• S&P500種は50日移動平均を下回る、18日発表CPIはデータの質懸念も
  • 米国債は総じて下落、ドル指数は下げ縮小-原油と金は反発
SEC Chairman Paul Atkins Rings The Opening Bell At The New York Stock Exchange
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

17日の米金融市場では主要株価指数がそろって下落。バリュエーションの高いテクノロジー株や暗号資産(仮想通貨)が売られた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6721.43-78.83-1.16%
ダウ工業株30種平均47885.97-228.29-0.47%
ナスダック総合指数22693.32-418.14-1.81%

  人工知能(AI)関連株の先行きに懐疑的な見方が広がっていることを背景に、テクノロジー銘柄が軟調だった。エヌビディアは一時4.2%下げた。

  S&P500種株価指数は50日移動平均線を下回り、下げが加速した。ナスダック100指数は1.9%安で引けた。

  引け後に決算を発表した米半導体大手マイクロン・テクノロジーは、12月-2026年2月(第2四半期)について強気の見通しを示した。

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  大手テクノロジー株は長年にわたり、楽にもうけられる投資先と考えられてきたが、高いバリュエーションや野心的なAI関連投資を正当化し続けられるのか懸念が強まっている。

  クレセット・キャピタル・マネジメントのジャック・エイブリン氏は「AIは依然として市場を特徴付ける投資テーマだが、疲れの兆しも見え始めている」と指摘。「セクターのバリュエーションは高く、インフラ投資は前例のない規模に達しており、熱狂ぶりは過去の投機的サイクルに似ている」と述べた。

  LPLファイナンシャルのアダム・ターンクイスト氏は「テクノロジー株の比重が高いナスダック100指数は、11月の安値から回復してきていたが、その勢いが失われ始めた。先週発表されたブロードコムとオラクルの決算が失望を誘い、AIブームに水を差す格好となったためだ」と指摘。

  「テクノロジー株から他銘柄へのローテーション圧力も高まっており、ポジション動向に関するデータでは小型株やバリュー株への需要増が示されている」と述べた。

  小型株中心のラッセル2000指数は、11月20日の直近安値から約8%上昇した。

  バーンセン・グループのデービッド・バーンセン氏によれば、現在の株式相場は調整局面ではなく、典型的なローテーション期にある。バリュエーションが過度に高くなったテクノロジー株から資金が流出するという、長らく待たれていたこの局面はまだ初期段階だと指摘する。 

  「大型ハイテク株の極端にゆがんだバリュエーションはさらに進み、宴はしばらく続く可能性がある。それでも当社は、エネルギーや生活必需品、ヘルスケアへのエクスポージャーを高めてローテーションの流れに乗る方が安全性が高いと考える」と述べた。

  これに対し、ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「投資家が他のセクターに目を向けたいと思っても、結局はハイテクセクターが今後2週間の相場を左右することになる」と指摘。「S&P500種とナスダック100におけるテクノロジー株の比重を踏まえれば、これは避けようがない」と述べた。

  キャピタル・エコノミクスのジョン・ヒギンズ氏は「AIラリーは終わっておらず、2026年いっぱい続くと予想する」と発言。特に米国や一部アジア諸国といったAIへのエクスポージャーが高い株式市場で、力強い伸びが見込まれると述べた。

  市場では18日に発表される11月の米消費者物価指数(CPI)も意識されている。ただ、政府閉鎖の影響による混乱で、データの信頼性は通常より劣るとの見方がある。

  注目度が高かった16日の米雇用統計に対し、市場の反応は限定的だった。労働市場は減速しているが大きく崩れていないといった状況を示唆したが、連邦政府閉鎖の影響を受け、ノイズも多かった。

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「雇用統計データの質に関する懸念は、CPIにも当てはまる」と指摘。「最終的にどういった数字が出ても、懐疑的な見方が一定程度は残る」とし、CPI発表後の市場の反応も、雇用統計後と同じく限定的になるとの見方を示した。 

国債

  米国債相場は総じて下落。連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が追加利下げをあらためて支持したことで、短・中期債利回りが低下(国債価格が上昇)する場面もあった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.83%1.20.25%
米10年債利回り4.15%0.60.14%
米2年債利回り3.48%-0.4-0.12%
米東部時間16時39分

  次期FRB議長候補の一人である同理事は、現行の政策金利は中立水準を最大100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回っているとの認識を示し、緩和に前向きな姿勢を示した。

  一方で、インフレ高止まりを理由に利下げ実施を「急ぐ必要はない」との見解を示した。

関連記事:ウォラーFRB理事、追加利下げ支持-「急ぐ必要はない」とも表明 (1)

  SEIインベストメンツで債券投資を統括するショーン・シムコ氏は「FRB内で意見が分かれているとしても、インフレが加速しない限り、市場はハト派的な見通しを受け入れるだろう。利回り低下の動きが進む公算が大きい」と述べた。

  この日実施された米20年債入札(銘柄統合)は最高落札利回りが4.798%と、入札前取引(WI)水準の4.799%に比べて若干強い結果となった。

  それでも最高落札利回りは、8月以降で最も高かった。追加利下げがインフレ加速につながるとの懸念を背景に、米長期債利回りは今月、短期債利回りより大きく上昇している。

外為

  ニューヨーク外国為替市場では、ドル指数が上げを縮小する展開。ウォラー理事が追加利下げを支持する姿勢をあらためて示したことに反応した。

  円は対ドルで下落し、一時0.6%余り安い1ドル=155円75銭を付けた。日銀の金融政策決定会合を控え、軟調に推移した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1207.312.480.21%
ドル/円¥155.68¥0.960.62%
ユーロ/ドル$1.1741-$0.0006-0.05%
米東部時間16時39分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。欧州時間帯に一時0.4%高まで上昇し、ニューヨーク時間に上げ幅を縮小した。

  ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は前日の米雇用統計について「表面的には弱い内容だったが、細部を見ると、今後数回の会合でFRBがハト派姿勢に傾くほど弱い内容にはみえなかった」と指摘。

  「ウォラー理事の発言を除けば、市場が米国の追加利下げを織り込む明確な材料は乏しい。このため市場は雇用統計の直後に売ったドルを買い戻す動きとなった」と述べた。 

  FHNフィナンシャルのクリス・ロウ氏は「市場の観点からすれば、ウォラー理事が最も望ましい。FRB内外でその人物像がよく知られており、信認がある上に、コンセンサスの形成方法を知っている」と述べた。

  ポンドは他の主要通貨の多くに対して下落した。11月の英CPIが予想以上に鈍化し、イングランド銀行(英中央銀行)が18日に利下げを行うとの観測が強まった。

原油

  原油先物は反発。ウクライナ和平案をロシアが拒否した場合に備え、トランプ政権が新たな制裁措置を準備しているほか、ベネズエラ沖で制裁対象タンカーの封鎖に米国が動いていることが意識された。

  事情に詳しい関係者によると、米政府はロシアの石油を秘密裏に輸送する「シャドーフリート(影の船団)」や、その取引の仲介業者に制裁を科す可能性を検討している。

関連記事:米、新たな対ロシア制裁を用意-プーチン氏が和平合意を拒否なら

  また米国がベネズエラ政府への圧力を一段と強めるなか、トランプ大統領は前日、ベネズエラを出入りする「制裁対象の石油タンカー全ての完全かつ全面的な封鎖」を命じるとSNSに投稿した。

  地政学リスクが意識されて原油相場は上昇したものの、影響は限られる可能性がある。ベネズエラの産油量は世界供給の1%に満たず、その大半は中国向けだ。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「市場の反応は限定的だ。影響は日量50万バレル程度とみられ、供給過剰という全体像を変えるほどではない」と述べた。

  原油は年間ベースで下落に向かっており、来年も供給が需要を上回る見通しだ。供給過剰は新型コロナ禍後の最大に達すると国際エネルギー機関(IEA)は予測している。  

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前日比67セント(1.2%)高の1バレル=55.94ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.3%高の59.68ドル。

  金相場は反発。投資家は米国のインフレ指標とベネズエラ情勢の緊迫化を注視している。金スポット価格は一時1オンス=4350ドルに接近。前日は小幅安と、それまでの5営業日続伸が途切れていた。

  18日に発表される11月の米消費者物価指数(CPI)では、金融当局の追加利下げ姿勢にどの程度の影響を与えるか注目されている。

  ベネズエラ情勢も金相場の支援材料となっている。BNPパリバのシニア商品ストラテジスト、デービッド・ウィルソン氏は「緊張が徐々に高まっているようだ」と指摘。さらにインフレ圧力から米株動向、世界的な成長減速まで、金相場を支える要因が重なっているとし、金価格は来年中に5000ドルまで上昇する可能性があると述べた。

  金スポット価格は年初来で約60%上昇し、年間ベースでは1979年以来の大幅高に向かっている。各国・地域中銀による金準備積み増しや、国債や主要通貨からの資金シフトが背景にある。地政学的な緊張の高まりも、安全資産としての金の投資妙味を強めている。

  スポット相場はニューヨーク時間午後2時現在、前日比32.93ドル(0.8%)高の1オンス=4335.25ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は41.60ドル(1%)高の4373.90ドルで引けた。

原題:Wall Street Hit by Tech Rout as AI Winners Tumble: Markets Wrap

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