• 円は一時154円51銭、11月17日以来の高値-利上げを政府は容認姿勢
  • 米国債利回りは上昇、失業保険申請件数が予想外に減少

Rita Nazareth

4日の外国為替市場では円が上昇。日本銀行が今月利上げを行うことを、 高市早苗政権が容認する姿勢であることが明らかになった。これを受けて、円は対ドルで一時0.5%高の154円51銭と11月17日以来の高値を付けた。

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為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1214.041.030.08%
ドル/円¥155.12-¥0.13-0.08%
ユーロ/ドル$1.1642-$0.0029-0.25%
米東部時間16時22分

  ロイター通信はこれより先、事情に詳しい政府関係者3人の話として、日本銀行が12月に利上げに踏み切る公算が大きく、政府もこの判断を容認する見通しだと報じていた。

  オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が織り込む12月の日銀利上げ確率は約90%に上昇。1週間前はわずか56%だった。

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数はほぼ変わらず。米新規失業保険申請件数が予想外に減少したことなどを背景に、下げ渋る展開となった。

  先週の米新規失業保険申請件数は予想外に減少し、約3年ぶりの低水準となった。レイオフの発表が相次ぐ中でも、雇用主は総じて労働力を減らしていないことが示唆された。米民間再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米企業が11月に発表した人員削減数は前月から減少した。ただ、同月としては3年ぶりの高水準となった。

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  オックスフォード・エコノミクスのアナリスト、ジョン・カナバン氏は失業保険申請件数について、「感謝祭の週前後は季節要因によるデータの歪みが生じやすいため、今回の数字を深読みするのは難しい」と指摘。「全体として、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)決定に大きな影響を与えるような数字ではない。現時点で唯一重要なのは、来週のFOMC会合だ」と述べた。

国債

  米国債は下落(利回りは上昇)。先週の新規失業保険申請件数が約3年ぶりの低水準となり、市場で広がる利下げ観測に逆行する動きとなった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.76%2.70.57%
米10年債利回り4.10%3.50.86%
米2年債利回り3.52%3.71.07%
米東部時間16時22分

  ただ、連邦準備制度理事会(FRB)が雇用下支えに向け12月10日に3会合連続の利下げに踏み切るとの市場の見方はほとんど揺らいでいない。市場ではFRBが政策金利を3.5-3.75%に引き下げる確率を約90%と織り込んでおり、2026年に3%に向けて追加利下げが実施されると見込んでいる。

  ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディ・ガロマ氏は「感謝祭を含む週の近辺では、失業保険申請件数は季節調整が極めて難しくなり得る」と指摘。「人工知能(AI)を要因とするレイオフを中心に、雇用市場は軟化しつつある。FRBは12月10日に0.25ポイントの利下げを実施するだろう」と述べた。

市場の利下げ観測変わらず、失業保険申請件数は減少でも

  労働市場分析会社レベリオ・ラボがこの日発表した11月の非農業部門雇用者数は9000人減少した。前日公表された11月のADP民間雇用者数が3万2000人減少し、過去6カ月で4度目のマイナスとなったのと同じような内容となった。

  それでも、インフレ率は依然としてFRBの2%目標を上回っていることから、幾人かのFRB当局者は10月の利下げに疑問を呈し、12月の追加利下げにも反対姿勢を示している。

  TDセキュリティーズの米国金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「FRBにとってはこの先、反対票の出ない道筋などあり得ない」と指摘。自身は12月会合での利下げを見込んでいるとしつつ、「主要経済指標の多くが12月会合後に発表されることを踏まえると、その先の道筋は極めて不透明だ」と続けた。

株式

  S&P500種株価指数は小幅ながら3日続伸。最高値に迫りつつも、来週のFOMC会合を控え、大きく勢いづくには至らなかった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6857.127.400.11%
ダウ工業株30種平均47850.94-31.96-0.07%
ナスダック総合指数23505.1451.050.22%
US Stocks Gain As China Tensions Ease, Broadcom Inks OpenAI Deal
S&P500種は小幅高Source: Bloomberg

  先週の新規失業保険申請件数が減少したものの、利下げ観測は崩れていない。メタ・プラットフォームズは3.4%上昇。同社幹部がメタバース関連部門の予算削減を計画していると、ブルームバーグ・ニュースが伝えた。小型株で構成するラッセル2000指数は約1%高。

関連記事:ザッカーバーグ氏、メタバース関連予算の最大30%削減を計画-AI注力

  AIを巡る熱狂が行き過ぎているとの懸念から、株式相場は先月に一時揺らぐ局面もあった。だが、同セクターの力強い見通しや、金融緩和が企業収益を押し上げるとの期待が、さらなる上昇を見込む動きを支えた。

  フォレックス・ドット・コムのファワド・ラザクザダ氏は「市場にとって最大の焦点は、来週に予想されるFRBの利下げがいわゆる『サンタ・ラリー』を引き起こせるかどうかだ」と指摘。「今のところ、S&P500種の見通しは慎重ながらも建設的だが、ためらう気配も出始めている」と述べた。

  FRB当局者は来週の会合前に、11月分の雇用統計は入手できない。11月雇用統計の公表は当初12月5日の予定だったが、政府機関閉鎖の影響で16日に延期された。同統計には10月分の非農業部門雇用者数も含まれる。

  ストラテガス・セキュリティーズのドン・リスミラー氏は「雇用者数の減少を示すデータが依然としていくつか見られる。先行指標とされる直近のデータや調査報告に基づくと、米労働市場は崩壊しているわけではない」と指摘。「FRBは12月に0.25ポイントの利下げを実施すると当社は引き続き考えている」と話した。 

  5日には9月の米個人消費支出(PCE)統計が公表される。政府機関閉鎖で発表が遅れていた。

  食品とエネルギーを除いたPCEコア価格指数は3カ月連続での0.2%上昇が予想されている。そうなれば、前年同月比では3%をわずかに下回る水準で推移することになり、インフレ圧力は落ち着きつつも根強く、FRBの目標をなお上回っていることを示唆する。

原油

  ニューヨーク原油先物は続伸。地政学リスクが支援材料となった。ただ、サウジアラビアがアジア向けの原油販売価格を引き下げるなど、世界の原油市場で供給過剰の兆しが広がっている。

  ウクライナの交渉担当者はフロリダで新たな和平協議に臨む。米国の和平案に対し、ロシアのプーチン大統領が一部に受け入れがたい点があると述べたことが背景にある。ロシア産原油に対する制裁解除にはなお時間がかかることを示唆しており、相場を支援した。

  インドを訪問中のプーチン氏が、印ロ両国のエネルギー協力は「影響を受けていない」と強調したことも追い風となった。

  トランプ米大統領は3日、米国がベネズエラ国内の麻薬カルテルとされる組織に対して近く地上攻撃を開始すると改めて表明した。軍事介入が実際に行われれば、産油国ベネズエラの原油生産と輸出が落ち込む可能性がある。

  一方、サウジの国営石油会社サウジアラムコは主要油種アラブライトの1月積み価格について、地域指標に対するプレミアムを60セントに引き下げる。ブルームバーグが確認した価格リストによると、これは2021年以来の低水準となる。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前日比72セント(1.2%)高の1バレル=59.67ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は59セント高の63.26ドル。

米原油先物は続伸、地政学リスクを意識

  金スポット価格はほぼ変わらず。新規失業保険申請件数は約3年ぶりの低水準になったものの、来週のFOMC会合での利下げ観測が後退することはなかった。

  一方、このところ急ピッチで上昇してきた銀価格は9営業日ぶりに下落。

  ING銀行のコモディティー(商品)ストラテジスト、エワ・マンゼイ氏は「今年の銀の上昇ペースが持続可能だとは思わない」と指摘。一方で「マクロの観点からは、銀も金と同じ材料から恩恵を受けるはずだ。具体的にはドル安、FRBの利下げ、そして地政学リスクを背景にした安全資産への需要回復だ」と語った。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時30分現在、前日比4.09ドル(0.1%)高の1オンス=4207.16ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は10.50ドル(0.3%)上げて4243ドルで終えた。

原題:S&P 500 Wavers on the Brink of Its All-Time Highs: Markets Wrap(抜粋)

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