• 佐倉工場に続く次の投資計画は来年5月公表の可能性
  • AIバブルとの懸念一蹴、「それなりの実需とリターン」
フジクラの岡田社長(15日・都内)
フジクラの岡田社長(15日・都内)Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

Yuki FurukawaEru Ishikawa

フジクラの岡田直樹社長は、急速に広がる生成人工知能(AI)の影響で、データセンター向けの光ケーブルや光コネクタの需要が今後も高水準で推移するとの見通しを示した。現在策定している2026年度からの3カ年中期計画に、新たな設備投資を盛り込む意向を16日のインタビューで明らかにした。

  需要をけん引しているのは、米国のIT大手によるハイパースケールと呼ばれる超大型データセンターへの積極投資だ。岡田氏は、「生成AIは確実に収益化(マネタイズ)につながっている」と語った。過熱を懸念する声には、「それなりの実需とリターンがある」と述べ、AIバブルとの見方を一蹴した。

  10月にトランプ米大統領が来日した際には、日本側が総額5500億ドル(約85兆円)規模の対米投資で枠組みを提示し、AI関連のインフラ整備や電源開発が重点分野とされたことで、関連企業への注目が高まっている。

  こうした流れはフジクラにとっても追い風となっている。光ケーブルの需要は供給を大きく上回り、2026年3月期の営業利益見通しはすでに2度引き上げられた。円安も業績を後押ししており、岡田氏は「多少上乗せはあるかもしれない」と述べ、さらに上振れの可能性に言及した。

  同社の光ケーブルの特徴は、光ファイバーを網状に組み、柔軟性と高密度を両立させた戦略商品「スパイダー・ウェブ・リボン(SWR)」を実装する点だ。省スペース化に貢献するため、ほぼすべてのハイパースケーラーと取引関係を持つと岡田氏は話す。

  一方で、急増する需要に生産体制が追いつかず、供給が課題となっている。岡田氏は「われわれのキャパシティーの問題で、顧客需要に全て応え切れていない」と説明。8月に千葉県佐倉市に光ファイバーの新工場建設を発表したが、日米政府のAIインフラ後押しもあり、「追加のキャパシティーアップが必要だろう」との見方を示した。佐倉工場に続く投資計画については、来年5月に何らかの形で公表する可能性を示唆した。

  SMBC日興証券アナリストの山口敦氏は4日のリポートで、フジクラの目標株価を1万3100円から2万1000円に引き上げた。光ケーブルの供給制約による成長鈍化懸念が株価に影響しているが、光コネクタの成長が評価されれば、再び持ち直す可能性があるとの見通しを示している。

生みの親

  同社は、新型コロナウイルスの感染拡大により、20年3月期には業績が大きく落ち込み、経営危機に直面したことがある。20年末の株価475円を基準にすると、18日終値で株価は約34倍に上昇し、飛躍的な成長を遂げた。従来30%としていた配当性向は、11月に40%に引き上げるなど、株主還元策の強化にも乗り出した。

  将来に向けた技術の研究開発にも余念がない。高市早苗首相は核融合エネルギーの実用化に意欲を示しており、30年以上にわたり核融合炉に使われる高温超電導線材の研究開発に取り組んできたフジクラにとって、この動きは大きな追い風となる可能性がある。

  岡田氏は、核融合炉の実用化が30年代後半以降になるとの見方を示した上で、「これが実現すれば世界は変わる」と語り、潜在力に強い関心を示す。核融合炉は、高い安全性に加え原料の安価さなども特徴で、次世代エネルギーとして注目を集めている。

  1986年に入社した岡田氏は、30年以上にわたって光ファイバーの研究開発に関わり、SWR生みの親でもある。2006年、机上に並べた光ファイバーを瞬間接着剤で点付けした光ケーブルを試作したのが始まりだった。岡田氏は「当時はこんなところまでいくとは思わなかったが、感慨深いものがある」と述べた。

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