▽パラマウント、ワーナーに17兆円規模の敵対的買収案-Netflixに対抗

  • パラマウント提示は1株現金30ドル、Netflixは株・現金で27.75ドル
  • Netflixはケーブル局分離方針、パラマウントはWBD全事業買収目指す

ハリウッドの将来を巡る争いが熾烈さを増してきた。

  米メディア大手パラマウント・スカイダンスは、同業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)に対し、1株当たり現金30ドルの買収案を新たに提示したことを公表した。WBDの企業価値を1084億ドル(約16兆8900億円)と評価している。WBDは数日前、動画配信大手Netflixへの売却で合意している。

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  パラマウントによる新たな買収案は、Netflixが提示した現金と株式を合わせた1株27.75ドルを上回る。Netflixは映画スタジオと配信事業だけに関心がある一方、パラマウントはワーナーの全事業を対象にしている。

  エリソン一族が経営権を握るパラマウントが敵対的な買収を仕掛けてきたのは、ハリウッドで最も歴史あるスタジオを巡る闘いが終わっていないことを示唆する。

  パラマウントのデービッド・エリソン最高経営責任者(CEO)は「WBDの株主は会社全体に対して当社が提示した全額現金の有利な買収案を検討する機会を得てしかるべきだ」と8日の声明で述べた。さらに「われわれが開示した提案は、WBDの非公開で取締役会に提示したものと同じ条件に基づいており、より有利な価値を提供し、より確実で早期に完了する見込みがある」と続けた。

  パラマウントは傘下にCBSやMTVなどを擁するメディア大手で、数カ月前にこの買収競争の引き金を引いて以来、複数回にわたりWBDへの提案を行ってきた。WBDは10月に売却手続きを開始し、Netflixやコムキャストから複数回にわたって買収案を提示されている。

  12月5日にNetflixと発表した合意内容によると、WBDは合併完了前にCNNやTNT、ディスカバリー・チャンネルなどのケーブルテレビ網のスピンオフを進める。

  WBDは8日に発表した文書で「パラマウント案を慎重に精査し検討する」と表明。取締役会は先週承認したNetflix案の受け入れ勧告を推奨する段階にはなく、株主には10営業日内にパラマウント案に対する考えを明らかにする方針だという。

  トランプ米大統領は7日、NetflixがWBDを買収する合意が「問題になり得る」と述べ、反トラスト法(独占禁止法)上の懸念が生じかねないとの認識を示した。

  WBDはNetflixとの合意を破棄する場合、28億ドルを払わなくてはいけないが、大抵の場合は新たな買い手が負担する。一方、Netflixは規制当局の承認を得られないなど合意を完了させられない場合に58億ドルの違約金を支払うことに同意している。

  WBDの考え方をよく知る関係者によれば、同社は1株当たり約33ドルでない限りはNetflixとの合意を見直さない方針だ。

  パラマウントは規制当局に提出した文書で、買収資金のうち118億ドルはエリソン一家が拠出し、240億ドルは中東の政府系ファンド3社が負担すると報告。レッドバード・キャピタル・パートナーズのほか、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏のアフィニティ・パートナーズも資金を出すという。

  パラマウントはまた、国際資金を含む取引を精査する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査は想定していないとの見解を示した。

原題:Paramount Makes $108 Billion Hostile Bid for Warner Bros. (2)(抜粋)