• 円は一時1.4%安の1ドル=157円78銭、10月上旬以来の下落率
  • 週間ベースではS&P500種が小幅プラス、米国債は11月以来の上昇
US Stocks Drop As Tech Rout Deepens, Hurt By Climbing Yields
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

ニューヨーク時間19日の外国為替市場で、円売りが進んだ。日本銀行の植田和男総裁が金融政策決定会合後の記者会見で、追加利上げに慎重姿勢を示したと受け止められた。

  円は対ドルで一時、前日のニューヨーク終値比1.4%安の1ドル=157円78銭を付けた。1カ月ぶりの安値で、下落率は10月上旬以来の大きさとなった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1210.152.690.22%
ドル/円¥157.75¥2.201.41%
ユーロ/ドル$1.1710-$0.0012-0.10%
米東部時間16時46分

  日銀は30年ぶりの高水準となる0.75%への利上げを決めた。植田総裁は今月1日、次の利上げの際には中立金利についての考えを明示すると述べたが、19日の会見で踏み込んだ発言はなかった。市場では追加利上げの時期は不透明と受け止められ、円安が進んでいる。

関連記事:植田日銀総裁が利上げ継続に意欲、中立金利議論は「肩透かし」

  片山さつき財務相が、円安傾向に歯止めがかからない足元の為替動向について「この半日、数時間は一方的で急激な動きがあるので憂慮している」と発言した後、円はやや下げを縮小する場面もあった。

  同相は主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議をオンラインで開催した後、省内で記者団の取材に応じた。

関連記事:片山財務相「この数時間で急激な動き」、日銀利上げ後の円安けん制

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。この日発表されたミシガン大学の消費者マインド指数が前月に比べて改善した。

関連記事:米消費者マインド指数、12月は小幅上昇-家計巡る懸念くすぶる (1)

米国株

  米株式相場は続伸。大量のオプション取引が満期を迎え、ボラティリティーが高まるとの警戒感もある中、テクノロジー株を中心に上昇した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6834.5059.740.88%
ダウ工業株30種平均48134.89183.040.38%
ナスダック総合指数23307.62301.261.31%

  S&P500種株価指数はこの2日間の上げで、週間での騰落率がプラスに転じた。時価総額の大きい銘柄では、特にエヌビディアの上昇が目立った。オラクルも一時、上昇率が8%を超えた。

  この日は米国株関連で3つのデリバティブ(金融派生商品)満期日が重なる「トリプルウィッチング」にあたり、トレーダーは既存ポジションのロールオーバーか、新規ポジションの構築を迫られた。その影響で出来高は大きく膨らんだ。

  シティグループは想定元本ベースで7兆1000億ドル(約1120兆円)規模のオプションが満期を迎えると指摘した。

  スレートストーン・ウェルスのケニー・ポルカリ氏はこれについて、「長期の投資家にとっては全く重要なことではない」とし、「純粋に機械的な動きに過ぎない」と述べた。

  米株式相場は人工知能(AI)への熱狂を巡る懐疑的な見方や、米連邦準備制度理事会(FRB)がどこまで利下げを進めるのかという懸念から足元で大きく下げていたが、押し目買い狙いの投資家が戻ってきた。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「底堅い経済成長や米利下げ、AIの進展を背景に、米国株に関しては引き続き前向きにみている」と述べた。

  シタデル・セキュリティーズによると、1928年以降、S&P500種は12月最後の2週間に75%の確率で上昇してきた。平均上昇率は1.3%だという。

  ナベリアー・アンド・アソシエーツのルイス・ナベリアー氏は「相場の基調は引き続き良好で、年末にかけてサンタクロース・ラリーが起きても驚きではない」と指摘。「年内を力強く終え、2026年も好調なスタートを切ると予想している」と述べた。

  レゾネート・ウェルス・パートナーズのアレクサンダー・ジュリアーノ氏も「サンタ・ラリーが実現する時間はまだ残されている」と指摘。「株式市場を取り巻く状況は依然堅調で、足元のバリュエーション調整は株式へのエクスポージャーが十分でない投資家に好機を提供している」と述べた。

関連記事:いよいよ「サンタラリー」到来か、強気シグナル点灯-データが示唆

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)がEPFRグローバルのデータを基にまとめたリポートによれば、12月17日までの1週間に米国株には約780億ドルの資金が流入した。これは1年前に記録した過去最高額(822億ドル)以来の規模。背景には、借り入れコストの低下や関税引き下げ、減税が追い風になるとの見方がある。

米国債

  米国債相場は下落。ただ、週間ベースでは11月最終週以来の上昇となった。今週発表された米国の雇用統計と消費者物価指数(CPI)で、来年少なくとも2回の利下げが行われるとの観測が強まった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.83%2.20.46%
米10年債利回り4.15%2.50.62%
米2年債利回り3.48%2.30.68%
米東部時間16時46分

  11月のコアCPIは市場予想に反して伸びが鈍化し、失業率は4年ぶりの高水準に上昇した。

  2026年の米金融政策がより緩和的になるとの見方を市場が織り込みつつあり、10年債利回りは週間で約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りも同じく4bpほど低下した。

  ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はこの日、政策金利について、一段の調整を急ぐ必要はないとの見解を示した。「現時点で金融政策に関して一段と行動を起こさなければならないという切迫感を、個人的には感じていない」とCNBCで話した。

関連記事:NY連銀ウィリアムズ総裁、政策金利のさらなる調整を急ぐ必要ない (1)

  米国債相場はこの発言が伝わった後、下押し圧力がかかる場面があった。

  バークレイズの米金利戦略責任者アンシュル・プラダン氏は「長期に及んだ政府閉鎖の影響で、最新の雇用データは通常よりノイズが大きかった可能性がある」としながらも、「失業率が一段と上昇した場合は、現在織り込まれているより早い時期に利下げを行う論拠となり得る」と述べた。

  同氏は米2年債の保有を勧めている。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は上昇。ただ週間では2週連続の下落となった。供給過剰への懸念が地政学リスクを上回っている。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=56ドルを上回って終了。だが週間では1%を超える下落となった。ウクライナは19日、ロシアの石油を輸送する「シャドーフリート(影の船団)」と関連のあるタンカーを地中海で攻撃。これがこの日の相場を支えた部分もある。

関連記事:プーチン氏、ウクライナ侵攻終結で協議の用意と主張-妥協は拒否 (1)

  こうした地政学リスクはあるものの、世界の主要トレーダーは、原油市場が来年初めに供給過剰に陥るとほぼ確実視している。業界大手トラフィギュラ・グループは、ブレント原油が2026年半ばまで1バレル=50ドル台で推移し、その後回復に向かうとの見通しを示した。

  市場もこうした見通しを織り込みつつある。ポジションは売り持ちが今週、記録的な高水準に増加した一方、買い持ちは減少した。

  カロバール・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「今の市場で優勢なセンチメントは、間違いなく構造的な供給過剰だ」と指摘。「ロシアからベネズエラにかけての地政学的緊張よりも、供給過剰の方がより強く意識されている」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は、前日比0.9%高の1バレル=56.52ドルで終了。1月限はこの日が最終取引日だった。ロンドンICEの北海ブレント2月限は1.1%高の60.47ドル。

  金スポット相場は上昇し、最高値付近で推移。米国のコアインフレ指標が予想外に鈍化し、追加利下げ観測が強まったことが背景にある。利下げは、利息を生まない貴金属にとって追い風となる。

  ただし今回の米消費者物価指数(CPI)統計は、過去最長に及んだ政府機関閉鎖の影響で不明瞭な部分がある。米連邦公開市場委員会(FOMC)は先週、3会合連続となる利下げを決定したものの、今後の緩和ペースについては明確な方向性を示していない。市場は来年1月の利下げ確率を20%と織り込む一方、トランプ大統領は来年の大幅利下げを強く主張している。

  ベネズエラを含む地政学的緊張の高まりも、安全資産としての金の魅力を高めている。トランプ大統領は今週、ベネズエラを出入りする「制裁対象となっている全ての石油タンカーの完全かつ全面的な封鎖」を命じた

  金は、このままいけば年間では1979年以来の好パフォーマンスとなる。背景には、中央銀行の積極的な買いと金連動型上場投資信託(ETF)への資金流入がある。

  ダーン・ストルイヴェン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストは、リポートで、米金利の低下により、ETF投資家が「中央銀行と限られた金地金を巡る競争を始めた」と指摘した。また、「構造的に高い中銀の需要とFRB利下げによる循環的な支援という二つの要因が、今後も金価格をさらに押し上げると予想する」と述べた。

関連記事:金の上昇と原油の下落、利下げや増産で来年も継続へ-ゴールドマン

  スポット相場はニューヨーク時間午後2時14分現在、前日比14.77ドル(0.3%)高の1オンス=4347.39ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は22.80ドル(0.5%)上昇の4387.30ドルで引けた。

原題:Yen Extends Post-BOJ Losses, Supporting Dollar: Inside G-10

Stock Volume Spikes Amid Record ‘Triple Witching’: Markets Wrap

Stocks Climb on Record $7.1 Trillion Options Day: Markets Wrap

US Treasuries Head for First Weekly Gain Since November

Oil Posts Second Weekly Decline as Glut Concerns Dominate

Gold, Silver Near Record Highs as US Data Support Rate-Cut Bets(抜粋)