▽【米国市況】S&P500が小反発、ビットコイン急伸も慎重ムード-円下落

Rita Nazareth

  • S&P500種構成銘柄の大半は下落、米10年債ほぼ変わらず
  • 円は対ドル一時0.5%安の156円18銭、ドル指数も小幅安

2日の米株式相場は小反発。 暗号資産(仮想通貨)が前日に売られた後、大きく持ち直したにもかかわらず、S&P500種株価指数の回復は小幅にとどまった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6829.3716.740.25%
ダウ工業株30種平均47474.46185.130.39%
ナスダック総合指数23413.67137.750.59%
Traders At The New York Stock Exchange As Wall Street On Hold In Run-Up To Nvidia, Jobs Data
S&P500種は小反発Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  S&P500種はここ7営業日で6日目の上昇となったが、構成銘柄の大半は下落した。アップルを中心に大型テクノロジー株は上昇し、ナスダック100指数は0.8%高。一方、テスラは値下がりした。著名投資家マイケル・バーリ氏が同社の株価について、「ばかげた過大評価」との見方を示した。ボーイングは上昇。2026年に再び現金創出に転じるとの見通しを示した。

  ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのマーク・ニュートン氏は「総じて12月には前向きな見方をしているが、再び高値を更新する前に、向こう数週間はまだ『行ったり来たり』の値動きになる可能性が高い」と述べた。

  パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「市場の裾野の広がりやトレンドを示す当社の指標は先週にやや改善したが、『買い』シグナルが点灯するには、さらなる時間とテクニカル面での根拠が必要だ」と述べた。

  ビットコインは9万1000ドル台で推移し、前日の急落から持ち直した。この日の反発は、数カ月にわたる下落局面の中でわずかな安堵(あんど)感をもたらすものの、投資家心理はなお脆弱(ぜいじゃく)だ。

  来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に、いくつかの経済指標発表が待たれる中、トランプ大統領は次期連邦準備制度理事会(FRB)議長の候補を「来年早々に」発表すると述べた。

関連記事:トランプ氏、次期FRB議長候補を来年初めに指名へ-ハセット氏を称賛

  22Vリサーチのストラテジストは、今月の米国株下落に賭ける人は、米経済の力強さや人工知能(AI)を巡る根強い熱狂を考慮するのが賢明だと指摘。個人消費の増加やAIへの投資が生産性を押し上げ、企業は株価上昇に必要な利益を上げることができるとの見方を示した。

  「ここで株式をショートにするには、景気が大幅に弱まるとの強い確信、もしくはAI向け設備投資見通しに大きな変化が生じることが必要だ」とデニス・デブシェール氏ら22Vリサーチのストラテジストは述べた。

  バークレイズのストラテジストは、FOMC会合を控えたS&P500種のインプライド・ムーブ(implied moves)が2023年初め以降低下していると指摘。これは金融政策の影響力が薄れていることを示すトレンドだと説明した。

国債

  米国債は安定を取り戻し、10年債はほぼ変わらず。2年債は上昇した。相場を動かす材料は乏しかったものの、次期FRB議長人事に引き続き注目が集まっている。

  原油価格が取引終盤に下落したことも米国債を支えた。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.75%1.10.23%
米10年債利回り4.09%0.20.05%
米2年債利回り3.51%-2.0-0.58%
  米東部時間16時28分

  FRBはこれまでに1ポイント超の利下げを実施した後、どこで打ち止めにするべきか模索している。しかし、当局内ではこれまでになく意見の相違が広がっている。

  FRBの金利見通しでは過去1年ほどの間に、2012年の予測公表開始以降で最大の乖離(かいり)が見られる。こうした状況が、来週の追加利下げの是非や、その後の政策運営を巡る異例の見解対立につながっている。

関連記事:FRB当局者、中立金利見通しで異例の大分裂-利下げ論議にも影響

  ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は「FRBが来週利下げに踏み切るという当社の見方は変わっていないが、よりタカ派的な利下げになりそうだ」と指摘。「来週は少なくとも3人の反対票が出る可能性がある」と述べた。

  JPモルガン・チェースのストラテジストは、利下げが過度に織り込まれた結果、米国債が2026年に今年のような力強いパフォーマンスを再現する可能性は低いと指摘。

  JPモルガンの世界金利戦略責任者ジェイ・バリー氏は、「FRBが市場の織り込みほど利下げを実施しなければ、米国債利回りにはある程度の正常化が起きる」とし、米経済は「曲がっても折れない」と付け加えた。

外為

  外国為替市場では円が4営業日ぶりに下落。日本銀行の植田和男総裁が今月の利上げを示唆したことによる影響は薄れた。円は対ドルで一時0.5%安の1ドル=156円18銭まで売られた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1217.23-0.71-0.06%
ドル/円¥155.86¥0.400.26%
ユーロ/ドル$1.1623$0.00130.11%
  米東部時間16時28分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は小幅安。米経済指標の発表がほとんどなく、FRB当局者が来週の会合を前に発言を控えていることもあり、主要10通貨は狭いレンジでの推移となった。

  スコシアバンクのチーフ通貨ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「現時点でドルの反発がさらに続く余地はほとんどない」と指摘。「FRBの政策期待や指導部交代の可能性への注目、季節要因」を理由に挙げた。

ドル・円の推移

  スタンダード・バンクのG10戦略責任者スティーブ・バロー氏は、米最高裁が関税を違法と判断する可能性や、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長が次期FRB議長に指名される可能性がドルの下押し要因になり得ると指摘。さらに、日本銀行が今月利上げに踏み切った場合、円が急伸する可能性もあるとした。

  ドイツ銀行も、日銀が利上げを実施する余地に加え、他国の堅調な経済指標が年末にかけてドルへの打撃になるとみている。

関連記事:ドル安圧力強まる、関税巡る判断・FRB人事・日銀利上げの「三重苦」

原油

  ニューヨーク原油先物は反落。不安定な値動きが目立った。ロシアのプーチン大統領がウクライナ支援国のタンカー攻撃を検討する可能性に言及。供給に支障が生じるとの思惑から、プラス圏に浮上する場面もあった。

  ロシアに関連するタンカーへの攻撃は以前は散発的にしか起きていなかったが、過去1週間に増加。船舶管理会社の少なくとも1社は、攻撃に遭う恐れがあるためロシア向けの輸送を停止すると表明した。

関連記事:ロシアはウクライナ支援国の船舶攻撃を検討も、プーチン氏警告 (1)

  市場はウクライナ和平案を巡る交渉の行方に注目している。米国のウィトコフ特使は訪問先のモスクワでプーチン大統領との会談を開始した。

  1日遅くに、プーチン氏はロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の要衝ポクロウシクを制圧したと述べていたが、ウクライナ側は否定している。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前日比68セント(1.2%)安の1バレル=58.64ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.1%安の62.45ドル。

  金スポット価格は続落。一方、前日に最高値をつけていた銀スポット価格も下落した。

  銀はテクニカル面で過熱感を示す兆候が出ている。14日間の相対力指数(RSI)は70を上回り、買われ過ぎの領域に突入。

  金1オンスを買うのに何オンスの銀が必要かを示す金・銀レシオはおよそ1年ぶりの水準に低下し、最近の銀の上昇が行き過ぎである可能性を示した。

  足元では、利息のつかない金・銀にとって12月の米利下げ観測が追い風となっている。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時48分現在、前日比34.62ドル安の1オンス=4197.59ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は54ドル(1.3%)下げて4220.80ドルで終えた。

原題:S&P 500 Ekes Out Gain as Bitcoin Surges After Rout: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Steady After Early Losses Are Unwound, Curve Steepens

Dollar Steady With Poor Seasonals in Focus: Inside G-10

Oil Falls in Choppy Trade as Traders Watch Ukraine Negotiations

Silver Slips From Record on Signs 6-Day Rally Had Run Too Far