▽ウ大統領、和平案巡り「困難な選択」 トランプ氏27日までの合意要求<ロイター日本語版>2025年11月22日午前 6:11 GMT+9

Yuliia DysaMichel RoseInti LandauroAnastasiia MalenkoLili Bayer

米国の和平案でウクライナに圧力、欧州は独自の対案検討の可能性

[キーウ/パリ/ローマ/ブリュッセル/ワシントン 21日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、米国が提示したロシアとの和平案の受け入れを巡り、ウクライナが尊厳や自由、もしくは米国の支持を失うリスクがあるとし、「厳しい選択を迫られている」という認識を示した。

トランプ米大統領は、ウクライナが和平案を受け入れる期限は来週27日が適切と表明。複数の関係筋によると、米国はウクライナに合意するよう圧力をかけるため、ウクライナへの情報共有や武器供給を削減する方針を示しているという。

トランプ大統領はまた、マムダニ次期ニューヨーク市長との会談の冒頭で記者団に対し、ロシアの侵攻を阻止するため、「ゼレンスキー大統領は米国が提案する和平案を承認する必要がある」と述べ、受け入れに向けて改めて圧力をかけた。

さらに、戦争がより早く解決すると予想していたという見方を改めて示した。

米国が提示した28項目の和平案には、ウクライナの領土割譲や軍縮のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟の禁止など戦争終結に向けたロシアの主要な要求の一部が盛り込まれている。同時に、ロシアが制圧した地域からの軍撤退など、ロシア側が反対する可能性のある内容も含まれる。

ロシアのプーチン大統領は、米国が提示した和平案を受け取ったと明らかにし、ウクライナとの紛争の平和的解決の基盤になり得るとの認識を示した。

また、「米政権はこれまでウクライナ側の同意を得られていない。ウクライナは反対している」とも述べた。

<ウクライナの尊厳と自由>

ゼレンスキー大統領は国民に向けた演説で、和平案を巡り米国と協力して取り組んでいく姿勢を示しつつも、「ウクライナの利益を裏切ることはない」と強調。向こう1週間で政治圧力が強まると予想される中、ロシアが和平プロセスの妨害を試みる恐れがあるとして、国民に結束を呼びかけた。

その上で「尊厳を失うか、主要なパートナーを失うリスクを負うか、極めて困難な選択を迫られている」と強調。「ウクライナは今、歴史の中で最も困難な時期に直面している」とし、「ウクライナ国民の尊厳と自由が見過ごされることのないよう、24時間体制で戦う」と言明した。

<欧州は独自の対案検討の可能性>

仏大統領府によると、米国がウクライナに和平案を提示したことを受け、仏英独首脳は21日、ゼレンスキー大統領と電話会談を実施。和平案はウクライナが完全に関与し、ウクライナの主権を守り、将来的な安全を保証するものでなくてはならないとの見解で一致した。

複数の関係筋によると、ウクライナと仏英独の4カ国は、米国が提示した28項目の和平案に対抗する独自の和平案を取りまとめる作業を進めている。他の欧州諸国もこの動きに加わる可能性が高いとしている。

また、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は21日、EU首脳は23日に20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる南アフリカのヨハネスブルクでウクライナ情勢を協議する会合を開くと発表。「ゼレンスキー大統領と協議し、現状について意見交換した。ウクライナ抜きのウクライナに関する決定はあり得ないという立場を明確にした」と改めて表明した。

ゼレンスキー氏は21日、米国のバンス副大統領とも電話会談を実施。電話会談は約1時間に及び、ゼレンスキー氏は会談後「米国と欧州と協力し、国家安全保障担当の補佐官レベルで和平への道筋を現実的なものにしていくことで合意した」とXに投稿。「トランプ大統領の流血を終わらせる意欲をウクライナは常に尊重しており、あらゆる現実的な提案を前向きに受け止めている」とした。

また、ドイツのメルツ首相はXへの投稿で、トランプ大統領と和平案を巡り電話会談したと明らかにした。メルツ首相は「良好」な会談だったと述べた。報道官によると、メルツ氏は今後の対応を調整するため、他の欧州諸国に連絡する見通し。

和平案が協議される中でもロシア軍はウクライナ東部で進軍を続けており、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は20日、プーチン大統領に対しウクライナ東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを制圧したと報告。国内ではゼレンスキー大統領の側近を巻き込む大規模な汚職疑惑を巡る捜査が進められており、ウクライナは極めて困難な状況に直面している。

▽プーチン氏、米国のウクライナ和平案を受領 「平和実現の基盤になり得る」<ロイター日本語版>2025年11月22日午前 4:42 GMT+9

Gleb Stolyarov

プーチン氏、米国のウクライナ和平案を受領 「平和実現の基盤になり得る」

[モスクワ 21日 ロイター] – ロシアのプーチン大統領は21日、米国が提示したウクライナ和平案を受け取ったと明らかにし、ウクライナとの紛争の平和的解決の基盤になり得るとの認識を示した。

プーチン氏はテレビ放映された政府高官との会合で、米国がウクライナに提示した和平案を「最終的な和平合意の基盤として活用できると考えている」と述べた。

ただ、ロシアは提案の文言について相談を受けていないとしたほか、ロシアは政府として提案の内容を巡る詳細な協議をまだ行っていないと言及。ロシアは平和的解決に向けた準備ができているとした上で、米国が提示した案について詳細を協議する必要があると語った。

また、ウクライナはこの提案に反対していると指摘。ロシア軍はウクライナで前進を続けており、和平が成立するまでロシア軍の前進は止まらないという現実をウクライナも欧州諸国も理解していないと語った。

また、8月に米アラスカで行われたトランプ大統領との会談に先立ち、和平案について協議し、米国側の要請に応じて妥協したものの、「米政権はこれまでウクライナ側の同意を得られていない。ウクライナは反対している」と述べた。

その上で、ロシア軍はウクライナで前進を続けており、ウクライナが米国の提案を拒否すれば、ロシア軍の進撃は続くだろうと警告。和平が成立するまでロシア軍の前進は止まらないという現実をウクライナも欧州諸国も理解していないと語った。

同時に、和平について議論する用意があるという考えを改めて示した。

▽米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は懸念表明<ロイター日本語版>2025年11月22日午前 12:45 GMT+9

Tom BalmforthMax HunderGram Slattery

米国、和平合意迫るためウクライナに圧力 情報・武器削減=関係筋

[キーウ/ワシントン 21日  ロイター] – 米国が仲介する和平交渉の枠組みにウクライナが合意するよう圧力をかけるため、米政府はウクライナへの情報共有や武器供給を削減する方針を示している。2人の関係筋が明らかにした。

米国はウクライナに対し、戦争終結に向けロシアの主要な要求の一部を支持する内容を含む28項目の和平案を提示。ウクライナの領土割譲や軍縮のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟の禁止などが盛り込まれている。

関係筋によると、米国はウクライナが11月27日の米感謝祭までに和平の枠組みに合意することを望んでおり、ウクライナは米政府から過去の和平協議よりも大きな圧力を受けているという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、ウクライナを訪問している米陸軍のダニエル・ドリスコル長官が率いる代表団と米国が提示した和平案について協議。米国の駐ウクライナ大使のほか、代表団に同行した米陸軍報道官らは、米国は合意文書の署名の「積極的なタイムライン」を求めているとした上で、20日に実施された協議は「成功」したとの見方を示している。

米国との協議を受け、ゼレンスキー大統領は21日、英独仏首脳と電話協議を実施。「ウクライナは戦争終結に向けた米政府、トランプ米大統領とそのチームの取り組みを評価しており、米国が提示した文書に取り組んでいる。この計画は、真の平和を確保するものでなければならない」と述べ、米国が提示した案を拒否したり、米国を刺激したりすることは避ける姿勢を示した。

欧州は米国が示した28項目の和平案について事前に知らされておらず、欧州首脳はウクライナに対する強い支持を表明。欧州連合(EU)の外相に当たるカラス外交安全保障上級代表は「誰にとっても極めて危険な局面にある」とした上で、「誰もがこの戦争の終結を望んでいるが、どのように終結させるが重要だ」とし、「ロシアには侵略した国から譲歩を受ける法的権利は一切ない。最終的に合意条件を決めるのはウクライナでなくてはならない」と述べた。

米政府関係者は、28項目の和平案はゼレンスキー大統領の側近、ウメロフ国家安全保障・国防会議書記(前国防相)との協議を経て作成されたと説明している。ただ、ウメロフ氏は21日、和平案の条件について協議したことはなく、承認したこともないと対話アプリ「テレグラム」に投稿。21日の米代表団と協議後「ウクライナの主権を侵害する計画を受け入れることはできない」との立場を改めて示した。

ロシア大統領府は米国が提示した和平案について、米国から公式な通知は受けていないと表明。ロシア大統領府のペスコフ報道官は「ウクライナは責任ある決断を下さなければならない」と述べた。

▽ロシア、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝制圧 ウクライナは否定<ロイター日本語版>2025年11月21日午前 9:45 GMT+9

Ksenia OrlovaDmitry AntonovYuliia DysaMaxim RodionovMax Hunder

ロシア、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝制圧 軍参謀総長がプーチン氏に報告

[モスクワ/キーウ 20日 ロイター] – ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は20日、プーチン大統領に対しウクライナ東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを制圧したと報告した。ウクライナ軍はこれを否定している。

ロシア大統領府によると、プーチン氏はロシア軍の「ザーパド(西方面)」部隊の司令部を訪れ、ゲラシモフ参謀総長ら軍高官からウクライナ東部ドネツク州のコンスタンチノフカとクラマトルスクのほか、ハルキウ州のクピャンスク周辺の情勢について報告を受けた。

ゲラシモフ氏は「ザーパド部隊がクピャンスクを『解放』し、オスコル川の左岸でウクライナ軍部隊を包囲した」と報告。また、ドネツク州の要衝ポクロウシクの70%、ハルキウ州のボウチャンスクの80%以上をロシア軍が制圧したとも報告した。ウクライナはこの2都市の情勢についてもロシアの主張を否定した。

ロシアはポクロウシクを制圧すれば、ドネツク州でウクライナがなお支配しているクラマトルスクやスラビャンスクなどの都市への足掛かりが得られるとして攻勢を強めている。

ロシア国防省はこの日、ポクロウシク市南部をロシア軍兵士が自由に歩き回り、焼け焦げた集合住宅が立ち並ぶ通りを巡回する様子を映した映像を公開。ロイターはこの映像がポクロフスクで撮影されたと確認した。

ウクライナ軍はこの日、ポクロウシクで「ロシア軍の掃討を継続している」とし、攻防がなお続いていると表明。ポクロウシクと近隣のミルノフラードに向け追加的な後方支援ルートを整備していると明らかにした。

また、深夜の声明で、「ウクライナ軍参謀本部は、クピャンスクがウクライナ国防軍の管理下にあることをここに発表する」と述べた。

さらに、「ハリキウ州のボウチャンスクの80%とポクロウシク市の70%が制圧されたとする記述も事実ではない」とした。