▽つかの間の「水産物輸出再開」…中国の追加資料要求、日本の海外市場拡大へ痛手<読売新聞オンライン>2025/11/20 07:45
日本産水産物の中国への輸出が再び暗礁に乗り上げた。今月に入って約2年ぶりに輸出再開にこぎつけたのもつかの間、中国政府が安全性を証明する追加資料を要求した。台湾有事に関する高市首相の国会答弁に反発した対応とみられ、輸出拡大を目指す政府にとっては痛手となる。
中国への水産物の輸出を巡っては、東京電力福島第一原子力発電所からの処理水放出を受け、中国政府が2023年から全ての日本産水産物の輸入を禁止した。今年5月に日中両政府が再開に向けた手続きに合意し、中国政府は6月、北海道や青森など37道府県の水産物の輸入を再開すると発表。今月5日には、北海道産の冷凍ホタテ6トンが中国向けに出荷されていた。
農林水産省によると、処理水放出以前に輸出が認められていた日本の水産業者が中国当局に輸出業者として再登録すれば出荷ができるようになるため、業者は再登録の手続きを進めている。697施設が輸出再開に向けて登録申請を行っているが、登録されたのは北海道と青森の計3施設にとどまっている。
日本にとって、中国はかつて水産物の最大の輸出国だった。処理水放出前の22年の日本の水産物の輸出額3873億円のうち、中国向けは871億円で2割を占めていた。ホタテ(489億円)やナマコ(98億円)などが主に輸出されていた。
日本は中国が23年に全ての日本産水産物の輸入を禁止した後、ベトナムやタイといった東南アジアなど輸出先の多角化を進めている。農水省の幹部は「ホタテに関しては、米国や東南アジアへの輸出がうまくいっており、現状では影響はあまりない」と話す。
ただ、農林水産物・食品の輸出額を30年に5兆円に増やす目標を掲げる日本にとって、約14億人の人口を抱える中国市場の魅力は大きい。ある政府関係者は「目標の達成には中国市場の取り込みは不可欠だ」と指摘する。
▽中国メディア「沖縄の日本帰属」を疑問視する論評相次ぐ 高市首相答弁を受け対日カードに<産経ニュース>2025/11/20 07:21

【北京=三塚聖平】中国メディアが相次いで沖縄県の日本への帰属を疑問視する論評を掲載している。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は19日付で、「琉球諸島の主権の帰属は歴史的、法的な議論が常に存在している」とする社説を掲載した。中国側は、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に強く反発しており、沖縄県を対日カードにして日本側を揺さぶる狙いがあるとみられる。
環球時報の社説は「琉球学の研究はなぜ必要なのか」と題し、中国内外で「琉球問題」への関心が高まっていると指摘した。その中で、中国が明の時代に琉球を、宗主国と朝貢国の関係を指す「宗藩関係」に基づき手厚く遇したと主張。それに対し、日本が「武力による脅迫という手段で琉球藩の廃止を強行し、沖縄県を設けて併呑した」と批判した。
中国国営中央テレビは18日にSNSで、沖縄県の歴史に関し「中国の習慣や飲食、芸術、茶文化など各方面のものが琉球に持ち込まれた」とし、「影響はいまなお続いている」と強調した。
中国紙、北京日報系も18日、SNSで「琉球は昔から一度も日本の国土となったことはない」と主張。高市首相の発言を念頭に「他国の内政に手を出す前に、日本はまず琉球問題に回答すべきだ」と一方的に訴えた。中国のニュースサイト「中華網」は19日、沖縄県の帰属を「日本の歴史的な弱点」だとして「日本が台湾問題で火遊びを続けるならば、琉球問題が新たに交渉のテーブルに置かれる」とした。
中国政府は、高市首相の発言を「中国の内政への粗暴な干渉」と問題視している。沖縄県の帰属を問題として取り上げることで、意趣返しにとどまらず日本国内の火種とする思惑がうかがわれる。
中国側はこれまでも沖縄県の日本への帰属を対日カードとする動きを見せてきた。人民日報は2013年に、沖縄の帰属を「歴史上の懸案で、未解決の問題」と疑問視する研究者の論文を掲載。環球時報は、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と主張していた。当時も日中関係は、日本政府が12年に尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化したことを受けて悪化していた。また、23年には習近平国家主席が、中国と琉球の交流の深さに言及したことを中国メディアが報じて波紋を呼んでいた。

