- AIグラスやそのほかのウェアラブル機器に資金振り向け
- メタバース、リソースの浪費との批判-プライバシー侵害との声も

ソーシャルメディア大手の米メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、かつて同社の将来と位置づけ、社名をフェイスブックから変更するきっかけにもなったメタバース構想へのリソースを大幅に削減する見通しだ。メタの株価は一時5.7%上昇し、7月31日以来の大幅高を記録した。
事情に詳しい複数の関係者によると、同社幹部はメタバース関連部門の来年の予算を最大30%削減する案を検討している。この部門には、仮想世界プラットフォーム「メタ・ホライズン・ワールズ」や仮想現実(VR)ヘッドセット「Quest(クエスト)」を手がける事業が含まれる。関係者によれば、仮に予算がこれほど削減された場合、早ければ来年1月にもレイオフが実施される可能性があるが、最終決定には至っていない。
関係者によれば、メタバース関連予算の削減によって生じる余剰資金は、メタのリアリティー・ラボ部門内の他の先端プロジェクト、たとえば人工知能(AI)グラスやそのほかのウェアラブル機器に振り向けられる見通しだという。
今回検討されているメタバース関連の削減は、同社が現在進めている2026年度の年間予算策定の一環であり、先月ハワイにあるザッカーバーグ氏の私邸で行われた一連の会議も含まれていたという。ザッカーバーグ氏はメタの幹部に対し、全社的に10%の削減を模索するよう指示しており、これは過去数年にわたる同様の予算策定の際にも標準的に求められてきた方針だと、関係者は述べている。
メタバース関連への全体的な取り組みは、リソースを浪費しているとの批判を投資家から受けてきたほか、仮想空間における子どものプライバシーや安全が損なわれているとする監視団体からの指摘も相次いでいた。

メタの広報担当者はコメントを控えた。
メタバース関連の部門は、VRヘッドセットやARグラスといった長期的なプロジェクトに取り組むリアリティー・ラボ部門の傘下にある。同部門は2021年初め以降、700億ドル超の損失を計上してきた。ザッカーバーグ氏は公の場や決算説明会でメタバースについて言及することをほとんどやめ、代わりにAIチャットボットなど生成AI製品の基盤となる大規模AIモデルの開発や、それらの体験により密接に関係するハードウェア、たとえばスマートグラス(眼鏡型端末)「Ray-Ban Meta(レイバン・メタ)」の開発に注力している。
一部のアナリストや投資家は以前から、収益に結びつかず資源を浪費し続けているリアリティー・ラボの製品から、ザッカーバーグ氏が手を引くべきだと主張してきた。調査・助言会社フォレスターのバイスプレジデント、マイク・プルー氏は4月、「メタは年内にホライズン・ワールズのようなメタバース関連プロジェクトを終了させるだろう」と予測していた。
プルー氏は当時のメールで、同部門の損失に言及したうえで「リアリティー・ラボ部門は依然として穴の開いたバケツのような状態だ」と述べた。メタバース事業を終了させれば、「Llama(ラマ)」、メタAI、AIグラスといったAIプロジェクトにより集中できる」と指摘していた。
メタは依然としてコンシューマー向けハードウェアの開発に注力しており、最近ではアップルの最も著名なデザイン幹部を引き抜いた。
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原題:Zuckerberg Plans to Cut Metaverse Group’s Budget Up to 30% (2)(抜粋)
