• S&P500は4日続伸し6900上回る、テク銘柄が上げ主導-市場は薄商い
  • 米国債は短期中心に値下がり、金・銀は過去最高値を更新
S&P500は最高値を更新
S&P500は最高値を更新Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

Rita Nazareth

23日の米国株は薄商いの中で上昇。7-9月(第3四半期)の米実質国内総生産(GDP)など多くの経済指標を消化しつつ、S&P500種株価指数は最高値を更新した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6909.7931.300.46%
ダウ工業株30種平均48442.4179.730.16%
ナスダック総合指数23561.84133.010.57%

  S&P500は4営業日続伸して6900を上回った。テクノロジー銘柄が上げを主導。クリスマス休暇を控えて出来高は過去1カ月の平均を大きく下回った。朝方発表された経済指標は早期利下げ観測を強める内容ではなく、指数は一時下げに転じる場面もあったが、その後持ち直した。

関連記事:7-9月米GDPは4.3%増、2年ぶり高成長-個人消費と設備投資堅調

  eToroのブレット・ケンウェル氏によると、最新のGDP統計は経済が順調に拡大を続けていることを示す一方、消費者信頼感指数に見られるように、実体経済の現場では異なる受け止め方がされている可能性がある。

  同氏は「ホリデーシーズンと第4四半期を通じて消費者が底堅さを維持すれば、米国のGDPと企業利益にとって好材料になるだろう」と指摘。「利益は上振れが続いており、今年の相場上昇の大きな要因となっている。強気筋は、この流れが2026年も続くことを期待している」と語った。

  LPLファイナンシャルのアダム・ターンクイスト氏によると、市場で注目されるサンタクロース・ラリーの期間が24日から正式に始まる。歴史的に見ると明確なパターンがあり、1950年以降ではS&P500の平均リターンは1.3%。78%の確率で上昇しているという。

  ただ「季節的なトレンドは過去の傾向を反映するが、保証されているわけではない」と同氏は指摘。「利益や金融・財政政策の変化、経済状況といったファンダメンタルズは考慮されていない」と説明した。

  ベスポーク・インベストメント・グループによると、歴史的に見てクリスマス翌日の取引は1年で最も着実に上昇する日となっている。1953年以降、市場が12月26日に開いた39年間で、S&P500が下落したのはわずか6回にとどまる。

  トランプ大統領は、市場が好調であれば米連邦準備制度理事会(FRB)議長は利下げすべきだとの考えを示した。次期FRB議長の候補として利下げに前向きな人物を求めていることを改めて示唆した格好だ。

  トランプ氏は23日、SNSへの投稿で「市場が好調なら金利を引き下げるFRB議長を私は望んでいる。理由もなく市場を破壊するようなことはして欲しくない」とし、「私に異論を唱える者がFRB議長になることは決してない」と記した。

  インフレ調整後の7-9月GDPは前期比年率4.3%増加。伸びは、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値を上回った。4-6月(第2四半期)は3.8%増だった。

  インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トーレス氏は、「2年ぶりの高い成長率を受け、26年も企業利益が堅調に拡大し続けるという信頼感が強まっている」と述べた。

  ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「経済がこの水準の成長を維持すれば、景気減速を過度に懸念する必要はなくなり、むしろ物価安定を巡る制約に再び関心が移る可能性がある」と語った。

  グレンミードのマイケル・レイノルズ氏によると、最新のGDP統計は、4月の安値以降に株式相場が示した驚異的な回復を裏付けている。貿易政策に大きな変更があったものの、米経済は目を見張るような底堅さを維持している。同氏は「視線が来年に移る中、米国の経済成長見通しは明るいように見える」とし、「関税政策、財政刺激策、労働市場の変化、人工知能(AI)関連の生産性向上、規制緩和の可能性といった要素が組み合わさり、26年はトレンドを上回る成長が見込まれる」と予想した。

  ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのスコット・レン氏によれば、力強いGDP統計と弱い雇用環境の組み合わせが金融政策にとって何を意味するのかを、トレーダーは見極めようとしている。

  レン氏は「投資家は現在進行中の前向きなトレンドに注目すべきだ」と指摘。「GDPの伸び、利益成長の裾野拡大と加速、インフレ鈍化、世界の成長改善といった見通しを踏まえると、向こう12カ月は米国株に追い風が吹くと考えられる」と述べた。

米国債

  米国債は短期債を中心に値下がり。力強い米GDP統計を受けて2026年の利下げ期待が後退した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.82%-1.2-0.25%
米10年債利回り4.16%0.20.05%
米2年債利回り3.53%2.70.78%
米東部時間16時35分

  2年債利回りは一時5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して3.56%を付けた。市場では、金融政策見通しを巡りハト派色が弱まるとの見方が織り込まれた。

  ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「予想を上回るGDPを受け、市場は大きく揺さぶられている」とし、「現物市場のフローは依然として薄いが、先物の売りはかなり膨らんでいる」と語った。

  12月の米消費者信頼感指数は5カ月連続で下げた。インフレや関税、政策を巡る懸念が続いている状況を反映した。

関連記事:米消費者信頼感指数、5カ月連続で低下-労働市場に悲観的な見方

  それでも投資家は来年の利下げ見通しを後退させており、1月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ確率は現在、約16%にとどまっている。

  この日は5年債入札(発行額700億ドル)が実施された。最高落札利回りは3.747%で、ニューヨーク時間午後1時の入札締め切り直前の発行前取引の水準とほぼ一致した。

為替

  ニューヨーク外国為替市場ではドルが値下がり。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、10月以来の低水準を付けた。円は対ドルで堅調を維持した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1201.89-3.98-0.33%
ドル/円¥156.27-¥0.78-0.50%
ユーロ/ドル$1.1792$0.00300.26%
米東部時間16時35分

  ベッセント米財務長官は、米国の物価上昇率が連邦準備制度理事会(FRB)の2%目標水準に持続的に回帰すれば、FRBの同インフレ目標を見直すことを支持する考えを示した。

関連記事:ベッセント長官、FRBの2%インフレ目標見直しに含み-「レンジ化」示唆

  円は、アジアおよび欧州時間帯に付けた1ドル=155円台からはやや上げを縮めたものの、156円台前半から半ばで推移した。

  片山財務相は22日のブルームバーグの単独インタビューで、前週末の日本銀行の金融政策決定会合後に進んだ円安について「完全にファンダメンタルズではなく投機だ」と指摘。こうした動きに対しては、9月の日米財務相共同声明に基づき「断固として措置を取る」と述べた。23日の閣議後会見でも行き過ぎた動きには「フリーハンド」で対応するとの姿勢を改めて示した。

原油

  ニューヨーク原油相場は5営業日続伸。薄商いとなる中、需要の弱さよりも、ベネズエラからの出荷に対する米国の締め付けが意識された。

  ベネズエラのマドゥロ政権への圧力を強める米国は、ベネズエラ沖で数週間前にタンカー1隻を拿捕(だほ)したほか、最近では別の1隻への立ち入り検査を行い、さらに3隻目を追跡した。それでも、トランプ政権がベネズエラの原油収入抑制に向けた取り組みを強化して以降、同国沖で10数隻の船舶が原油を積み込んでいる。

  トランプ氏は、拿捕したタンカーの原油は米国が保持するとしている。ベネズエラの原油輸出は世界供給の1%未満にとどまるが、その収入はマドゥロ政権にとって重要な資金源だ。同政権は、米国の一連の行動を「海賊行為」だと非難している。

  米国が中南米で麻薬関連活動を標的とした地上攻撃に出る可能性や、ウクライナで続く戦争などの地政学的緊張を背景に、6月半ば以降進行していた原油価格の下落に歯止めがかかっている。供給が需要を上回る中、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は今年約19%下落しており、年間ベースでは2020年以来の大幅安となる見通しだ。

  祝祭日を前に商いが薄くなる中、価格変動が大きくなりやすい面もある。

  SCBグループのブローカー、レベッカ・リードスペリン氏は価格動向について、「持続的な上昇というよりも、単発的な急騰が起こりやすくなっているようだ」と指摘。「ベネズエラの輸出が短期的に急減したとしても、来年上半期にかけて市場では供給が十分な状態が続くだろう」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は、前日比37セント(0.6%)高い1バレル=58.38ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は0.5%上昇の62.38ドル。

  スポット相場は続伸。地政学情勢の緊迫化やさらなる米利下げ見通しを背景に、銀相場とともに再び最高値を更新した。

  金は前日にここ1カ月余りで最大の上昇となった後、この日は一時1オンス=4500ドルに迫った。銀は一時2.4%上げて、史上初の1オンス=70ドル超えとなった。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が直近の3会合連続利下げに続き、来年も借り入れコストを引き下げると見込まれている。金利低下は、利回りを生まない金にとって追い風となる。

  安全逃避先としての金の妙味も、ここ1週間に一段と高まっている。特にベネズエラを巡る地政学的緊張の高まりが背景にある。米国はベネズエラ産原油を積んだタンカーを拿捕(だほ)するなど、同国のマドゥロ政権に対する圧力を強めている。

  ペッパーストーン・グループのストラテジスト、アフマド・アシリ氏は石油タンカーの拿捕に言及し、「地政学的な摩擦が市場のテーマとして再浮上してきた」と指摘。「こうした展開は、全面的なリスク回避の動きにつながるわけではないが、ヘッジ手段として不可欠な金の需要を押し上げるのは間違いない」と述べた。

  スポット相場はニューヨーク時間午後2時19分現在、前日比47.59ドル(1.1%)高い1オンス=4491.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は36.30ドル(0.8%)高の4505.70ドルで引けた。

原題:S&P 500 Closes at Record High in Tech-Led Advance: Markets Wrap(抜粋)

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