片山財務大臣がマーケットを揺さぶっている。昨日Bloombergのインタビューを受け「(最近の)為替の過度で無秩序な変動に対し、断固として措置を取る用意がある。アクションを取るということを申し上げている」と、マーケットに挑戦状を叩きつけた。推測するに本心ではないだろう。通貨管理当局の責任を表明したものにすぎない。とはいえ、アクションを起こさないわけではない。やるときは断固として介入に踏み切る。それがいつで、どの水準かはわからない。ではどうしていま、この時期にBloombergのインタビューに応じて、これほど強い調子で介入を示唆したのか。想像するに年末年始を控えているからではないか。為替ディーラーは年末年始ぐらいは、介入を気にしないでゆっくりしたいと考えている。片山大臣はそこを狙った。年末年始で取引が薄くなる中でも、「常に万全の態勢が整っている」と。「状況はその都度異なるため、介入の手法に定型のパターンはない」とも。
日銀の植田総裁が26日の金融政策決定会合で0.75%の利上げに踏み切った。予想外の大幅利上げであり、相当のサプライズが予想された。だが、マーケットは冷静だった。メディアが事前に0.75%の大幅利上げを観測記事として流していたからだ。おそらくこれはメディアの特ダネではない。日銀のリークだろう。株や国債の暴落を少しでも抑えたかった。いわゆるショックアブソーバーだ。リークの効果は絶大だった。円相場は瞬間的に円高に触れたものの、大幅利上げを意に介さず円安を加速させたのだ。この逆を狙ったのが今回の片山大臣のインタビューだ。年末年始は通常なら介入は行わない。少なくとも為替ディーラーはそう考えている。そこを狙った介入発言。「常に万全な態勢が整っている」、そう言われればディーラーも心配になる。高市ー片山体制は何をやるかわからない。「ひょっとすると・・・」、不安心理がディーラーの頭をよぎる。かくして円売り・ドル買いの手が鈍る。ディーラーを恫喝する典型的な手法だ。
これで円安が止まればいいのだが、そんなに簡単ではないだろう。為替の水準を決めるのはファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)だ。投機は常に存在するが、投機だけで為替の水準が決まるわけれはない。基本は経済なのだ。大幅利上げにもかかわらず、なぜ為替は円安に動くのか。ディーラーの大半はいまだにファンダメンタルズがすぐに好転するとは見ていないのだ。高市政権は「責任ある積極財政」を推進するために、市場とは丁寧に対話を重ねると強調する。それが基本だろう。だがここにきて長期金利の上昇が急激になっている。国債の大量発行懸念が背景にある。ポイントはここだ。来年度予算案は財政規模が120兆円を超えるようだ。市場は景気の回復期待よりも国債の過剰発行による長期金利の上昇を懸念している。片山大臣は租税特別措置や特別会計・各種基金の見直し担当大臣でもある。口先介入は否定しないが、市場を納得させるためには財政の無駄排除の意思をもっとはっきりと打ち出すべきではないか。国債が減って景気が回復するとなれば、円相場は一気に円高に向けて走り出す。
