▽米中首脳電話会談、台湾や対日関係を協議-習氏は米国の政策修正狙う<bloomberg日本語版>2025年11月26日 1:38 JST
- 会談後に台湾・日本に言及なかったトランプ氏、内容を高市氏に報告
- トランプ氏訪中まで、台湾いっそう争点に-中国外務省アドバイザー
中国の習近平国家主席とトランプ米大統領が10月に韓国で会談した際、意外にも台湾問題は議論に上らなかった。そこから1カ月足らずで、台湾問題が再び米中間の最大の火種として浮上した。
習氏は24日、トランプ氏と1時間にわたり電話で会談。この中で、日本との外交問題に触れつつ台湾に対する中国の主権を強調し、米国の政策を自国に有利な方向へ導こうとした。台湾に対する主張を「第二次世界大戦後の国際秩序で欠くことのできない一部」と位置づけ、米中がともにファシズムや「軍国主義」と戦ったことをトランプ氏に語った。軍国主義という言葉は、膨張主義を取った過去の日本を明らかに示唆している。
一方、トランプ氏は会談後の声明で台湾や日本に一切言及せず、代わりに貿易面の進展を強調。「米中関係は極めて強固だ!」と表明した。
だが、その数時間後に高市早苗首相は記者団に対し、トランプ氏から習氏との会談内容について直接説明があり、日米の同盟関係を再確認したと明らかにした。

来年4月の北京訪問を受け入れたトランプ氏だが、中国との関係改善を一段と進めるためどこまで踏み込むのかを巡っては、依然疑問が残る。トランプ氏はエヌビディアのより高度な人工知能(AI)半導体モデルの販売など安全保障絡みの対中規制の一部を緩和する意向を示しており、台湾の安全を約束することに疑問を呈したこともある。
習氏は既に、中国が圧倒的な支配力を持つレアアース(希土類)を武器に、トランプ氏に極めて高い関税を引き下げさせた実績がある。トランプ氏は10月30日に韓国・釜山で習氏と会談した際に「G2会合」と呼び、世界の舞台で米中が対等な地位にあることを認めたように映る。
この会合に先立ち、中国は米国が長年堅持してきた台湾の独立に関する立場を変えるよう圧力をかけていた。
アジア・ソサエティー政策研究所中国分析センターで中国政治を専門とするニール・トーマス研究員は「中国は米国が完全に台湾を見捨てるとは期待していないが、習氏はトランプ氏との関係にますます自信を深めている。釜山会談の余韻が残る中で、米国を利用して日本に外交的な優位性を得られる好機だと感じ取っている」と論じた。
台湾にとってのリスクは、毛沢東以来最も強い指導者となった習氏が、中国の経済力を武器に米国とその同盟国の間にくさびを打ち込もうとすることだ。トランプ氏は日韓などアジア3カ国の最近の訪問や、高市氏との電話会談で日本に必要な「どんな頼みでも」連絡して欲しいと述べるなど、懸念の払拭に努めている様子を見せた。
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のライアン・フェダシウク研究員は「中国は高市氏に対し、渡航自粛や海産物の輸出禁止、実弾演習で圧力をかけ、首を切り落とすとの外交官による脅しまであった」と指摘。「トランプ氏がアジアの模範的な同盟国である日本に支持を差し伸べるのは当然だろう」と論じた。
トランプ氏は習氏との電話会談について「非常に良かった」とソーシャルメディアに投稿し、中国が米国産大豆の購入を増やしレアアースの一部販売規制を停止する代わり、米国が中国製品に対する関税を引き下げて輸出規制を緩和する合意に向け、「大きな進展」があったと評価した。
ただ、台湾を巡り中国の圧力が強まる場合、トランプ政権の閣僚がブレーキをかける公算が大きい。トランプ氏が貿易合意と引き換えに米国の台湾政策を変更する可能性について、釜山での米中首脳会談前にルビオ国務長官は「誰もそんなことは考えていない」と述べていた。
公には日本支持せず
それでも、高市氏が日中対立の渦中に陥って以来、トランプ氏や政権幹部は日本への支持を公に表明することを控えている。支持する姿勢を明らかにしたのは在日米大使など、比較的下級の当局者にとどまっている。
こうした当局者の支持ですら、中国政府にとっては「懸念」だと、 中国外務省のアドバイザーを務める復旦大学米国研究センターの呉心伯主任は述べた。
中国にとって、習氏とトランプ氏の電話会談は台湾問題に対するトランプ政権の公式姿勢を見極め、米国は高市氏の発言を支持するべきではないとのメッセージを送る機会になったと指摘し、習氏はトランプ氏に台湾問題が政治的に極めて敏感な問題であることを認識させただろうとの見方を示した。
呉氏は現時点から来年4月のトランプ氏訪中までに台湾問題がいっそう取り上げられるようになると予想し、「米国は台湾問題を極めて慎重に扱うべきだ」と主張した。
一方、ユーラシア・グループの上級アナリストで、かつて中国と日本の米国大使館で外交官を務めたジェレミー・チャン氏は、今回の米中首脳の電話会談は、米国が中立的立場を維持する見返りとして、中国が日本との対立激化を抑える機会になる公算が大きいとの見方を示した。
原題:Xi Puts Biggest US-China Flashpoint Back on Agenda in Trump Call(抜粋)
▽米中首脳会談、来年4回開催の見通し-ベッセント氏「安定もたらす」<bloomberg日本語版>2025年11月25日 23:58 JST
Daniel Flatley
- 米中関係の安定は「米国民にとっても世界経済にとっても良いこと」
- 台湾に関する米国の立場は「変わっていない」-ベッセント氏
ベッセント米財務長官は25日、トランプ大統領と中国の習近平国家主席による会談が、来年に最大4回行われる可能性があるとの見通しを示した。米中両国は不安定な貿易休戦の維持を図っている。
ベッセント氏はCNBCの番組で「私が非常に良いと感じているのは、両国首脳の関係だ」と述べたうえで、「我々は常にライバル関係にある。それは自然なことだ。それでも協力できる分野はあるか。答えはイエスだ」と続けた。
同氏によると、トランプ大統領は来年4月に予定される中国への国賓訪問に加え、11月に深圳で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する可能性がある。

トランプ氏は来年、習氏を米国に2度招く見通しだ。1度は国賓訪問、もう1度はトランプ氏がフロリダ州ドラルに所有するリゾートで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への出席。両首脳が直接対面する機会は、これで計4回となる。
ベッセント氏は「1年間で4回の会談が実現すれば、両国関係に大きな安定をもたらすと思う。安定は米国民にとっても、世界経済にとっても良いことだ」と語った。
同氏はジュネーブ、ロンドン、ストックホルム、マドリード、クアラルンプールなど世界各地で行われた複数回の協議を通じ、中国との貿易面での緊張緩和維持で主導的な役割を果たしてきた。
中国が米国産大豆の購入拡大を約束した計画について、ベッセント氏は「予定通りに進んでいる」と述べ、今後3年半で少なくとも8750万トンを購入する見込みだとした。
また、台湾に関する米国の立場は「変わっていない」と発言。米中首脳がロシアによるウクライナ侵攻の終結に向け、協力することで一致したことも明らかにした。
関連記事:トランプ氏、中国・日本両首脳と相次ぎ協議-台湾緊張下で関係均衡模索
原題:Bessent Says Trump and Xi May Meet Four Times Next Year(抜粋)
▽トランプ氏、中国・日本両首脳と相次ぎ協議-台湾緊張下で関係均衡模索<bloomberg日本語版>2025年11月24日 23:45 JST
Josh Wingrove
- トランプ氏、習主席と約1時間会談-その数時間後に高市氏とも会談
- 台湾巡る日中間の対立、米中首脳間の関係に新たな不確実性もたらす
トランプ米大統領は、中国および日本の首脳と立て続けに電話会談を実施した。台湾問題を巡る緊張が高まる中、アジアの主要経済国である日中両国との関係のバランスを取ろうとしている。
トランプ氏が中国の習近平国家主席と約1時間にわたり行った会談は、両首脳が韓国で関税「休戦」に合意して以来、初の直接対話となった。両首脳は週末の20カ国・地域(G20)首脳会議をともに欠席していた。中国国営メディアによると、習主席は今回の会談で台湾問題を取り上げたが、先月の米中首脳会談では台湾問題は議題に上らなかったという。
習主席は台湾の地位について歴史的な観点から強調し、中国への台湾復帰は第2次世界大戦後の国際秩序の重要な部分だと強調。米中がファシズムと戦った戦時同盟を引き合いに出し、「第2次世界大戦の勝利を守る」ための共同努力を呼びかけた。
その数時間後、トランプ氏は高市早苗首相とも会談。高市氏によると、トランプ氏は日米関係の強化を確認するとともに、中国情勢の最新情報を共有し、自身への連絡はいつでも可能だと述べたという。
関連記事:日米首脳が電話会談、トランプ大統領が最近の米中関係を説明-高市首相
台湾を巡る日中間の対立は、トランプ、習両氏の関係に新たな不確実性をもたらしている。
トランプ氏が日中両首脳と会談したのは、米国の主要同盟国である日本とレアアース(希土類)供給国である中国の間で起きている対立に巻き込まれないようにする姿勢の表れとみられる。
中国は国連に対し、日本が台湾海峡情勢に武力介入した場合、断固とした自衛措置を取ると警告する書簡を送付するなど、対立をさらにエスカレートさせている。台湾を巡り衝突が生じた場合に中国を支持するか、あるいは干渉しないよう各国に圧力をかける狙いがある。
関連記事:台湾巡り国際社会に選択迫る中国、日中対立を利用-各国は静観の構え
こうした中、米中両国の貿易交渉チームは「休戦」合意の最終調整を進めている。ベッセント財務長官は今月、レアアースに関する米中間の合意は「うまくいけば」感謝祭までに成立するとの見通しを示したが、実施面の協議は継続している。
トランプ氏は習主席との協議について「非常に良い会談だった」とし、大豆など農産品の購入や合成麻薬フェンタニルの出荷抑制などについて話し合ったと明らかにした。トランプ氏は4月に中国を訪問することで合意したほか、習主席を来年国賓として米国に招待したという。
アジア・ソサエティー政策研究所のローリー・ダニエルズ氏によると、中国は韓国での会談では貿易や関係安定化に焦点を当てるため台湾問題をあえて避けていたが、台湾有事を巡る高市氏の発言を受け「全面的な」外交対応に至ったという。
ダニエルズ氏は「中国はしばしば、米国が同盟国との摩擦を処理することを望んでいる」と指摘。中国政府は同盟国を「米国の指導下にある存在」とみなしていると指摘した。
米中関係が再び悪化すれば関税「休戦」が危うくなる可能性もある。
中国は高市氏の発言を受けて、日本への渡航自粛勧告や日本産水産物の輸入停止などの措置を相次ぎ導入した。また両国は軍事演習を強化。中国は東シナ海での巡回活動を明らかにする一方、日本は台湾に近い与那国島へのミサイル配備計画を明らかにした。
トランプ氏は2日に放送された米CBSのインタビューで、中国が台湾を攻撃した場合に米軍が台湾を防衛するかと問われ、「習主席はその答えを理解している」と述べた。
トランプ氏は習主席との会談後、「米中関係は非常に強固だ!」とSNSに投稿。「合意内容を最新かつ正確に維持する点において、双方で大きな進展があった。今こそ大局を見据えるときだ」と強調した。
しかし、米大統領側の会談要旨は習主席が重視していた台湾問題に触れなかった。
一方、中国側の発表によると、トランプ氏は会談で中国の第2次世界大戦への貢献を認め、米国は「台湾問題が中国にとっていかに重要かを理解している」と述べたという。
また、中国外務省が発表した声明によると、米中首脳はロシアのウクライナ侵攻についても意見を交わし、双方が拘束力のある和平合意に達することを望むとの見解を習主席は示したとしている。
ホワイトハウスのレビット報道官は記者団に対し、電話会談は1時間続いたと説明。会談の焦点は「主に中国と取り組んでいる貿易協定やそれらの関係、それらがどのように前向きな方向に向かっているかについてだった」と話した。
貿易交渉
米中は先月、米国が対中関税を引き下げる一方、中国はレアアースの輸出規制を緩和する貿易休戦で合意した。米中間で緊張が再燃すれば、市場や企業経営者の間で不透明感が一段と高まる可能性がある。
関係者によると、米中両国は依然としてレアアースの輸出規制緩和を巡る重要な詳細について協議を続けている。米国向けのレアアースやその他重要鉱物の輸出に関して、中国が提供を約束した「一般輸出許可」の条件を11月末までにまとめることを目指しているという。
関連記事:米中、レアアースでなお合意に至らず-貿易「休戦」の成果に不透明感
レアアースを巡る協議が続く中でも、米国は合意の一環としてすでに関税を引き下げ、国家安全保障に絡む複数の措置を停止した。また先端人工知能(AI)半導体の中国向け輸出を容認するかについても検討している。
ラトニック商務長官はエヌビディア製AI半導体「H200」の中国向け輸出を容認するかどうかは、トランプ氏が判断するとブルームバーグテレビジョンで述べた。輸出の可能性を巡り「多くの顧問」が大統領に意見を述べているという。
関連記事:エヌビディア「H200」の中国出荷、トランプ氏が判断-ラトニック氏
トランプ氏はまた、中国による米国産大豆の購入拡大についても習主席と話したと言及。中国側が手続きを進めており、「中国は大量の大豆を購入することになる」と語った。
原題:Trump Talks to Xi, Then Takaichi as US Walks Taiwan Tightrope(抜粋)
