▽自国が「年収の壁」引き上げ協議本格化…補正案協力狙う自民、党内も「目立った反論なし」<読売新聞オンライン>2025/12/04 07:46

 自民、国民民主両党は3日の税制調査会長会談で、所得税の非課税枠「年収の壁」引き上げを巡る協議を本格化させた。さらなる手取り増の実現で存在感発揮を目指す国民民主に対し、自民は要望を受け入れることで補正予算案への協力を取り付ける狙いがある。今後は所得制限のあり方などが焦点となりそうだ。

「年収の壁」の現状と国民民主・自民両党の主張

 国民民主の古川元久税調会長は会談後、記者団に「178万円を目指して一緒に汗をかくことを確認した」と述べた。

 年収の壁は、個人の収入に所得税がかかり始める水準だ。全ての人が対象の「基礎控除」と給与所得者が対象の「給与所得控除」の最低額を合わせた金額となる。昨年度の税制改正では、年収200万円以下に限って160万円に引き上げた。

 高市首相(自民総裁)は壁の見直しに前向きで、自民内でも178万円への引き上げに目立った反論はない。首相は3日の参院本会議で「どのような所得層を対象にするか考え、知恵を絞りたい」と理解を示した。

 11月の党首討論では、首相は「給与所得控除も合わせて(178万円を)達成していくのであれば大いに賛成する」と国民民主の玉木代表に答弁した。玉木氏が給与所得控除に言及していたことから応じる姿勢を見せた。給与所得控除の引き上げは全体の税収減が抑えられるため、両党内からは「乗りやすい着地点になり得る」との見方がある。

 ただ、引き上げ手法次第では税収の大幅減に直結する恐れがある。基礎控除と給与所得控除のどちらを拡大するかによって、必要財源が大きく異なるためだ。

 国民民主が年収に応じて基礎控除額が縮小する「所得制限の撤廃」を要求する一方で、自民は慎重な姿勢を示す。中高所得者まで幅広い層に減税の恩恵が及び、必要財源は「数兆円単位」(財務省幹部)に上るため、財源確保などで協議が難航する可能性もある。