ドル安が目立ち始めている。来週の9日〜10日に予定されているFOMC(公開市場委員会)での利下げ説が勢いを増しているうえ、日銀の12月利上げ説、トランプ関税の最高裁判決の思惑など、さまざまな要因が重なっている。ちなみに現在のドル・円相場は1ドル=155円台半ばといったところだ。トランプ氏が消極的だったエプスタイ文書の公開では、上下両院とも圧倒的多数で公開が決まった。直前になってトランプ氏は共和党の実勢を理解し賛成票を投じるよう要請したようだが、トランプ党とまで言われるほど党に対する影響力を保っていた同氏の求心力にも陰りがでているようだ。これにトランプ関税の最高裁判決に対する思惑、なかなか進まないウクライナ和平など、トランプ政権にかつてのような勢いがなくなっている。あれやこれや、さまざまな要因が重なってドル安が加速している。

こうした流れが続くかどうか、にわかには判断できない。予測可能性が極めて低いのがトランプ氏の特徴だ。今朝のニュースによると同氏は年明け早々にも次期FRB議長を指名すると公言した。最有力候補は国家経済会議(NEC)委員長のケビン・ハセット氏と見られている。トランプ氏は昨日、閣議後のイベントでメディアを前に「FRBの次期議長候補もここにいるようだ」と語り、「誰がそう呼んでいいのか分からないが、彼は尊敬されている人物だ。それだけは言える。ありがとう、ケビン」と述べている。このケビン氏こそケビン・ハセット氏その人だ。それでもBloombergは「トランプ氏は予想外の人事や政策を決めることで知られており、公表されるまで指名は確定とは言えない」と念を押している。翻訳の問題かもしれないが、「誰がそう呼んでいいのか分からないが」とか「それだけは言える」など、否定的な用語も並んでいる。

ハセット氏はトランプ氏と経済政策を共有している側近だ。強力な利下げ論者でもある。トランプ氏の意中の人がハセット氏なら間違いなくドル安だろう。日銀が利上げすれば円は急騰するかもしれない。為替ディーラーにとては気の休まらない日々が続く。もう一つ気になるのはトランプ氏の健康状態だ。WHは昨日10月に行ったMRI検査の結果を公表した。トランプ氏の健康にまつわる噂が後を絶たないため、大統領自ら公表を約束したものだ。WHはこれまでこの時の結果発表を控えていた。それを急に公表した理由は何か。発表を控えていたものを急に発表すること自体、市場やメディアの憶測や勘ぐりを改めて呼び起こす。認知症検査は満点だったとトランプ氏は豪語する。疑い出すとキリがないが、ニュースで流れるトランプ氏の表情はどことなく精彩を欠いているように見える。あれやこれや、気になるドルの先行きだ。