▽ベネズエラへの米軍作戦に各国の反応は-大統領拘束で国際社会に激震<bloomberg日本語版>2026年1月5日 at 9:10 JST

米国によるベネズエラでの軍事作戦は、マドゥロ大統領の拘束と米国への移送といった衝撃的な出来事で国際社会に激震が走った。

  ロシアや中国、ブラジルといったベネズエラの友好国が米国の行為を厳しく非難する一方、アルゼンチンなど右派政権率いる近隣諸国は歓迎を示している。西側諸国は、軍事力行使という手法への評価に慎重な姿勢を見せつつも、マドゥロ政権の正当性欠如を指摘し、民主主義の回復に期待を示している。

  地域情勢の激変を前に、世界各国は警戒と期待が入り交じる異例の事態に直面している。

ベネズエラの友好国は「深い衝撃」

  • 中国:外務省報道官が3日遅く、「深い衝撃」を受けたと表明。「主権国家の大統領に対する露骨な武力行使」を強く非難し、米国の「覇権的行為」と断じた。2日にカラカスを訪問したばかりの中南米担当特別代表がマドゥロ氏と会談していた直後の出来事であり、不意を突かれた格好だ。
  • ロシア:外務省は声明で「深い懸念と非難」を表明。ベネズエラの主権侵害であるとして、コロンビアやメキシコなどと歩調を合わせ、国連安全保障理事会の緊急会合開催を支持した。
  • キューバ:ディアスカネル大統領は「犯罪的攻撃」と呼び、国際社会による「緊急」の対応を求めた。

歓迎する右派と、介入を危惧する左派

中南米地域では、各国の政治的スタンスによって反応が鮮明に分かれた

  • アルゼンチンとエクアドル:右派であるアルゼンチンのミレイ大統領はX(旧ツイッター)に自身のスローガン「自由万歳」を投稿し、事実上の歓迎を表明。エクアドルのノボア大統領も、大陸全土で「チャビスタ(チャベス派)の麻薬犯罪者」の構造が崩壊するとの期待を示した。
  • ブラジルとコロンビア:ブラジルのルラ大統領は「最悪の介入を想起させる」と述べ、平和地帯としての地位を損なうと警告。コロンビアのペトロ大統領も「主権侵害」として国連での協議を要求している。

欧州と日本:慎重な姿勢と民主主義への期待

欧州や日本は、軍事力の行使という手法への言及には慎重な態度を見せながらも、マドゥロ政権の正当性欠如を指摘する。

  • 欧州連合(EU):カラス外交安全保障上級代表は、マドゥロ氏の「正当性の欠如」を再確認しつつ、事態のエスカレーションを避けた「平和的な移行」を求めた。
  • 英国:スターマー首相は英メディアとのインタビューで、米の作戦への英国の関与を否定。米国の行動を非難するかとの質問に「事実を確認したい」と答え、トランプ大統領と直接協議する意向を示した。
  • 日本:高市早苗首相は4日、邦人の安全確保を最優先に掲げつつ、関係国と緊密に連携する方針をSNSで表明。日本政府としては「一刻も早くベネズエラにおける民主主義が回復されることの重要性を訴えてきた」と指摘した。外務省は「民主主義の回復および情勢の安定化」に向けた外交努力を強調している。

地域全体への「移民の波」に警戒感

  15カ国・地域で構成されるカリブ共同体(カリコム)は緊急会合を開き、ベネズエラの不安定化が引き起こす「移民の波」が、小規模な島しょ国を圧倒しかねないとの懸念について協議した。ベネズエラの混乱は単なる政権交代にとどまらず、近隣諸国の社会インフラに深刻な影響を与える恐れがある。

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  • 米軍によるベネズエラ大統領拘束、中国の微博でトレンドのトップに
  • 台湾との緊張関係に対処する方法のひな型となり得るとの声
米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束と米国への移送が、中国のソーシャルメディア上で幅広い議論を巻き起こしている
米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束と米国への移送が、中国のソーシャルメディア上で幅広い議論を巻き起こしているPhotographer: An Rong Xu/Bloomberg

米軍によるベネズエラのマドゥロ大統領の拘束と米国への移送が、中国のソーシャルメディア上で幅広い議論を巻き起こしている。一部のユーザーからは、この軍事作戦は中国が台湾との緊張関係に対処する方法のひな型となり得るとの声が上がっている。

  トランプ米大統領の命令で行われた作戦は、3日遅くに中国の微博(ウェイボ)でトレンドのトップに躍り出た。このトピックの閲覧数は約4億4000万回に達した。多くのコメンテーターが、ベネズエラの運命と、中国が統一を目指す台湾の将来を重ね合わせた。

  あるユーザーは700件以上の「いいね」がついた投稿への返信で、「将来、台湾を取り戻すために同じ方法を使うことを提案する」と述べ、別のユーザーは「米国が国際法を真面目に捉えていない以上、なぜわれわれがそれを気にする必要があるのか」と書き込んだ。

  マドゥロ氏とその妻を拘束した「米帝国主義者によるベネズエラへの電撃的な急襲」は、中国軍が台湾に奇襲攻撃をかけ、台湾の頼清徳総統を捕らえるための「完璧な青写真を提供している」との投稿もあった。

  中国外務省は4日の声明で米国に対し、マドゥロ大統領夫妻の安全を確保し2人を解放するよう呼びかけた。米国の行為は国際法と国際関係を規定する基本原則や、国連憲章の目的と原則に明らかに違反していると指摘した。

  同省はこれより先に、「主権国家とその大統領に対して米国が行った露骨な武力行使を強く非難する」とコメントしていた。

  台湾外交部(外務省に相当)は声明で、ベネズエラの情勢を「注視している」とコメント。米国やその他の民主主義国家と協力し「地域および世界の安全と安定、繁栄に共同で貢献していく」と付け加えた。

  中国の習近平指導部は最近、台湾周辺で中国人民解放軍による大規模な軍事演習を実施するなど、軍事的圧力を強めているが、トランプ氏はこれを重大視しない考えを示している。

関連記事:習主席が国民向け演説、国家発展に自信-台湾統一の「流れ止まらず」

  中国国内でナショナリズム感情が高まっているとはいえ、米中間の最大の火種の一つである台湾を巡る習指導部の戦略が直ちに変更されるわけではない。しかし、トランプ政権による今回の軍事作戦は、中国に自国周辺で軍事攻勢を強める余地を与える可能性がある。

  元米外交官でブルッキングス研究所のライアン・ハス上級研究員は「ベネズエラでの今日の出来事が、台湾に関する中国当局の計算を劇的に変えるとは予想していない」とXに投稿。中国政府が台湾への武力行使などを控えてきたのは、国際法や規範を尊重しているからではないと指摘した。

  ハス氏は、中国が米国の国盟国や近隣諸国と領有権を争っている南シナ海での活動を挙げ、「米国が主張しているような国際法の適用除外という大国の特権を、自らも享受できると期待していると、中国政府は米政府に対し強調するだろう」と付け加えた。

中国軍のノウハウを疑問視も

  アジア・ソサイエティ政策研究所のシニアフェロー、ライル・モリス氏は、習主席はトランプ政権の行動について、国家安全保障の名の下に大国が近隣諸国に介入するという、ロシアのウクライナ侵攻に対する認識と同様の捉え方をする可能性があると分析。「中国による台湾侵攻の可能性も同じカテゴリーに分類され得る」と付け加えた。

  「特に米国の行動に対する世界の反応が抑制気味の場合、習氏に台湾に対する軍事行動を検討させる窓を開くと推測するのは、決して誇張ではないと思う」とモリス氏は語った。

  一方、中国にそのような軍事作戦を実行するノウハウがあるか疑問視する声もある。

  米軍による今回の軍事作戦は数カ月におよぶ情報活動を経たものであり、150機余りの米軍機によって実施されたと、ケイン米統合参謀本部議長は3日の会見で明らかにした。

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  シンガポールのS.ラジャラトナム国際学院(RSIS)のシニアフェロー、ドリュー・トンプソン氏によれば、関与した米軍部隊は敵対的な環境下での作戦遂行において豊富な経験を持っていた可能性が高い。

  同氏は「中国人民解放軍にそのような経験があるとは思えない」と述べた上で、「中国当局には台湾の指導者を無力化する他の選択肢がある」とし、中国にとっては手段として暗殺の方が成功の確率が高いだろうと指摘した。

原題:China Social Media Hails US Maduro Move as a Taiwan Template (2)(抜粋)

▽米国がベネズエラ攻撃:識者はこうみる<ロイター日本語版>2026年1月5日午前 10:36 GMT+9

米国がベネズエラ攻撃:識者はこうみる

[ 5日 ロイター] – トランプ米大統領は3日、米国がベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領を拘束したと明らかにした。

市場関係者に見方を聞いた。

◎<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>米軍が事態を掌握した状態で週明けを迎えたこともあり、週明けの市場では比較的冷静に受け止められている。今回の件で米国の成長率やインフレ、金利の見通しが動くわけではないだろうし、グローバル経済のファンダメンタルズに甚大な影響が及ばないのであれば、影響はニュートラルと考えていいだろう。

懸念材料を挙げるとするなら、国境紛争などの拡大だ。米国がやるならと、中国やタイ、インド、ロシアなどでも国境付近での紛争が続々と発生するような事態となれば、リスクオフムードが強まり、その性質によって買われる通貨と売られる通貨が出てくるだろう。円はリスク発生時の感応度が低下しているが、スイスフランには引き続き買いが入りやすいとみている。

◎「悪いインフレ」懸念強まる、円債売り材料に<三井住友トラスト・アセットマネジメント シニアストラテジスト 稲留克俊氏>ベネズエラ情勢を巡っては、投資家による「質への逃避」の動きが出て円債買い材料となる可能性もあり得たが、けさの円債市場の動きを見るとむしろ「悪いインフレ」懸念から金利上昇(円債売り)の材料となっている。

この悪いインフレ懸念については、いくつか経路がある。1つは将来的に原油供給が減ることが意識されてのインフレ、2つ目は世界経済のブロック化が進むことが連想されてのインフレ、3つ目は台湾有事が近づくとの連想から円安が進むことによるインフレだ。

きょうの円債売りは、日本が休場中に米長期金利が4.2%近辺まで上昇したことが最たる要因と考えられるが、ベネズエラ情勢で「悪いインフレ」への警戒感が高まり、日銀の「ビハインド・ザ・カーブ」(政策判断が後手に回る)懸念が増したことも追加的な円債売り材料となっている。

◎株価影響は限定的、市場は米重要指標に目線<大和証券 チーフストラテジスト 坪井裕豪氏>世界経済への波及経路としては原油価格の動向が想定されるが、原油施設への攻撃は伝わっていない。年始は重要な米経済統計の発表が多く控えており、市場の目線はそちらの方に向かっている。

トランプ米大統領はベネズエラへの攻撃やマドゥロ大統領の拘束について成功したとの認識を示したことが伝わっており、米国サイドからの動きはひとまず終息したとみていいだろう。

地政学リスクが他地域に伝播するなど広がらなければ、株価や為替に大きな影響はないとみている。原油高や地政学リスクの高まりへの思惑から、関連株は物色されるかもしれないが、本格的なポジション構築ではなく短期筋が中心だろう。