高市政権の誕生で日本経済をめぐる閉塞感が徐々に薄れている。「責任ある積極財政」が効果を見せはじめているのだろう。ガゾリンの暫定税率廃止、103万円の壁も国民民主党が主張してきた178万円に届いた。メディアは減税規模が小さいと批判する。減税の規模感にしか目がいかない。課税最低限が30年ぶりに引き上げられたのだ。共働き世帯の主婦は、課税逃れの働き控えをする必要がなくなる。労働不足の現状を考えるとこれは朗報である。103万円時代に比べれば手取りが75万円増えても税金はとりあえずかからないのだ。この部分を評価する視点がまるでない。主要メディアの時代に取り残された感覚に辟易する。ただ、問題は残っている。例えば年金の壁だ。従業員が101人以上の企業でアルバイトする主婦は、年収が106万円か月収が8.8万円を超えると、自身で公的年金や健康保険の保険料を支払う義務が生じる。それでも収入を増やした方がいいかどうか迷うだろう。130万円の壁もある。日本経済再生に向けて政府はもうひと働き必要だ。
一方でBloombergは20日に、日本企業が関連するM&Aが今年過去最高を記録したと報じた。安倍政権時代に導入されたコーポレートガバナンス(企業統治)改革が、ここにきて国際的に評価されている。日本企業が絡んだM&Aが総額で3500億ドル(約55兆2000億円)に迫り、過去最高を更新した。同通信社はこうした事態を以下のように紹介している。ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのアジア投資銀行部門トップ、クリストファー・ラスコウスキー氏は、「日本のディールメーキングは極めて多忙だ。日本の担当者と協議する時間はかつてないほど増えている」と述べている。失われた30年、日本の金融市場はパッシングされ続けてきた。この間、香港やシンガポールをはじめ東南アジアの国々は経済成長を続け、マーケットの規模を拡大した。その日本のマーケットが久しぶりに活況を取り戻しているというのだ。政府関係者からは「デフレ懸念」といった後ろ向きの言葉も聞かれなくなった。日本は変わりつつあるように見える。
Bloombergの記事をさらに引用しよう。「今年は富士ソフトを巡る米投資会社KKRと米ベインキャピタルとの争奪戦や、米投資会社カーライル・グループによる医療器具メーカーのホギメディカル買収などが注目を集めた」。さらにJPモルガン・チェースでM&Aを統括するロヒト・チャタジー氏は「日本では今後、非公開化に関する取引がさらに増えるとみられる」と指摘。対象として「親会社にとって中核と位置づけられる上場子会社や、バリュエーションが本来の価値を十分に反映していない独立系企業」が想定されるという。「今年の大型ディールの一つがNTTによる上場子会社NTTデータグループの完全子会社化で、総額は約2兆3700億円だった。このほか、日本製鉄は米鉄鋼大手USスチールの買収手続きを完了させた」。日本企業の間で復活したディール。来年は国民生活をもっと豊かにする、このことに関心が向かう年になるだろう。
