• 今週のFOMCタカ派的利下げになる可能性も、来年の利下げ見通し後退
  • ネットフリックスは下落、ワーナー買収巡りパラマウントが対抗案
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg
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Cristin Flanagan

8日のニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで下落した。青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生した後に、やや円安が進んだ。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1214.121.740.14%
ドル/円¥155.94¥0.610.39%
ユーロ/ドル$1.1637-$0.0005-0.04%
米東部時間16時43分

  気象庁によると、地震を受けて北海道や青森県、岩手県の太平洋沿岸に津波警報が発令された。その後、気象庁は北海道の根室沖から東北地方の三陸沖にかけての震源域で、新たな大規模地震の発生可能性が相対的に高まっていると考えられるとして、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を初めて発表した。

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  津波警報の発令後、円は対ドルで下げ幅を拡大。一時は0.4%安の155円99銭と156円に迫った。

  また日本の7-9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、速報値から下方修正された。6四半期ぶりのマイナス成長で、高市早苗政権の積極財政を後押しする材料となり得る。

関連記事:7~9月実質GDP下方修正、設備投資下振れ-高市政権の積極財政後押し

  週内に米国、カナダ、スイスの中央銀行が政策決定会合を控える中、ドル指数は米国債利回りの上昇を背景に上昇。

  市場は引き続き10日発表の連邦公開市場委員会(FOMC)政策決定で、0.25ポイントの利下げが決まると見込んでいる。

  コーペイのチーフ市場ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はタカ派なメッセージを浸透させるのに苦労するかもしれないとリポートで指摘。「市場はすでにタカ派な発言を重視しない傾向を強めており、楽観的な投資家はごくわずかなハト派的ニュアンスでも、来年の積極的な利下げサイクルへとリスクバランスが傾斜している証拠として飛びつく可能性がある」と述べた。

米国債

  米国債市場では、世界的に債券が軟調な展開となる中、利回りが数カ月ぶりの高水準を付けた。市場は今週予定されている一連の米国債入札に加え、2026年の金融政策見通しを変え得るFOMC会合に備えている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.81%1.60.34%
米10年債利回り4.17%3.30.80%
米2年債利回り3.58%1.70.47%
米東部時間16時44分

  利回りは年限全般で上昇。とりわけ中期ゾーンの上昇が目立った。米10年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp)上昇の4.19%となった。同年限の利回りは9月以降、4.2%近辺が上限となっている。30年債利回りは一時4.83%と、9月以来の高水準近辺。

  米財務省が同日実施した3年債入札(発行額:580億ドル)は、最高落札利回りが3.614%と、入札前取引(WI)水準の3.622%を下回った。需要が想定を上回ったことを示唆している。入札後、国債利回りは上昇幅を縮小した。

  今週はこのほか、9日に10年債(390億ドル)、11日に30年債(220億ドル)入札がそれぞれ実施される予定。

  財務省はFOMC会合に合わせて今週の入札日程を調整した。市場では10日まで開かれる同会合で、3会合連続となる0.25ポイントの利下げを実施し、政策金利の誘導目標レンジを3.5-3.75%とする確率を約90%織り込んでいる。インフレが高止まりする中で、市場参加者の注目はFRB当局者が示す2026年の見通しに向かう。

  オックスフォード・エコノミクスの主任アナリスト、ジョン・カナバン氏は「今週見込まれるFRBの利下げはタカ派的なトーンを伴い、来年の利下げ休止が長引く可能性があるとみている」と指摘。「FRBが長期的な休止を強く示唆すれば、投資家の失望を誘うだろう」と述べた。市場は来年4月までにもう1回の利下げが実施される確率を90%以上織り込んでいる。

  米金利スワップ市場では、利下げの最終到達点であるターミナルレートの予想が3%を下回る水準から3.2%近辺へと上昇。7月以来の高水準となっている。

  スワップ市場では、先週と比べて来年の利下げ予想が後退。10日に利下げが決まるとすると、市場は現在、来年末までにさらに0.25ポイントの利下げが2回行われると見込んでいる。合計の利下げ予想幅は、前週末5日時点から約5bp縮小した。

  バンガードのグローバル金利責任者、ロジャー・ハラム氏は「FRBは利下げを実施するが、利下げを継続的なリスク管理として位置付けるだろう」と指摘。利下げを終了する水準は3%よりも3.5%に近いとの見方を示した。

  また来年のマクロ環境について、成長が続く一方で「インフレは依然として目標を上回る」と予想。「そのため金利が3%に向けて下がり続ける状況にはならない」と続けた。

12月から来年にかけての米利下げ見通し

米国株

  米国株式相場は反落。M&A(合併・買収)関連のニュースが多かったが、相場を押し上げるには至らなかった。  

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6846.51-23.89-0.35%
ダウ工業株30種平均47739.32-215.67-0.45%
ナスダック総合指数23545.90-32.23-0.14%

  米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディカバリー(WBD)を巡る買収劇では、動画配信大手Netflixとの合意について、トランプ大統領が週末に反トラスト法(独占禁止法)上の懸念が生じかねないとの認識を表明。これに続き、米メディア大手パラマウント・スカイダンスはこの日、WBDに対して1株当たり現金30ドルの買収案を新たに提示したことを公表した。

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  ネットフリックスは一時4.9%下落。パラマウントの対抗案でさらに買収額を引き上げざるを得ないとの見方や規制当局の承認が難航するとの懸念が重しとなった。半面、WBDとパラマウントは終値で4.4%、9%それぞれ上昇した。

  M&A関連ではこの他、IBMが各種データをリアルタイムで処理するためのプラットフォームを手がける米コンフルエントを、負債を含め110億ドル(約1兆7000億円)で買収すると発表。これを受けて、コンフルエントの株価は29%急伸して終えた。

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  前週末に最高値に迫っていたS&P500種は0.3%安。2026年の利下げペースを巡る不透明感や、人工知能(AI)ブームの持続可能性に対する警戒感が投資家心理を冷やした。米国株はここ数週間、一部のFRB当局者が今週、3会合連続の利下げを実施する意向を示唆したことを好感して持ち直し基調にあった。

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「雇用市場の弱さを示す兆候が続いているため、0.25ポイントの利下げ予想は固まったが、今回の会合は近年で異例の僅差での金利決定になるのは間違いない」と話す。

  パウエル議長の後任候補として有力視されるハセット国家経済会議(NEC)委員長は、FRBが向こう6カ月の金利誘導見通しを示すのは無責任だとし、経済指標に沿って柔軟に判断する重要性を強調した。

関連記事:次期議長候補ハセット氏、FRBが6カ月先の金利方針示すのは「無責任」

  米政府機関の閉鎖で新たなデータが得られない状況も重なり、インフレ高止まりへの不安はFRB当局者の間で亀裂を生んでいる。今週のFOMC会合では利下げが濃厚とみられているが、その後2026年末までの利下げ見通しには不透明感が漂う。短期市場が織り込む26年末までの利下げ回数は足元で2回に傾きつつあり、わずか1週間前の3回から低下している。

  EFGアセット・マネジメントの副最高投資責任者兼リサーチ部門グローバル責任者、ダニエル・マレー氏は底堅い経済や季節要因、出遅れ修正の動きが株式を下支えしているものの、依然として大きなリスクが投資家の前に立ちはだかっていると指摘。

  具体的には「FRBが現在の想定よりハト派的でない可能性」に加え、「関税の影響が遅れて表れインフレの高止まりが長引く、労働市場の亀裂が広がり始める」といった点をリスクとして挙げた。

原油

  原油先物相場は反落し、約3週間ぶりの大幅安となった。市場では、インドによるロシア産原油の調達動向を見極める姿勢が広がっている。

  ロシアのプーチン大統領は先週、ロシアによるウクライナへの全面侵攻後、初めてインドを訪問。ウクライナ侵攻後に急増したインドのロシア産原油購入に歯止めをかけたいトランプ米大統領が圧力を強める中、プーチン氏は「急成長するインド経済に向け、途切れない燃料供給を継続する用意がある」と強調した。この問題は、通商協議で米国の交渉団がインドを訪れる際、主要な議題となる見通しだ。

  オーストラリア・コモンウェルス銀行の商品アナリスト、ビベク・ダール氏は「供給過剰への懸念はいずれ現実となる。とりわけロシア産原油や石油製品の供給が、既存の制裁を回避する動きを強めればなおさらだ」と指摘。同氏は、ブレント先物が2026年末にかけて1バレル60ドルの水準へ下落するとみている。

  この日は石油製品の下落も市場全体を圧迫した。先週に2021年5月以来の安値を付けていたガソリン先物は、ニューヨーク市場で2%安となった。

  ロシアからの供給動向に注目が集まる一方で、ウクライナとロシアの間で和平合意が成立するかどうかも引き続き焦点となっている。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前営業日比1.20ドル(2%)安の1バレル=58.88ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限も2%下げて62.49ドル。

  金相場は債券利回りが上昇する中で、下落。金利の上昇は利息を生まない金の投資妙味を相対的に下げる。今週のFOMC会合での利下げがほぼ確実視される中、市場参加者は来年の米金融政策の手がかりを探っている。

  金相場は今年、地政学的リスクの高まりを受けた逃避需要や、各国・地域中銀による積極的な金購入など複数の要因を背景に大きく上昇してきた。中国人民銀行は11月も金保有を増やし、13カ月連続の金準備積み増しとなったことが7日公表のデータで明らかになった。

  国際決済銀行(BIS)は四半期ごとの市場動向報告書を発表し、個人投資家が最近の金価格急騰をけん引し、金地金を伝統的な安全資産から、より投機的な資産に変えたと指摘した。

関連記事:金の急騰、伝統的な安全資産から投機的資産に変容-BIS報告書

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比9.86ドル(0.2%)安の1オンス=4187.92ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は25.30ドル(0.6%)安の4217.70ドルで終えた。

原題:Dollar Edges Higher Into Packed Central Bank Week: Inside G-10

US Treasury Yields Hit Multimonth Highs as Focus Shifts to Fed

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Gold, Silver Slip as Bond Yields Climb Ahead of Fed Meeting(抜粋)