▽連立与党が一定の主導権…補正予算案原案通り可決、衆院過半数確保で交渉力高まる<読売新聞オンライン>2025/12/18 08:00

会期末を迎え閉会中審査の手続きなどが行われた衆院本会議(17日、国会で)=米山要撮影

荒木香苗、伊福幸大

 17日に閉会した臨時国会では、自民党と日本維新の会との連立与党が一定の主導権を取り戻し、2025年度補正予算を原案通りに可決させた。無所属議員が自民会派に加わったことで衆院での過半数を確保でき、野党との交渉力が高まったためだ。高市首相(自民総裁)は政権基盤の安定化に向け、国民民主党の取り込みも図っている。

(荒木香苗、伊福幸大)会期末を迎え閉会中審査の手続きなどが行われた衆院本会議(17日、国会で)=米山要撮影

 首相は17日の記者会見で「物価高への対応を最優先に果敢に働いてきた。補正予算の成立で国民との約束を果たすことができた」と誇った。

 補正予算を巡っては、国民民主と公明両党の要望を事前に受け入れ、原案への賛成につなげた。原案通りの予算成立は、衆参両院で与党が過半数を握っていた24年度予算以来となった。政府・与党が国民民主と公明両党の賛成取り付けに力を注いだのは、参院では少数与党との情勢に加え、「協力関係を深め、26年度予算案の成立を確実にしたい」(自民幹部)との狙いがあったためだ。

 国民民主については、政府・自民内に、将来的な連立参加を期待する向きが多い。首相は記者会見で連立拡大について問われ、直接の回答は控えつつ、「政治の安定なくして力強い経済政策を推進していくことはできない」と強調した。首相らは、所得税の非課税枠「年収の壁」の引き上げを通じ、国民民主との距離を縮めることを目指している。

 公明に関しても、政府・自民としては連立復帰の余地をできるだけ残しておきたいとの事情があり、関係維持に腐心した。

 自民内では「臨時国会は満点だ」との評価もあるが、維新がこだわる衆院議員定数削減法案を巡り、連立内で不協和音も生じた。来年1月召集の通常国会での成立を目指すとしたものの、先行きは不透明で、火種となる可能性がある。

▽高市首相、日中対話「あらゆるレベルでオープン」…トランプ米大統領との会談「できるだけ早期に」<読売新聞オンライン>2025/12/17 22:40

臨時国会が閉会し、記者会見する高市首相(17日、首相官邸で)=米山要撮影

 


臨時国会が閉会し、記者会見する高市首相(17日、首相官邸で)=米山要撮影

首相記者会見のポイント

高市首相は17日、首相官邸で記者会見を開き、日中関係に関し、「首脳間を含め、あらゆるレベルでの対話はオープンだ」と述べ、関係の安定化に努める意向を表明した。衆院解散・総選挙については「目の前でやらなければならないことが山ほど控えており、考えている暇がない」とし、年内は行わない考えを示した。

 記者会見は臨時国会の閉会を受けて行われた。首相は、台湾有事は存立危機事態になり得るとした国会答弁について「日本政府の従来の立場を変えるものではない」と強調した。中国が答弁を理由に緊張関係を高めていることを踏まえ、中国を含む国際社会に対し「様々なレベルで粘り強く説明していく」と訴えた。

 日中両国の関係が冷え込んでいる状況を念頭に、レアアース(希土類)を含むサプライチェーン(供給網)の強化を急ぐ方針を掲げた。

 外交関係では、米国のトランプ大統領との会談を「できるだけ早期に行いたい」と述べた。

 自民党と日本維新の会が国会提出した衆院議員定数削減法案を巡っては、「(来年の)通常国会で野党のご理解を求め、成立を期したい」と説明した。

 2025年度補正予算については「強い経済、強い外交安全保障の実現について一定の方向性を出せた」と語った。首相は、19日に26年度与党税制改正大綱を取りまとめ、26日に26年度当初予算案を閣議決定する日程も明らかにした。

臨時国会が閉会、定数削減法案など継続審議

 第219臨時国会は17日、58日間の会期を終え、閉会した。与党が提出した衆院議員定数削減法案と企業・団体献金の見直しを巡る与野党の3法案はいずれも継続審議となった。

 衆参両院は同日の本会議で会期末の手続きを行った。定数削減法案は継続審議とするために衆院政治改革特別委員会に付託された。今国会は10月21日に召集され、2025年度補正予算などが成立した。

▽維新はフラストレーションの2カ月 自民にうごめく「依存」への反発、国民民主取り込みも<産経ニュース>2025/12/17 23:38

大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会代表)
大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会代表)

与党入りして初の国会に臨んだ日本維新の会にとってフラストレーションがたまる2カ月だった。

「一人芝居」の印象に憤り

維新が求める衆院議員の定数削減について、連立合意では臨時国会で「法案を提出し、成立を目指す」と明記された。自民は難色を示したが、維新には国会議員が身を切らなければ「痛み」を伴う改革は進められないとの「信念」がある。

今月5日の法案提出にはこぎつけたが、野党の反発もあり審議入りできないまま来年に持ち越され、維新の「一人芝居」の印象だけが残った。維新幹部は「口約束に終わらせないよう『成立を目指す』との文言を入れたはずだ」と憤る。

公明党の連立離脱を受けて急ごしらえで成立した自維連立だが、今となっては高市早苗首相には「維新こそが最大の高市派」(維新幹部)との思いがある。17日の記者会見で通常国会での定数削減法案の成立に改めて意欲を表明し、維新への配慮を見せた。

首相の「配慮」にいらだつ自民ベテラン

維新の不満を和らげる工夫は16日にもみられた。首相は国会内で開かれた維新の吉村洋文代表(大阪府知事)との会談に維新のイメージカラーであるグリーンのジャケットとシャツを着て臨んだ。首相は耳元を指さし「イヤリングも(グリーン)」と笑った。

吉村氏との会談場所も維新の国会控室を選んだ。当初は首相官邸が想定されていたが、維新側への「配慮」を形にするため、首相が維新控室に足を運ぶよう求めた。

「首相を自分たちの部屋に呼びつけるとは無礼だ」と自民ベテランが語るように、首相の「維新依存」を面白く思わない勢力は自民内に少なくない。一部は政権内での維新の影響力を弱めるため国民民主党を連立に引き込もうとうごめく。大詰めを迎える令和8年度税制改正を巡り、自民は国民民主が訴える年収の壁引き上げに向けて調整を続ける。

参院で15議席を持つ参政党は政策ごとの協力には前向きだ。自維政権が掲げる積極財政やスパイ防止法などに共鳴する。

自維連立の不協和音は増幅するのか。それとも安定基調に乗るのか。あるいは連立拡大もあり得るのか。それぞれの思惑が複雑に交錯しながら新しい年を迎えようとしている。(千田恒弥)