• 従業員数50人未満の企業では12万人削減、50人以上の企業では人員増
  • 専門職や情報、製造業などで雇用減-教育・医療では雇用増加

Jarrell Dillard

11月の米民間雇用者数は前月比で減少した。2023年の早い時期以来の大幅減となり、労働市場の軟化が一段と鮮明になってきたとの懸念が広がっている。

キーポイント
米民間雇用者数は3万2000人減少
エコノミスト予想中央値は1万人増
10月は4万7000人増(速報値4万2000人増)に上方修正
ADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出

ADP民間雇用者数、3万2000人減

  民間雇用者数の減少は過去6カ月のうち4度目となった。

  来週に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)の年内最後の政策会合を前に、この日のADP雇用統計の弱い内容は、労働市場の悪化が加速するとの懸念を一段と高める可能性がある。政府の11月雇用統計の発表が政府機関の閉鎖で遅れているため、ADP統計は当局が会合までに参照できる数少ない経済指標の一つとして、通常以上の重要性を持つとみられる。

  FOMC内部では、労働市場の減速と高止まりするインフレとのバランスを取りながら、3会合連続で利下げに踏み切るべきかどうかで意見が分かれている。ただ市場では、借り入れコストの引き下げに動くと広く予想されている。

  シティグループのエコノミスト、ベロニカ・クラーク氏は「今回も恐らく判断はかなり割れるだろう」と述べた。その上で、利下げが予想されているものの、ガイダンスはタカ派寄りになるとの見通しを示した。

  S&P500種株価指数は下げて始まり、米国債利回りは低下を維持した。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「消費者の慎重姿勢と不透明なマクロ経済環境の中で、最近の雇用は不安定な動きを示している」と指摘。「11月の雇用減速は広範囲に及んだが、小規模事業者の雇用縮小が主導した」と述べた。同氏はブルームバーグテレビジョンにも定期的に出演する。

  従業員数が50人未満の企業では12万人が削減された一方、50人以上の企業では人員が増加した。業種別では、専門職・ビジネスサービス分野を中心に雇用が減少し、情報や製造業なども減った。一方、教育・医療サービス分野では雇用が増加した。

  最近まで、多くのエコノミストは労働市場について、採用と解雇がともに低水準にあるとみてきたが、アップルやベライゾンといった大手企業が最近になって人員削減やその計画を発表しており、失業率を押し上げるリスクが意識されている。

賃金鈍化

  ADP統計では、賃金の伸びにも鈍化の兆しが見られた。転職した労働者の賃金は前年比6.3%上昇。2021年2月以来の低い伸びにとどまった。一方、同じ職場にとどまった労働者の賃金は4.4%増だった。ADPは民間部門の従業員2600万人超を対象とする給与データに基づき統計を算出している。

  当局者にとって労働市場の動向は重大な関心事であり、ADPのような民間データに加え、その他の指標も注視している。新規失業保険申請件数は依然として比較的低水準を維持している一方、地区連銀経済報告(ベージュブック)では、雇用がわずかに減少したとの報告があった。

  労働省労働統計局(BLS)が5日に発表する予定だった11月の雇用統計は、政府機関の閉鎖によりデータ収集が中断された影響で、16日に延期された。同報告では10月の非農業部門雇用者数も合わせて発表される見通し。一部データをさかのぼって収集できなかったため、10月分の完全な統計は示さない方針だ。

  なお、ADPは最近、週次ベースの雇用データの公表も開始しており、直近は3週連続で雇用が減少している。

  統計の詳細はをご覧ください。

原題:Payrolls at US Companies Fall by Most Since 2023, ADP Says (4)(抜粋)