4082.80ドルで引けた。

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