Yasutaka Tamura

アクティビスト投資家の野村絢氏は、SBI新生銀行の上場に伴い最大100億円をSBIホールディングス(HD)から受け取る予定だ。野村氏が1月にSBI新生銀株を売却した際に合意していた。

  348ページに及ぶ新規株式公開(IPO)の目論見書に記載があった。SBI新生銀が東京証券取引所に上場する17日の株価に応じ、最大100億円が野村氏に追加的に支払われるという。ブルームバーグが入手した海外投資家向けの英文資料には該当する記述はなかった。

SBI Shinsei Bank Ahead of IPO
SBI新生銀のロゴPhotographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  SBI新生銀を巡っては、2023年に非上場化した際、株式公開買い付け(TOB)に応募しなかった株主から強制的に買い取った価格が低過ぎるとして、米シタデルを含む海外投資家が東京地裁に申し立てを行っている。買い取り価格は1株当たり2800円だった。

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  野村氏はコメントを控えた。SBI新生銀の広報担当者は、目論見書に記載した通りでそれ以上のコメントはないとし、今後も適切に情報を開示するとした。目論見書によると、SBI新生銀の負担はない。

  SBIHDの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、守秘義務があるため目論見書以上の内容の回答は差し控えるとした。英文資料に該当する記述がないことは、日本の上場制度で有価証券届出書に記載が求められるためだとした。

  目論見書では、野村氏と、同氏の父で著名アクティビストの村上世彰氏の関連ファンドであるエスグラントコーポレーションがTOB価格を上回る水準でSBI新生銀株を売却していたことも明らかになった。

Key Speakers At The 2018 Milken Conference
野村絢氏Photographer: Patrick T. Fallon/Bloomberg

  エスグラントはSBI新生銀株を上場廃止直前に2800円で大量に取得していた。目論見書によると、エスグラントはその後24年9月に保有株の一部を320億円でSBI新生銀に売却。株式併合・分割前に換算すると、1株当たりの売却価格は約3200円に相当する。

  エスグラントの保有株は24年11月に野村氏へ移り、25年1月にはSBIHDが約470億円で全て買い取った。野村氏の売却価格は1株当たり約3500円となる計算だ。