• 前日のマイクロン強気見通しも強材料、ハイテク7社の指数は2%高
  • 円は対ドルで上昇、一時0.3%高の1ドル=155円29銭-日銀会合を控え
New America Acquisition I Corp. IPO At The New York Stock Exchange
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

18日の米株式相場は反発。米消費者物価指数(CPI)が予想外に鈍化したことを受けて2026年の米利下げ観測が強まり、相場を押し上げた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6774.7653.330.79%
ダウ工業株30種平均47951.8565.880.14%
ナスダック総合指数23006.36313.041.38%

  11月のCPI統計は政府閉鎖の影響で留意すべき点もあるものの、市場関係者はコアCPIの前年同月比が2021年3月以来の低い伸びにとどまったことを好感した。

関連記事:米コアCPIは予想外に鈍化、4年ぶり低い伸び-政府閉鎖で算出には制約

  前日の引け後に決算を発表したマイクロン・テクノロジ-が、12月-2026年2月(第2四半期)について強気の見通しを示し、人工知能(AI)関連への旺盛な需要があらためて意識されたことも株高につながった。

  プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は「11月のインフレが予想を下回ったことは、米連邦準備制度理事会(FRB)のハト派に1月利下げへの強力な論拠を与えた」と指摘。

  「ゆがみも否定できないものの、前年同月比ベースでの急激なインフレ率低下を踏まえると、FRBには失業率上昇に対応しないという言い訳はほとんど残されていない」と述べた。

  同氏は1月の連邦公開市場委員会(FOMC)までには、さらに重要なデータも出てくるが、今週発表された指標は明確にハト派寄りの材料となったと指摘。2026年の米利下げは2回との予想は変えていないが、この日のCPIを受け、利下げが年後半でなく前半に実施される可能性が高まったと述べた。

  S&P500種株価指数は5営業日ぶりに上昇。ハイテク7社「マグニフィセント7」に関する指数は2%高で引けた。マイクロン株は一時17%近く上昇した。

  インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は、CPIとマイクロンの業績見通しが18日の相場反発につながったと指摘した。

  モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「FRBは様子見姿勢を取ると言っているが、インフレが正しい方向に動いていることを確認できた」と指摘。「インフレ率は依然として目標を上回っているかもしれないが、今回のデータにより、追加利下げに向けた道筋がわずかに広がった」と述べた。

  一方、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのケイ・ヘイグ氏は、今回のインフレ指標はデータのノイズが大きいため、FRBの判断に影響を与えることはないだろうと指摘。12月分のCPIがより正確なインフレ指標になると述べた。

  eToroのブレット・ケンウェル氏は、11月のCPIは確かにノイズが多いが、インフレに関して過去6カ月とは異なる状況が生まれるとの希望を与えるものだと指摘。今後のデータでそれを確認する必要があるとも付け加えた。

  同氏は「これはインフレ指標の一つに過ぎず、FRBが最も重視する指標ではないが、インフレ懸念の後退でFRBが今後、緩和姿勢を強める可能性がある」と話した。

米国債

  米国債相場は上昇(利回り低下)。米CPIが予想を下回る伸びにとどまったことを受け、FRBが来年少なくとも2回の利下げを実施するとの見方が強まった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.80%-2.3-0.48%
米10年債利回り4.12%-3.1-0.75%
米2年債利回り3.46%-2.1-0.60%
米東部時間16時44分

  金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下。3.43%を割り込み、10月以来の低水準となった。10年債利回りも一時5bp余り低下して4.1%を付けた。

  ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディ・ガロマ氏はCPIについて「債券にとって好材料だ。インフレは粘着的と主張してきた市場関係者の気持ちをなだめる内容となった」と指摘。FRBは「追加利下げに扉を開く必要がある」と述べた。

  一方、この日の米国債相場上昇は限定的との見方もある。政府閉鎖がデータ収集に影響を与え続けていることや、来月に雇用とインフレの指標が発表されれば全体像がもっと見えやすくなるといったことが背景。

  ナティクシス・ノース・アメリカの米金利戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は「労働市場とインフレのデータが実際にどういった状況にあるかを確認するため、次の一連の指標が出るまで市場はやや慎重姿勢を取る」と予想した。

外為

  ニューヨーク外国為替市場で、ドル指数は前日とほぼ変わらず。CPI発表後に一時0.2%下げたが、その後に持ち直した。

  円は日銀の金融政策決定会合を控えて、対ドルで上昇。一時0.3%高の1ドル=155円29銭を付けた。

  同会合では政策金利を30年ぶり高水準である0.75%に引き上げることが、ほぼ確実視されている。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1207.460.120.01%
ドル/円¥155.57-¥0.12-0.08%
ユーロ/ドル$1.1723-$0.0018-0.15%
米東部時間16時44分

  日銀の植田和男総裁が記者会見で中立金利の前提を変更するかについて、三井住友信託銀行ニューヨークグローバルマーケッツ部の山本威調査役は「前提は変えず、引き上げ余地がまだあるというような形で、今後複数回の利上げを行う可能性を示唆する」と予想。

  また、日銀会合が終了すれば年内のイベントはおおむね消化してボラティリティーも低下し、再び円安の動きが出てくるとみて、年末水準は156円台になるとの見方を示した。

  TDセキュリティーズのストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏はCPI発表後の相場について、「政府閉鎖によるノイズとデータ収集に関する疑問のために反応が抑制された」と指摘。

  「今回のリポートは著しく予想外だったものの、マクロ経済に対するFRB当局者の認識を大きく動かすことにはならないだろう」と述べた。

  ユーロは対ドルで下落。 欧州中央銀行(ECB)はこの日、政策委員会会合を開き、市場予想通り中銀預金金利を2%に維持すると決定した。

関連記事:ECB、中銀預金金利2%で据え置き-関係者「利下げ局面終了の公算」

  MUFGのヘンリー・クック、リー・ハードマン両氏は「最近の動向を踏まえ、ECBが来年最後にもう1回、25bpの利下げを行うとの予想を撤回した」とリポートで指摘した。

  イングランド銀行(英中央銀行)は同日、政策金利を0.25ポイント引き下げ、3.75%にすると発表した。利下げは8月以来、3会合ぶり。ただ、今後の利下げのペースと規模はどうなるか分からないとくぎを刺した。

  ポンドはドルに対して小幅に上昇した。

関連記事:英中銀が0.25ポイント利下げ決定、今後のペースは鈍化と総裁示唆 (4)

原油

  ニューヨーク原油相場は小幅続伸。供給過剰見通しで下押しされてきた相場を、ベネズエラとロシアを巡る地政学リスクが支える格好となった。

  原油が豊富なベネズエラで米国が軍事行動に踏み切る可能性が浮上し、供給不安が高まっている。トランプ大統領は16日、ベネズエラを出入りする制裁対象タンカーの封鎖を命じたが、テレビ演説ではその後の行動計画について具体的な説明は避けた。

  米国はまた、ロシアがウクライナとの和平合意を拒否する場合に備え、ロシアのエネルギー部門を標的にした新たな制裁を準備している。

  BOKフィナンシャル・セキュリティーズのトレーディング部門シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「和平合意に至らなければ、ロシアへの制裁がエスカレートし、供給が急速に引き締まる可能性がある」と分析。「これにベネズエラ原油の封鎖も重ねた場合、原油価格は現在の水準ではやや割安だとの考えも十分あり得る」と述べた。

  世界的に供給が需要を上回る中、原油はこのままいけば年間ベースで2018年以来最大の下げとなる。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は前日比21セント(0.4%)高の1バレル=56.15ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は0.2%高の59.82ドル。

  金スポット相場は小幅に下落。予想外に鈍化した米CPIが意識される中、過去最高値付近での推移となった。

  金スポットは1オンス=4340ドル近辺で推移。一時4370ドル超に上昇する場面もあったが、その後上げを失った。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は先週、3会合連続となる利下げを決定。利息を生まない貴金属投資にとっては追い風となる。ただ、2026年に向けた金融緩和ペースについてはFOMCは明確な姿勢を示していない。市場では、1月の利下げ確率を約25%、4月までではほぼ完全に織り込んでいる。

  地政学的な緊張の高まりも貴金属の魅力を高める要因となる。ベネズエラ情勢も今週、価格を押し上げた。トランプ大統領は16日、ベネズエラを出入りする「制裁対象となっている全ての石油タンカーの完全かつ全面的な封鎖」を命じるとSNSに投稿した。

  ペッパーストーン・グループのディリン・ウー氏は「実質利回りの方向性が貴金属を押し上げる効果を高めている」と指摘。「地政学的な不透明感継続と年末の流動性低下を加えて考えた場合、貴金属はポートフォリオ安定化の役割を取り戻しつつあるといえる」と述べた。

  スポット相場はニューヨーク時間午後2時現在、前日比6.75ドル(0.2%)安の1オンス=4331.58ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は9.40ドル(0.2%)下げて4364.50ドルで引けた。

原題:Stocks Stage Comeback as CPI Fuels Treasury Gains: Markets Wrap

Treasuries Gain as US Inflation Data Bolsters Fed Rate-Cut Bets

Dollar Steady as Yen Gains Ahead of BOJ Rate Move: Inside G-10

Oil Holds Gains With Support From Tensions in Venezuela, Russia

Gold Hovers Near Record After CPI as Platinum Extends Rally(抜粋)