▽FOMCが0.25ポイント利下げ、3人が反対票-26年は利下げ1回を予想<bloomberg日本語版>2025年12月11日 at 4:13 JST

  • フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3.5-3.75%に
  • グールズビー総裁、シュミッド総裁、マイラン理事が反対票投じる
パウエルFRB議長
パウエルFRB議長Photographer: Al Drago/Bloomberg

Enda Curran

米連邦公開市場委員会(FOMC)は9、10両日に開いた定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定した。利下げは3会合連続。また2026年については、利下げ1回との見通しを維持した。

  FOMCは賛成9、反対3で利下げを決定。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3.5-3.75%となった。また声明の文言を微調整し、次の利下げ時期に関して不確実性が強まっていることを示唆した。

FOMC声明:十分な準備預金供給を継続へ、米財務省証券の購入開始する

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、会合後の記者会見で、雇用への悪影響を抑えるための措置は十分講じた一方、金利水準は物価圧力を抑制し続けるだけの十分な高さを維持しているとの考えを示唆した。

  「こうした政策スタンスの一段の正常化は、関税の影響が一巡した後、労働市場の安定化に寄与するとともに、インフレ率が2%に向けて再び低下基調をたどることを可能にするだろう」とパウエル氏は述べた。

  次の政策変更が利下げになるのは既定路線なのかとの質問に対して、パウエル氏は明言を避けつつ、利上げを基本シナリオと見なしている当局者はいないとも述べた。

  反対票の存在と金利見通しは、労働市場の弱さと根強いインフレのどちらが、米経済にとってより大きなリスクなのかを巡る、当局者間にある見解の相違を浮き彫りにしている。

  10月会合の声明では「追加的調整を検討する」際に考慮する要素を記していたが、今回の声明で「追加的調整の程度とタイミングを検討する」とし、昨年12月の文言に戻した。

  FOMCの政策決定を受けてS&P500種株価指数は上昇。パウエル議長の会見中には上げを拡大し、最高値付近で引けた。一方で米国債利回りは低下。ドルも下げ、円は対ドルで一時155円80銭に上昇した。

  FOMC会合で3人の反対票が出たのは2019年以来。政策スタンスの両端から異論が出る格好となった。シカゴ連銀のグールズビー総裁とカンザスシティー連銀のシュミッド総裁は、金利据え置きを主張。一方でマイランFRB理事はより大幅な0.5ポイントの利下げを主張した。

  FOMCはまた、銀行準備の「十分(ample)」な供給を維持するため、年限が短めの米財務省証券の新規購入を承認した。

  ここ数週間は、政策当局者間の見解の相違が表面化していた。10月の前回利下げ後、複数の当局者がインフレの根強さに警戒感を示し、追加利下げに慎重な姿勢を示した。一方、労働市場の軟化に注目し、少なくとも1回の追加利下げが必要だとする当局者もいた。

  FOMCでは6月会合を最後に、全会一致で金利政策を決定していないが、相反する経済データを見ればその説明がつく。

  失業率は9月に4.4%と、6月の4.1%から上昇。一方、FRBが重視するインフレ指標でみた物価は、9月に前年比2.8%上昇し、FRBの目標である2%をなお大きく上回っている。

  また政府機関の閉鎖が重要統計の公表を遅らせ、政策見通しを一段と複雑にしている。

  FOMC内の見解の相違や経済の不確実性にもかかわらず、市場は利下げを予想していた。パウエル議長に近いとされるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、11月21日の講演で12月利下げへの支持を示唆したためだ。

新たな見通し

  最新の経済・金利予測では、当局者は中央値で26年と27年にそれぞれ1回ずつの利下げを予想。ただ金利見通しには依然として大きなばらつきが見られた。26年を通じて金利据え置きを見込んだ当局者が7人いた一方、少なくとも2回の利下げ支持を示唆したのは8人だった。

12月FOMC会合では反対票が増加

Source: Federal Reserve

  当局者は26年の成長率予測を2.3%とし、9月時点の1.8%から上方修正。インフレ率については2.4%への低下を予想。9月時点では2.6%と見込んでいた。

  記者会見でパウエル議長は、関税の影響は来年薄れるとの見通しを示した。

  「新たな大規模関税の発表がないと仮定すれば、財のインフレは1-3月(第1四半期)にピークを付けるだろう」とパウエル氏は述べた。

  FRBはまた、12月12日から新たに財務省証券を購入することを承認した。翌日物資金調達市場の流動性を支える手段として、ウォール街の多くの金融機関がこの措置を予想していた。

  FRBは、12日から月額400億ドル(約6兆2500億円)の財務省短期証券(Tビル)の購入を開始すると発表。FRBのバランスシートの引き締めに伴って減少した準備金残高を再び積み上げる狙いがある。

原題:Fed Cuts Rates With Three Dissents, Projects One Cut in 2026(抜粋)

▽ドルが9月以来の大幅安、米利下げで-来週発表のCPIと雇用統計を注視<bloomberg日本語版>2025年12月11日 at 9:15 JST

  • ブルームバーグ・ドルスポット指数0.4%下落、9月16日以来の大幅安
  • CPIと雇用統計がドルを左右する「より重要な材料」-Wファーゴ
Fed Chair Powell Holds News Conference Following FOMC Rate Decision
Photographer: Al Drago/Bloomberg

Anya Andrianova

ドルが約3カ月ぶりとなる大幅な下げを記録した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は10日、労働市場のリスクを強調し、インフレ懸念を和らげる姿勢を示した。

  ブルームバーグ・ドルスポット指数は0.4%安で取引を終え、9月16日以来の大幅な下げとなった。米連邦公開市場委員会(FOMC)が9、10両日に開いた定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げることを決定したことを受けた。ドルは先進国通貨に対して全面安の展開となり、特にスイスフランが0.8%、英ポンドが0.7%それぞれ上昇した。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「パウエル氏は以前の見通しと比べて労働市場についてあまり楽観的ではなかった」と指摘。パウエル氏の労働市場とインフレに関する発言がドル安につながったと述べた。

  市場予想通りの利下げを背景に、ドルは10月下旬以来の安値を付けた。市場は依然として2026年に2回の追加利下げを織り込んでいる。来週は米史上最長となった政府閉鎖の影響で延期されていた11月の米消費者物価指数(CPI)や雇用統計など、重要指標の発表が相次ぐ。米金融当局は追加利下げを巡る不確実性を示唆したものの、来年については0.25ポイントの利下げが1回行われるとの予測を維持した。

  ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は、10日の利下げ決定よりも来週発表のCPIと雇用統計がドル相場の方向性を左右する「より重要な材料」になると指摘した。

  マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は、市場は「かなりタカ派的なトーン」を想定していたが、パウエル議長はよりハト派寄りだったと述べた。

原題:Dollar Posts Its Worst Day Since September After Fed Cuts Rates(抜粋)