Tom Rees

  • 市場は12月の利下げ再開を確実視-来年末までの緩和予想も拡大
  • 主要な増税先送り、最低賃金の引き上げ-英中銀の判断複雑に

英国のリーブス財務相が26日に発表した秋季予算案は、予想されていたほどインフレ対策に重点を置いた内容ではなかったが、イングランド銀行(英中央銀行)が12月に利下げを再開する道筋を開いた。

  英国のインフレ率が主要7カ国(G7)で最高水準のため、リーブス氏は、財政計画によってインフレ問題を緩和する方針を示していた。英予算責任局(OBR)によると、鉄道運賃の凍結、自動車の燃料税の1年間減免、家庭の光熱費削減策など、リーブス氏の政策パッケージにより、2026年4-6月期のインフレ率は0.5ポイントも押し下げられる見通しだ。

  26日の予算案発表後、短期金融市場は12月18日のイングランド銀行金融政策委員会(MPC)での利下げがほぼ確実との見方を強めた。一方、エコノミストらは、イングランド銀行はより長期的な展望を重視しており、対応は微妙になるとの見方を示している。急速な利下げサイクルの余地は限られているとみられる。

  リーブス氏の新たな財政計画では、税負担を増やす政策のほぼ全てを先送りし、最低賃金のさらなる引き上げを認めている。

  インベスコのグローバル調査責任者、ベンジャミン・ジョーンズ氏は、「所得税率が据え置かれたことを考えると、この予算は一部が懸念していたほど収縮的ではない。ただ、依然としてデフレ的だ。最近のインフレ圧力はすでに弱まっているため、イングランド銀行は今後、利下げサイクルを再開すると予想される」と語った。

  最近のインフレ、雇用、経済活動のデータは、物価の先行きがより穏やかになることを示している。先週発表された10月の消費者物価指数(CPI)では、7カ月ぶりにインフレ率が鈍化していることが示された。イングランド銀行が政策金利を4%から3.75%へ引き下げる環境は整いつつある。

  予算発表後、市場は12月の利下げの可能性を90%近くと見こみ、2026年末までの利下げ幅を、これまでの予想よりわずかに拡大し、64ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)とした。

  ただ、リーブス氏の財政計画は、最大の増税が実施されるまでの数年間は政策がやや緩和されるため、イングランド銀行の政策立案者たちの頭痛の種になりかねない。

  INGの先進国市場エコノミスト、ジェームズ・スミス氏は、「12月の利下げの可能性は依然として高いものの、先行的な増税がないことで、イングランド銀行の利下げの動きは複雑になる」との見通しを示した。

原題:Reeves Eases Path to Bank of England Cut With Budget Moves (1)(抜粋)