- ワーナー株主、720億ドル相当の現金・Netflix株式を受け取る
- ホワイトハウスは懐疑的、パラマウントはNetflix上回る提案とCNBC
米動画配信大手Netflixが、米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディカバリーの買収で合意した。世界最大の有料ストリーミングサービスとハリウッドで最も歴史あるスタジオの一つが歴史的な統合を果たすことになった。
5日の発表文によると、ワーナー株主は1株当たり27.75ドル相当の現金およびNetflix株式を受け取る。この買収取引では、ワーナー株主持ち分の価値は720億ドル（約11兆1700億円）、企業全体の価値は約827億ドルと評価された。
取引完了に先駆け、ワーナーはCNNやTBS、TNTなどテレビ各局のスピンオフを完了させる。買収完了は2026年7－9月（第3四半期）の見通しだと、Netflixは発表文で説明した。
CNBCが匿名の情報源を引用して報じたところによると、パラマウント・スカイダンスは1株当たり30ドルでの買収をワーナーに提案した。テレビ局をスピンオフさせるNetflix案とは異なり、パラマウントはこれまでにワーナーの全資産に対する買収を提案した唯一の企業だった。
CNBCはまた、Netflixによるワーナー買収にホワイトハウスは「極めて懐疑的」な見方を示していると、米高官の話として伝えた。
カリフォルニア州選出のダレル・アイサ下院議員（共和）は、Netflixによる買収に反対する書簡を規制当局に提出し、この取引が消費者にとって有害となる可能性を指摘した。一方、Netflixは、自社にとって最大の競合の1社はアルファベット傘下のYouTubeだと主張し、複数のサービスを一括提供することで料金を引き下げることができるようになる可能性があると説明している。
ニールセンのデータによれば、Netflixは米国における月間テレビ視聴時間の約8－9％を占めており、ストリーミングに限れば、その割合は約20〜25％に上る。
米国時間5日の取引で、Netflixの株価は一時下げたものの、上昇に転じた。パラマウントの株価は6％近く下げている。ワーナーは3％を超える上げで、パラマウントとの統合交渉が初めて伝えられた9月以降、株価はほぼ2倍となった。
Netflixは過去にこれほどの大型買収を行ったことはなく、ワーナー買収は戦略の大転換を意味する。Netflixは保有作品やスタジオを持たず、他社作品をライセンス契約することにより、米メディア業界で最も価値ある企業に成長。その後、オリジナル作品の制作へと事業を広げた。
ワーナー買収により、NetflixはHBOネットワークを傘下に収め、「ザ・ソプラノズ」や「ホワイト・ロータス」などの人気番組を含む豊富な資産を手に入れる。さらに、カリフォルニア州バーバンクにある広大なスタジオや、「ハリー・ポッター」「フレンズ」などの膨大な映画・テレビ資産も加わる。
映画は強み
Netflixはワーナーの現行事業を維持すると表明。懸念されていた映画の劇場公開については、ワーナーの強みとして位置づけ、これを含めた強みをさらに強化していくとの考えを示した。
Netflixはまた、今回の買収で米国での制作能力を「大幅に拡大」し、オリジナルコンテンツへの投資が可能になるとし、雇用創出とエンターテインメント業界の強化にもつながると説明した。
一方、発表文によれば、この統合により3年目までに年間「少なくとも20億－30億ドル」のコスト削減も見込まれている。
ワーナーは複数の企業から関心を寄せられたことを受け、10月に身売りを含めた戦略的選択肢の検討を始めたと発表。Netflixのほか、パラマウント、コムキャストなどが買収の意思を示した。
この過程では、Netflixに有利な不公平な手続きで進められているとしてパラマウントがワーナーを非難するなど、騒動も起きていた。
合意条件に従うと、ワーナー株主は1株当たり23.25ドルの現金と、4.50ドル相当のNetflix普通株を受け取る。また当局に提出された文書によると、Netflixの財務アドバイザーは米投資銀行のモーリスとウェルズ・ファーゴが務め、ウェルズはBNPパリバ、HSBCホールディングスとともにデットファイナンスで590億ドルを提供する。
ワーナーの財務アドバイザーはアレン・アンド・カンパニー、JPモルガン・チェース、エバコアが務めている。
原題：Netflix to Buy Warner Bros. in $72 Billion Cash, Stock Deal (4)、Paramount Skydance Offered $30/Share for WBD: CNBC (2)、White House Sees ‘Heavy Skepticism’ on WBD Deal: CNBC（抜粋）
